まずは最初の事例である「コマツ」から見ていこう。
福岡タワー(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です |
コマツは15年度に入って現地従業員の1割に当たる約500人の人員削減を実施したことを明らかにした。希望退職者を募集し、派遣社員らの契約延長を見送った。14年度までの2年間の削減が500人だったのに比べて2倍のペース。建設工事の減少を受け、中国での建設機械・車両の売上高は、15年4~9月に前年同期比44%減と大きく落ち込んだ。
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「China Impact」というタイトルの記事で紹介する最初の事例ならば、インパクトは非常に強くていいはずだ。しかし、中身を見ると人員削減は実施済み。つまり過去の話だ。しかも13年度も14年度も人を減らしていたらしい。その規模が膨らむだけで、縮小トレンドには既に入っていた。しかも、今年度の人員削減の話は、10月末には明らかになっていたようだ。10月30日付で日刊工業新聞は「コマツの大橋徹二社長は29日、報道各社を対象に開いた2015年4―9月期連結決算説明会で、需要低迷が続く中国で6―9月に約1000人の人員を削減したことを明らかにした」と報じている。人数は日経と食い違うが、基本的には同じ話だろう。だとすると、半月近く経って記事にしても、ニュース性という点ではかなり弱い。
この話をメインに据えなければ記事が成立しないのに、なぜ「1面トップでやろう」とか「ワッペンを付けて随時掲載しよう」といった流れになったのだろう。編集局内で上の人間の思い付きに現場が振り回されているのではないかと心配になる。
メインに据えたコマツでさえ苦しい中身なので、後は推して知るべしだ。特に「東洋製缶」は辛い。
【日経の記事】
生産過剰が鮮明になったのは建機や建材だけではない。東洋製缶は中国のアルミ缶製造子会社を解散する。現地企業の増産で価格競争が激化し、収益が悪化したためだ。
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この記事の書き出しは「景気が減速する中国で日本企業が人員削減に踏み切る動きが広がってきた。コマツと太平洋セメントは現地従業員の1割を削減。東洋製缶グループホールディングスは中国での飲料缶製造から撤退する」となっている。こう書いてあると東洋製缶の話もニュース性があるようには見える。しかし、会社側は昨年12月には中国子会社の解散を発表している。つまり、1年近く前のニュースを堂々と新しい話のように持ち出したことになる。子会社の清算が完了するのは今年11月となっているので、「中国のアルミ缶製造子会社を解散する」のはその通りだろう。しかし、こういう記事の作り方は支持できない。
最初に記事を読んだ時、「中国での飲料缶製造から撤退する」「中国のアルミ缶製造子会社を解散する」と書いているのに、時期に全く触れていないのが気になった。これも「実質的には撤退済み」だとすれば合点が行く。
次の「China Impact」を紙面化するのは、本当にインパクトのある話が出てきた時にしてほしい。現場からメモを無理に出させて記事を捻り出すのだけはやめてほしい。企画記事をトップに持ってきても何の問題もないのだから、強引なまとめモノに頼らなくても1面は埋められるはずだ。
※記事の評価はD(問題あり)。
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