英彦山神宮の参道(福岡県添田町)※写真と本文は無関係です |
まずは、記事の説明で誤りではないかと思えた部分を指摘しておく。これに関しては、日経に問い合わせを送ったので、その内容を記す。通例に従えば、日経からの回答は届かないはずだ。
※追記)結局、回答はなかった。
ちなみに、5日の日経朝刊1面に瀬能編集委員が書いた郵政上場の関連記事「官業脱却、市場が監視」に関しても間違い指摘をしている。日経の対応はやはり「無視」だ。それでもあえて再び問おう。「記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか」
【日経への問い合わせ】
記事中で「日本は世界最速で人口減少と高齢化が進んでいる」と瀬能繁編集委員は書いています。しかし、人口減少ペースではウクライナやモルドバが日本を上回っているのではありませんか。2010年以降の年平均の人口減少率で、日本の0.1%に対しウクライナは0.6%、モルドバは0.8%とのデータがあります。他にも日本を上回る減少率の国はいくつも存在します。今後についても、国連の推計によると、2100年時点で日本は現在の3分の2まで減る見込みですが、ウクライナは現在の6割以下になり、モルドバやブルガリアは半分以下に落ち込むと予想されているようです。
記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
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統計で裏付けられるわけではないが、ここ数年という期間で居住人口の減少が「世界最速」なのはシリアのような気もする。ともかく「日本が世界最速」で正しいと主張するのは、かなり困難だと思えた。100%間違いと断定はできないが、日経からの回答が期待できない状況では誤りと推定するしかない。
では、当たり前のことを目新しい話のように書いている部分を見ていこう。
【日経の記事】
1.8という出生率目標そのものが悪いわけではない。ただ、仮に1.8という出生率が実現しても、中長期的に人口1億人を保つのはきわめて難しいという事実はあまり知られていない。
(中略)出生率を着実に高め、さらに希望出生率も1.8を超えて高まるような思い切った少子化対策を打ち出せるか。「移民」と一線を画したうえで、外国の高度人材や専門人材、留学生をどれだけ増やせるか。1億人維持の隠れた論点だろう。
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人口維持のために必要とされる合計特殊出生率が「2.1」辺りなのは、よく知られた話だ。「1.8」では女性が平均して生涯に2人以下しか子供を産まないのだから基本的に人口は減っていくし、「中長期的に人口1億人を保つのはきわめて難しい」のも自明だ。このことを日本人の何割が知っているかは分からないが、記事で「あまり知られていない」と紹介するのが適当とは思えない。
ついでに言うと「『移民』と一線を画したうえで」としているのが気になる。「『移民は受け入れない』という方針の安倍政権」だからかもしれないが、「1億人維持の論点」という意味では、最初から移民受け入れを排除して考える必要はない。
「出生率を着実に高め、さらに希望出生率も1.8を超えて高まるような思い切った少子化対策を打ち出せるか」と安易に書いているのも引っかかった。記事中で瀬能編集委員自らが「1.8は1984年を最後に達成しておらず、非常にハードルの高い目標」と書いている。ならば、実現は困難との前提で話を進めた方が説得力がある。もしも「1.8を超えて高まるような思い切った少子化対策」が実行可能との考えならば、記事中で具体的に例示した方がよいだろう。
※記事の評価はD(問題あり)。間違い指摘に対する回答がない場合、記事中の誤りを握りつぶしたと判断して、瀬能繁編集委員の評価をDからF(根本的な欠陥あり)へ引き下げる。
※5日の記事の誤りについては、「日経1面『郵政上場』解説記事 瀬能繁編集委員に問う」を参照してほしい。
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