シーサイドももち海浜公園(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です |
※10月の記事については「なぜETFは無視? 日経 田村正之編集委員の『真相深層』」を参照してほしい。
まずは、焼き直し問題に関する記述から見ていこう。2つの記事の冒頭部分は以下のようになっている。
【日経の記事(11月18日)】
日本の投信市場でコスト革命が本格化している。保有コストが超格安な投資信託が夏以降に続々と登場しているためだ。いずれ投信の中心的な顧客になる、コストに敏感な若い世代を取り込むのが狙い。より低コストでの資産分散ができるようになり長寿時代の老後資金作りに役立ちそうだ。
【日経の記事(10月24日)】
20~40歳代の資産形成層に向けて超低コストの投資信託の投入が相次いでいる。一方で圧倒的な資金量を持つ高齢層には複雑で高コストの投信が売れ続け、投信販売は二極化している。
「まだ公表されていないが、ニッセイアセットマネジメントから、11月にネット販売向け投信のコストを大きく引き下げると連絡を受けた。投信は“コスト革命”といえる時代に突入した」。複数のネット証券会社幹部が口をそろえる。
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上記のどちらの記事も「超低コストの投資信託」が増える「投信のコスト革命」について解説している。10月の記事では公表前だったニッセイアセットマネジメントのコスト引き下げが、11月の記事の段階では実現しているという状況変化はある。しかし、同じ媒体で前月に書いた内容を繰り返す意義があるとは思えない。「書くことがないので焼き直しで済ませた」と解釈するのが妥当だ。
今回、ニッセイアセットマネジメントの信託報酬引き下げについて書いているのに、どの程度の引き下げなのか触れていないのも気になった。田村編集委員は以下のように記している。
【日経の記事(11月18日)】
「夢のような低コスト」「乗り換え検討中」。ニッセイアセットマネジメントが12日、3本のインデックス(指数連動)型投信の保有コストを21日から引き下げると発表すると、ネット空間は歓迎する若い投資家の書き込みであふれた。
投信の長期保有で成績に大きな影響を与えるのが毎日差し引かれる信託報酬。インデックス型は市場平均を上回ることを狙うアクティブ型よりもともと信託報酬が低いがニッセイの3本は従来のインデックス型に比べても半値未満だ。
引き下げたのは同社の「購入・換金手数料なし」シリーズのうち国内債券、外国株式、外国債券の3つの資産の信託報酬。例えば外国株式は年0.2%台になった。同社の上原秀信取締役は「コストが長期の成績を左右することを知っている投資家層に幅広く使ってほしい」と話す。
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上記のくだりにも記事中の表にも「引き下げ幅」に関する情報は見当たらない。「保有コストを21日から引き下げると発表すると、ネット空間は歓迎する若い投資家の書き込みであふれた」という宣伝臭い書き方をするならば、どの程度の引き下げなのかは触れてほしいところだ。
ちなみに10月の記事でも「三井住友アセットマネジメントが、これまで確定拠出年金(DC)向けだった超低コスト投信を、ネット証券向けに一般販売を始めたこと」に関して、田村編集委員は「インターネットは若い世代の書き込みですぐに『祭り』状態になった。『グッジョブ!』『最終兵器だ』」と書いていた。こういう「投信販売のお手伝い」みたいな書き方をためらいなく何度もできるのは、ある意味で“すごい”。
この三井住友アセットマネジメントの「超低コスト投信」は11月の記事でも出てくる。この投信に関して使ったコメントがこれまた“すごい”。
【日経の記事(11月18日)】
しかし9月に三井住友アセットマネジメント(SMAM)が確定拠出年金(DC)向けだった超格安投信を楽天証券で一般に買えるようにし、信託報酬はニッセイを下回った。「低コスト商品で市場を拡大させたい」(横山邦男社長)
楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリストは「SMAMの投信は予想をはるかに上回る売れ行きで、積み立て対象投信の上位に躍り出た」と話す。ニッセイは信託報酬引き下げでSMAMに対抗し、再び最安値の地位を守る。
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「予想をはるかに上回る売れ行き」「上位に躍り出た」--。具体的な数値が何ひとつ出てこないのが“すごい”。このコメントを使うのは、普通なら勇気が要る。しかし田村編集委員にはためらいが感じられない。「当初の予想はどの程度で、実績は予想をどのぐらい上回って推移してるんですか?」「いつ頃にどの程度の順位を記録したんですか?」といった質問を取材時にしなかったのだろうか。聞いても具体的な数値が返ってこなかったのならば、記事で篠田氏のコメントを使うのは避けるべきだ。
色々と注文を付けていたら長くなってしまった。「功罪」の「功」にも最後に触れておく。それは冒頭でも述べたように、ETFへの言及だ。
【日経の記事(11月18日)】
ただ、今は自分で選べば超格安投信を使える。従来も保有コストが低い上場投資信託(ETF)はあったが、原則的に積み立てや分配金の自動再投資ができず、海外ETFは税金面もやや不利だ。実際に海外ETFから超格安投信に乗り換える人も目立ち始めた。
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「従来も保有コストが低い上場投資信託(ETF)はあった」とすると、非上場のインデックス投信の信託報酬はETFの水準に近付いているだけで「投信のコスト革命」と呼ぶほどのものとは思えない。日経的な「革命の安売り」と見るべきだろう。とは言え、ETFも含めて論じたことは一歩前進と評価したい。
※今回の記事の評価はC(平均的)。田村正之編集委員の評価はD(問題あり)を据え置くが、強含みではある。
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