シーサイドももち海浜公園(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です |
記事の中身を見てみよう。
【日経の記事】
30日の米ダウ工業株30種平均は続落した。だが10月の月間上昇率は8%を超え、2011年10月以来、4年ぶりの大きさだ。7~9月期決算をきっかけに主要企業の時価総額が変動し、市場に活気を呼び込んでいる。
代表格がグーグルの持ち株会社であるアルファベットだ。株価は今年、水準を2度切り上げた。
(中略)2度の株価上昇は階段を上り始めたかのようなチャートを描く。見据えるのは最大の時価総額を誇るアップルだ。ファクトセットによると、昨年末時点で約3500億ドルあったアップルとアルファベット(グーグル)の時価総額の差は約2500億ドルまで縮小した。
アップルの7~9月期決算は底堅い内容だったが、株価の勢いはいまひとつだ。株価収益率(PER)は約12倍と2月につけた15倍には遠い。長く続いた米株式市場における「アップル1強」の状況も変わりつつある。
アマゾン・ドット・コムの躍進も見逃せない。株価は昨年末の2倍に上昇。時価総額ランキングを駆け上がり、JPモルガン・チェースなどを抜き去った。市場の関心はクラウド事業に向かう。同事業の増収率は2四半期連続で8割に達し、マネーをひきつける。
マイクロソフトの7~9月期は基本ソフト(OS)は苦戦したが、新たな収益機会であるクラウド事業が売上高を伸ばした。株価は急伸し、PERは08年の金融危機以降で初めて18倍を超えた。
金融関連事業の売却を進めるゼネラル・エレクトリック(GE)には「物言う株主」も触手を伸ばした。足元の業績は構造改革費用などが重荷となったが、市場は経営の変革姿勢を評価。時価総額が増大している。
対照的に原油安がのしかかるエクソンモービルは時価総額でマイクロソフトに抜かれた。ドル高のあおりで減収が続くジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)も存在感が薄らぎつつある。
----------------------------------------
基本的に記事では米国の主要銘柄の動きを紹介しているだけだ。業績などで株価が変動して、時価総額の順位が入れ替わったりするのは珍しくない。と言うより、当たり前の話だ。決算を受けての動きが従来と大きく異なるのであれば、そこを描く必要がある。しかし、そうした分析をしないまま、最終段落では以下のように結んでいる。
【日経の記事】
「米経済の劇的な構造の変化は勝者と敗者を生んだが、次の大きな成長への発射台となる」(タワー・ブリッジ・アドバイザーズのジム・メーヤー氏)。中核銘柄の間で進む新陳代謝が投資家の期待をつなぎ留める。
----------------------------------------
いきなり「米経済の劇的な構造の変化は勝者と敗者を生んだ」と出てくるが、何を指して「劇的な構造の変化」と言っているのか謎だ。「原油安」や「ドル高」では「劇的な構造の変化」とは言えそうもないし、記事からはそれ以外の手掛かりはつかみにくい。
「中核銘柄の間で進む新陳代謝」も意味不明だ。記事には、グーグルの持ち株会社であるアルファベットのほか、アップル、アマゾン、マイクロソフト、エクソンモービル、J&Jなどが出てくる。しかし、中核銘柄の中で時価総額の順位が入れ替わっているだけならば、「新陳代謝」とは言い難い。
時価総額の上位10銘柄の顔ぶれが短期間で大きく変わったと言うのならば、「新陳代謝」でもまだ分かる。しかし、記事に出てくるのは「アルファベットとアップルの差が縮小した」とか「エクソンモービルがマイクロソフトに抜かれた」といったレベルの話だ。これで「中核銘柄の間で進む新陳代謝」と言うのは、さすがに無理がある。
書くことがなくて苦し紛れに安易な記事を書いてしまったというところだろうか。ネタに困る時もあるだろうが、それでも最低ラインの完成度は確保してほしい。今回の記事でそれができているとは思えない。
※記事の評価はD(問題あり)。NQNニューヨークの岩切清司記者への評価は暫定でDとしていたが、Dで確定とする。
0 件のコメント:
コメントを投稿