英彦山山頂(福岡県添田町) ※写真と本文は無関係です |
※エコノミストの特集に関しては「週刊エコノミスト特集『世界を飛べMRJ』の高い完成度」を参照してほしい。
◎「近郊のシアトル」?
74ページの「国産旅客機への挑戦~安全認証が最大の壁 開発作業は正念場へ」という記事で「近郊」の使い方が引っかかった。
【東洋経済の記事】
5機を使った試験の大半は、晴天率が高く、空港離発着や飛行空域の制約も少ない米ワシントン州で実施する。すでに近郊のシアトルにエンジニアリングセンターを開設した。
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「近郊」とは「都市のすぐ近くの郊外」という意味だ。上記のくだりでは、米ワシントン州の近郊に「シアトル」があると考えるしかないが、ワシントン州は都市名ではないし、シアトルは都市そのものだ。「シアトル近郊の○○」ならば分かるが、「ワシントン州の近郊にシアトルがある」と言われても意味不明だろう。
この記事では無駄な横文字も見受けられた。「飛行試験の開始を意味する初飛行は重要なマイルストーン(節目)で、開発がいよいよ終盤に入ったことを意味する」と書いているが、何のために「マイルストーン」を使っているのか謎だ。単に「節目」でいい。「マイルストーン」が後で再び出てくるわけでもない。
◎「低圧タービンやファンモジュール」と言われても…
横文字問題として捉えるべきなのか微妙だが、84ページの「日の丸サプライヤーの戦い~IHI A320、B787など有力機のエンジンに参画」では以下のくだりが分かりにくかった。
【東洋経済の記事】
(IHIは)米GEなど航空エンジン世界大手の開発パートナーとして低圧タービンやファンモジュールなどの開発・製造を担っている。
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「あなたの知識不足だよ」と言われればそれまでだが、いきなり「低圧タービンやファンモジュール」と書かれても、どういうものなのかイメージが湧かなかった。記事を最後まで読んでも説明はない。業界関係者向けに書いているわけではないだろうから、この辺りはもう少し丁寧に説明してほしい。
「日の丸サプライヤーの戦い」の中でも、「ナブテスコ」の記事では主力商品である「アクチュエーター」についてしっかり説明できていた。だから、やろうと思えばできるはずだ。
◎「同社」の使い方が…
日経ほどではないが、東洋経済も「同社」の使い方に問題を感じる。今回の特集から例を拾ってみよう。
【東洋経済の記事】
例1(79ページ) ※形式的には「同社=三菱」になる。
エンブラの現行機Eジェットのエンジンは旧世代で、最新鋭のMRJより燃費性能が2割以上劣る。しかし三菱が機体開発に手間取る間に、同社は改良型後継機「E2」シリーズの開発に取り掛かった。
例2(86ページ) ※形式的には「同社=ボーイング」になる。
787での逸注を機に、ナブテスコはボーイング集中戦略へと回帰した。その後の同社は、ボーイングの満足度を高めることに勢力を傾けている。
例3(87ページ) ※形式的には「同社=ホンダ」になる。
住友精機は重要装備品を担当する数少ない国内企業の1社。(中略)一足早く量産が始まったホンダのビジネスジェットも同社が降着システムを担当している。
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上記のような「同社」の使い方でも、誤解する読者は少ないだろう。ただ、記事の完成度としては下がってしまう。この辺りをきっちり管理できるかどうかは、メディアの実力を測る良い物差しにもなるのだから、疎かにしてほしくない。
※特集の評価はB(優れている)。渡辺清治記者の評価はBで確定させる。宇都宮徹記者と山本直樹記者への評価は暫定でBとする。
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