いつものことではあるが、日本経済新聞の梶原誠氏が書く記事が苦しい。13日の朝刊オピニオン面に載った「
Deep Insight~中国異変、邦銀追い込む」という記事を読むと、「梶原氏は基本的な状況認識ができていないのでは?」と不安になる。日経には以下の内容で問題点を指摘した。
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勘定場の坂(大分県杵築市)※写真と本文は無関係です |
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 梶原誠様
13日の朝刊オピニオン面に載った「
Deep Insight~中国異変、邦銀追い込む」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
<記事の引用>
他の銀行はみずほの教訓を受け止め、「市場で無理をするのは控えよう」と決断できるか。残念ながら、そうはなりそうにない。
「預貸ビジネスの不振を補うために、無理な投資に手を染めて失敗する銀行は現れるか」。筆者はこんな問いを、当事者である銀行の投資担当者、銀行に投資商品を売る証券会社の営業担当者、銀行の業績を予想する2人のアナリスト、株式市場全体を見渡すストラテジストに投げかけた。5人はそろって「現れる」と答えた。
収益源の分散が遅れる地方銀行が特に怪しい。超低金利政策が続けば利息収入が減り、64行合計で前年度に約1兆円あった業務純益は10年後に消える試算もある。株主は収益を確保するよう圧力を加える。稼げる可能性があるのは、危うくても市場部門しかない。
リスクはもう抱えつつある。全国地方銀行協会によると、地銀が持つ有価証券のうち日本国債の割合は、「異次元緩和」前の12年末(48%)から18年末(26%)へと大きく圧縮した。逆に、株の上場投資信託(ETF)などリスク商品が主体の「その他有価証券」は3%から13%へと急拡大した。
--引用は以上です。
このくだりを読むと「
預貸ビジネスの不振を補うために、無理な投資に手を染めて失敗する銀行」は「
みずほ」以外にはまだ現れていないとの前提を感じます。「
収益源の分散が遅れる地方銀行が特に怪しい」「
リスクはもう抱えつつある」との記述から判断すると、「
地方銀行」はまだ「
無理な投資に手を染めて失敗する銀行」が出てきていないと理解するしかありません。
しかし、栃木銀行は「
無理な投資に手を染めて失敗する銀行」に相当するのではありませんか。1月31日付の「
栃木銀、4~12月期赤字転落 リーマン・ショック以来」という日経の記事によると栃木銀行の「
2018年4~12月期連結決算は最終損益が2億3700万円の赤字」となっています。「
10月に含み損を抱えた外債投信を売却したのに伴い35億円の損失を計上したのが響いた」ようです。しかも「
12月末時点でも42億円の含み損を抱えている」状況です。
日経の「
外債運用頼み限界、市況変化への対応後手 北関東 地銀サバイバル 2番手行の苦悩(上)」という記事(2018年11月20日付)では「
栃木銀はマイナス金利政策で貸出金利回りの低下が続くなか、外国債券の運用に頼ってきた」と記しています。また「
安全・確実な運用に軸足を移す」という「
黒本淳之介頭取」のコメントも載せています。
こうしたことから判断すると、栃木銀行は「
預貸ビジネスの不振を補うために、無理な投資に手を染めて失敗する銀行」に当たるはずです。「
預貸ビジネスの不振を補うために、無理な投資に手を染めて失敗する銀行は現れるか」という問いを「
アナリスト」や「
ストラテジスト」に投げかけるのは、意味がないのではありませんか。既に「
現れ」ていませんか。
「栃木銀行のようなケースが今後も起きるか」という意味で「
無理な投資に手を染めて失敗する銀行は現れるか」と聞いたとの可能性も考慮しましたが、文脈的に無理があると思えます。今回の記事では「
無理な投資に手を染めて失敗する銀行」に関して、梶原様の事実認識に問題がありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「
世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として、責任ある行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
追記)結局、回答はなかった。
※今回取り上げた記事「
Deep Insight~中国異変、邦銀追い込む」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190313&ng=DGKKZO42361290S9A310C1TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。梶原誠氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。梶原氏については以下の投稿も参照してほしい。
日経 梶原誠編集委員に感じる限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_14.html
読む方も辛い 日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html
日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」に見えるご都合主義
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html
ネタに困って自己複製に走る日経 梶原誠編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_18.html
似た中身で3回?日経 梶原誠編集委員に残る流用疑惑
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_19.html
勝者なのに「善戦」? 日経 梶原誠編集委員「内向く世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_26.html
国防費は「歳入」の一部? 日経 梶原誠編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html
「時価総額のGDP比」巡る日経 梶原誠氏の勘違い
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/gdp.html
日経 梶原誠氏「グローバル・ファーストへ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_64.html
「米国は中国を弱小国と見ていた」と日経 梶原誠氏は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_67.html
日経 梶原誠氏「ロス米商務長官の今と昔」に感じる無意味
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post.html
ツッコミどころ多い日経 梶原誠氏の「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/deep-insight.html
低い韓国債利回りを日経 梶原誠氏は「謎」と言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_8.html
「地域独占」の銀行がある? 日経 梶原誠氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_18.html
日経 梶原誠氏「日本はジャンク債ゼロ」と訴える意味ある?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_25.html
「バブル崩壊後の最高値27年ぶり更新」と誤った日経 梶原誠氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/27.html