2018年6月24日日曜日

KNTの「親子上場」を批判するFACTAに異議あり

親子上場」を批判する記事はいつも納得できない。FACTA7月号の「FACTA銘柄 Sin-Bin Box KNT-CT (東証1部)『親子上場』の罪深き天下り社長失言」という記事もその1つだ。「親子上場」に関するくだりを見ていこう。
厦門園(長崎県佐世保市)※写真と本文は無関係です

【FACTAの記事】

そもそもKNTは悪名高き「親子上場」の典型例。会長職は現役の近鉄グループホールディングス会長の小林哲也が兼任、社長職も代々天下りだ。近鉄はKNT株式の約65%を保有する筆頭株主で、企業年金や他のグループ企業を含めると、7割以上を握っている。

「親子上場」問題の本質は、少数株主権の侵害にある。少数株主からも資本を得ているのに、大株主である親会社が間接的に放漫経営できるからだ。近鉄グループの大罪は、現預金が豊富なKNTを親会社の貯金箱扱いし、IT投資を遅らせてネット系代理店に個人客を奪われた。

「販売チャネルが変わったのに、営業部隊は理解できていなかった」とIR説明会で丸山社長は自社の社員を批判したそうだが、「親子上場」のままで、子会社が自主経営できるわけがない。「丸山失言」の裏側にあるのは、「少数株主に資金を還元させない」という親会社、近鉄のエゴではないか。KNTさん、上場やめたら?


◎「少数株主権の侵害」がある?

「『親子上場』問題の本質は、少数株主権の侵害にある」という主張が理解に苦しむ。

少数株主権」とは「一人または複数の株主の持株数を合算して、発行済株式総数の一定割合または一定数以上の株式を保有することを要件として行使できる株主権。多数派株主の専横を制し、少数株主の利益を保護するために認められている。株主総会招集請求権、取締役・監査役・清算人の解任請求権、会計帳簿閲覧権など」(デジタル大辞泉)という意味だ。

親子上場」だからと言って、親会社が子会社の少数株主権を合法的に「侵害」できるだろうか。「大株主である親会社が間接的に放漫経営できる」との主張に異論はないが、「少数株主権が侵害されているかどうか」とは別問題だ。

親子上場」だという情報開示がきちんとできているとの条件付きで、「親子上場」はありだと思える。親会社の都合で子会社の経営が振り回されるリスクはもちろんある。それを好ましくないと投資家が感じれば、株価はその分低くなるはずだ。そこに割安感を見出す投資家もいるかもしれない。後はそれぞれの判断でいいではないか。

付け加えると「『販売チャネルが変わったのに、営業部隊は理解できていなかった』とIR説明会で丸山社長は自社の社員を批判したそうだが、『親子上場』のままで、子会社が自主経営できるわけがない」とのくだりは意味不明な感じがする。

販売チャネルが変わったのに、営業部隊は理解できていなかった」ことと「自主経営」に何の関係があるのか謎だ。「自主経営」でなければ「営業部隊」は「販売チャネルが変わった」ことを理解できないとの前提が筆者にはあるのだろう。自分の読解力不足なのかもしれないが、どうしてそうなるのか分からない。

『親子上場』のままで、子会社が自主経営できるわけがない」との説明にも同意できない。「自主経営」をどう定義するかにもよるが、親会社の経営への関与が弱ければ「自主経営」は可能ではないか。


※今回取り上げた記事「FACTA銘柄 Sin-Bin Box KNT-CT (東証1部)『親子上場』の罪深き天下り社長失言
https://facta.co.jp/article/201807029.html


※記事の評価はD(問題あり)。今回の記事には他にも問題を感じた。それらについては以下の投稿を参照してほしい。

「KNTはネット・ネット」の説明が怪しいFACTAの記事
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/kntfacta_25.html


※「親子上場」に関しては以下の投稿でも論じている。

親子上場ってそんなに問題? 日経「株式公開 緩むルール」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_19.html

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