2018年6月18日月曜日

東洋経済 山田雄一郎記者「社外取締役のお寒い実態」に高評価

着眼点が良い上に健全な批判精神があり、取材もきちんとしている。週刊東洋経済6月23日号の「深層リポート~社外取締役のお寒い実態 社外取締役のお寒い実態 なり手不足と低い出席率」という記事を書いた山田雄一郎記者を高く評価したい。特に「稲盛和夫氏」の出席率の低さを伝えた点は、同氏の意外な一面が分かって興味深かった。
宇佐神宮(大分県宇佐市)※写真と本文は無関係です

そのくだりを見ておこう。

【東洋経済の記事】

本誌調査では、取締役会出席率が75%未満の社外取締役は121人いる(61ページ表)。ワーストは沖縄セルラー電話の社外取締役である稲盛和夫氏だ。過去1年間の出席率はゼロ%。同社は欠席理由を「やむをえない事情」として具体的な説明を避けた。「出席ゼロでは、社外取締役の存在する意味がない」(ISSの石田猛行代表)。

稲盛氏は1991年から沖縄セルラーの取締役を務めている。取締役会への出席率がわかる2008年以降で見ると、最も高くても20%(年5回の取締役会のうち出席1回)。ゼロ%の年もあったが、再任され続けてきた。

沖縄セルラーの担当者は「稲盛氏には電話や訪問で議事内容を説明し、アドバイスをいただいている」と説明する。だが「取締役会で議論を交わさないのならば、社外取締役ではなくアドバイザーで十分」(牛島氏)だ。稲盛氏に対する役員報酬がゼロだからといって「責任が減るわけではない」(同)。

沖縄セルラーは、稲盛氏の創業した第二電電(現KDDI)が全国展開のために設立した携帯電話会社8社中の1社。「沖縄の方々から『稲盛さんには何としても役員でいてほしい』と懇願されるものですから、『元気な間くらいは』と思い、給料はいっさいもらっていないのですが、今も取締役相談役を務めております」。稲盛氏は11年6月、沖縄で開催された同社創立20周年講演でこう語っている。

稲盛氏は社外取締役だが、自ら出資するなど設立当事者だったことから社外という意識は薄いとみられる。また、出席率が低くても、沖縄の人からの懇願があるから引き受けたという感覚も強そうだ。

名経営者として知られる稲盛氏を序列1位の取締役に仰ぐことは、役職員のモチベーションを高める効果があったのかもしれない。だが、「取締役会への出席は最低限中の最低限の義務」(上野氏)だ。稲盛氏がそれを果たさなかったことに変わりはない

稲盛氏は6月下旬の株主総会をもって27年務めてきた同社取締役を退任する。同社は理由を「本人の意向」とするのみで、出席率の低さとの関係は不明だ。



稲盛氏批判に十分な説得力

上記のくだりに関して注文はない。「稲盛氏がそれ(最低限中の最低限の義務)を果たさなかったことに変わりはない」との批判には十分な説得力がある。この後も、稲盛氏の次に出席率が低い「衆議院議員の古川元久氏」や、3番目に出席率が低い「ヤクルト本社のB・オースレイ氏」をしっかりと取り上げている。

今回の記事で唯一引っ掛かりがあったのが「早稲田大学の元総長で白鴎大学学長の奥島孝康氏」に関するくだりだ。そこを見ていこう。

【東洋経済の記事】

早稲田大学の元総長で白鴎大学学長の奥島孝康氏は、福井県に本社がある合成樹脂大手・フクビ化学工業の社外取締役をしているが、3分の1しか出席していない。

取締役会が集中した頃に救急車に運ばれて1カ月間入院した。退院後も再び救急車を呼ぶほどで、体調がよくなかった。飛行機への搭乗はドクターストップがかかっていた」と奥島氏は説明する。

だが、奥島氏はフジ・メディア・ホールディングスの社外監査役も兼務している。同期間、フジの取締役会には11回中10回、監査役会に7回中6回出席している。「フジの本社は東京・お台場で自宅から近く、社用車での送迎もあるので体調不良でも出席できた」(奥島氏)。そもそもなぜ福井県にあるフクビの社外取締役を引き受けたのか。「(八木誠一郎)社長は早稲田(大学大学院)の出身で、親の代からの付き合いだから」(奥島氏)。6月14日の株主総会で奥島氏は再任された。



◎もう少しツッコんでも…

取締役会が集中した頃に救急車に運ばれて1カ月間入院した。退院後も再び救急車を呼ぶほどで、体調がよくなかった。飛行機への搭乗はドクターストップがかかっていた」という「奥島孝康氏」の弁明が気になる。
長崎県立島原高校(島原市)※写真と本文は無関係です

1カ月」ぐらいの間に「取締役会が集中」するのが解せない。あり得ないとは言わないが、ちょっと考えにくい。さらに言えば「飛行機への搭乗はドクターストップがかかっていた」のであれば、福井まで鉄道で行けば済む。奥島氏の弁明がかなり苦しいのは、山田記者も分かっているようだ。記事からも伝わってくる感じはあるが、もっと奥島氏にツッコミを入れて、その結果を記事に反映させてほしかった。

とはいえ、この辺りは好みの問題に過ぎない。結局、褒めるところはあっても明確にダメだと言える部分はない。


※今回取り上げた記事「深層リポート~社外取締役のお寒い実態 社外取締役のお寒い実態 なり手不足と低い出席率
https://dcl.toyokeizai.net/ap/textView/init/toyo/2018062300/DCL0101000201806230020180623TKW025/20180623TKW025/backContentsTop


※記事の評価はB(優れている)。山田雄一郎記者への評価はBで確定とする。山田記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東洋経済の特集「東芝が消える日」山田雄一郎デスクに疑問
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/04/blog-post_19.html

東洋経済「保険に騙されるな」業界への批判的姿勢を評価
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_15.html

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