2018年6月12日火曜日

「テスラ」記事に見える日経 兼松雄一郎記者の説明下手

日本経済新聞の兼松雄一郎記者が書いた12日朝刊企業1面の「テスラ『高株価経営』試練 マスクCEO、目標未達多く」という記事は説明下手が目立った。間違いと言えそうな記述もある。日経には6つの質問をぶつけてみた。その内容は以下の通り。
筑後川(福岡県うきは市・朝倉市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 兼松雄一郎様

12日朝刊企業1面の「テスラ『高株価経営』試練 マスクCEO、目標未達多く」という記事についてお尋ねします。


<質問その1>

まず以下の記述についてです。

テスラは13年、『モデルS』の発売後の売れ行きが厳しく、倒産寸前に追い込まれた。このときは結局、マスクが保有するテスラ株を担保にした300億円規模のローンを原資にした株の買い入れなどでしのいだ。さらに当時はなかった選択肢を今はもっている。マスクがCEOを兼務する宇宙開発会社のスペースXだ。企業価値はすでに2兆円を優に超える。それでも上場させないのは『隠れた財布』としてテスラへの資金支援などの決定がしやすいのもあるだろう

記事からは、「当時(2013年)はなかった選択肢」として「スペースX」を「今はもっている」と読み取れます。しかし、スペースXの設立は2002年です。13年の時点では事業での実績もかなり積んでいます。スペースXを「当時はなかった選択肢」とするのは誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。


<質問その2>

倒産寸前に追い込まれた」テスラに関する「マスクが保有するテスラ株を担保にした300億円規模のローンを原資にした株の買い入れなどでしのいだ」との説明も理解に苦しみました。

結局、テスラは「300億円規模のローン」で自社株買いをして倒産の危機を回避したのでしょう。しかし、資金繰りの厳しい「倒産寸前」の会社が、せっかく融資してもらった資金を自社株買いに使うのが謎です。自社株買いでは会社の資金繰りは改善しません。

記事の書き方だと、自社株買いをしたのはマスク氏の可能性もありますが、これもやはりテスラの資金繰り改善にはつながりません。「株の買い入れなどでしのいだ」との説明は正しいのでしょうか。少なくとも説明に問題があると思えます。


<質問その3>

最初の段落で兼松様は「マスクにはまだ使っていない『錬金術』がある」と記しています。文脈から判断すると、「スペースX」から「テスラへの資金支援」が「錬金術」に当たるのでしょう。しかし、これの何が「錬金術」なのか理解に苦しみます。自分が立ち上げた会社が2つあって、資金が潤沢な方から足りない方へ移動させると「錬金術」になるのですか。言ってみれば同一企業グループ内での資金移動です。
筑紫女学園大学(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

比喩的に使う場合の「錬金術」に明確な決まりはないのでしょうが、それにしても「錬金術」という言葉のイメージとかけ離れているのではありませんか。


<質問その4>

記事には「5月29日、米カリフォルニア州で停車中の警察車両に、テスラ車両が衝突した。ほかにも停車中の消防車に突っ込む事故が相次ぐ」との記述があります。素直に理解すれば「(テスラ車両が)消防車に突っ込む事故」が何件も起きているはずです。しかし、報道から判断すると「消防車に突っ込む事故」は1件だけではありませんか。書き方の問題ならば、例えば「ほかにも停車中の消防車に突っ込むなど事故が相次ぐ」と直すと問題は解消します。


<質問その5>

<質問その4>で触れた事故について記事では以下のように説明しています。

いずれも運転支援機能『オートパイロット(自動運転)』モードが作動中に大型車に突っ込んだ。悪条件がそろい、停車中のトラックの車体を看板と誤認し止まり損ねたとみられる

これを読むと、「『オートパイロット(自動運転)』モード」が正常に機能している場合でもテスラの車両は「看板」であれば停止せずに突っ込んでいくと解釈できます。そう理解して良いのでしょうか。目の前の「看板」を避けられない「自動運転」モードでは、使い物にならないと思いますが…。


問い合わせは以上です。回答をお願いします。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「テスラ『高株価経営』試練 マスクCEO、目標未達多く

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180612&ng=DGKKZO31636970R10C18A6TJ1000


※記事の評価はD(問題あり)。兼松雄一郎記者への評価もDで確定とする。

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