2018年6月29日金曜日

防犯ブザーでセクハラ防止? 日経「セクハラ ゼロへの道」

日本経済新聞朝刊1面で「セクハラ ゼロへの道」というツッコミどころの目立つ連載が始まった。29日の「(上) 『男子文化』がそぐ活力 『見ないふり』企業のリスクに」で最も気になったのが、以下のくだりだ。
佐世保港(長崎県佐世保市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

女性の活躍は企業の生命線だ。明治安田生命保険は3万人を超える女性営業職全員に防犯ブザーを配布。顧客先などでの万一のセクハラリスクから社員を守る姿勢を打ち出す。セクハラを許さないという社内外へのメッセージでもある。



◎そんな「メッセージ」をもらうなら…

上記の説明には2つの疑問が浮かぶ。まず「防犯ブザー」で「顧客先などでの万一のセクハラリスクから社員を守る」ことができるだろうか。襲い掛かってくるような犯罪行為には有効かもしれないが、一般的な「セクハラ」には効果がなさそうに思える。商談の途中に性的な発言を挟んでくる顧客がいたとして、どのタイミングで「防犯ブザー」を鳴らすのか。

防犯ブザー」の音を聞いて駆け付けた方も困る。「何か犯罪に巻き込まれたのか」と心配して駆け付けて「どうしたんですか」と声をかけると「このお客さんが私にセクハラ発言を連発したんです」などと言われるのだろうか。自分が駆け付けた側だったら「そんなことで防犯ブザーを鳴らさないでよ」と思わずにはいられない。

「顧客に失礼過ぎないか」という疑問もある。生命保険会社の「女性営業職」が顧客に請われて訪問してあげている立場ならば、まだ分かる。しかし、そうではない場合が多いはずだ。保険の売り込みのために訪れてきた「営業職」の女性が「防犯ブザー」を持参してくるのは「あなたを信頼していませんよ」との「メッセージでもある」。自分が顧客だったら「そんなに疑っているのなら訪問してもらわなくて結構」と言いたくなる。

こっそり「防犯ブザー」を持たせるのならばまだしも、「セクハラを許さないという社内外へのメッセージ」でもあるのならば、顧客への不信感の表明と受け取られても仕方がない。

付け加えると、今回の記事に付けた写真はやらせの臭いがする。「明治安田生命」という文字が見えるビルの前で若い女性がメモ帳のようなものを覗き込み、肩から下げたバッグにはしっかりと「防犯ブザー」らしき機器がぶら下がっている。たまたま居合わせた「女性営業職」の人の写真には、とても見えない。しっかり人選した上でポーズを取らせている気がする。


※今回取り上げた記事「セクハラ ゼロへの道(上) 『男子文化』がそぐ活力 『見ないふり』企業のリスクに
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180629&ng=DGKKZO32374980Y8A620C1MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。今回の連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「罰則なし」に誤解あり 日経「セクハラ ゼロへの道」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_30.html

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