2018年6月19日火曜日

日経「あすへの話題」での自慢話が怪しい松本晃カルビー会長

カルビー会長兼CEOの松本晃氏が日本経済新聞夕刊1面のコラム「あすへの話題」に書く内容は何かと問題が多い。18日の「しくみを変える、悪しき文化を壊す」でも色々とおかしなことを書いていた。順に指摘していく。
原田駅(福岡県筑紫野市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

「しくみを変え、悪しき文化をぶっ壊せ」とムキになって、力ずくで闘ってきた。

戦後の日本はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで高度成長を遂げた。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なんていわれた。しかし、それも今となっては久しい昔のことだ。

1989年11月、東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊した。そして、世界の秩序が変わった途端、日本の成長神話は藻(も)屑(くず)のように消え去った


◎高度成長は89年まで続いた?

上記のくだりからは「1989年11月、東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊した」のとほぼ同じ時期に「高度成長」が終わったと解釈できる。しかし、「高度成長」とは「1950年代半ばから73年の石油ショックまでの間、日本の経済成長率が年平均10パーセントを超えていたことをいう」(大辞林)のが一般的だ。松本氏は「バブル崩壊=高度成長の終焉」と誤解している可能性が高い。

ちなみに「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は1979年の発売なので、高度成長期とはややズレがある。許容範囲内だとは思うが…。

続きを見ていこう。

【日経の記事】

戦後の高度成長を支えた「しくみ」は単純ながら確かに上手にできていた。工業製品の規格大量生産を支える終身雇用制、年功序列、企業内組合、厚い残業手当等々……。実に良くできた制度・しくみだった。



◎「厚い残業手当」が高度成長を支えた?

終身雇用制、年功序列、企業内組合」が「戦後の高度成長を支えた」という説明は理解できるが、「厚い残業手当」が謎だ。「厚い残業手当」が高度成長を支えたのならば、なぜサービス残業が日本に根付いたのかとの疑問も残る。

記事ではこの後に松本氏の自慢話が続く。「自慢はダメ」とは言わないが、ツッコミどころが多いのは困る。

【日経の記事】

しかし、今やその多くが使い物にならなくなってしまった

また、組織には時が経つにつれて悪しき文化が蔓延(はびこ)る。これは組織というものの持つ避け難い本質だ。故に、これはぶっ潰すしか解決の方法はない

複雑化したしくみを簡素化し、社内を徹底的に透明化してきた。権限委譲を大胆に断行した。コーポレート・ガバナンスもコストリダクションも抵抗勢力に敗(ま)けなかった。オフィス改革を進め、給与体系や昇進・昇格制度も抜本的に変えた。人材育成の制度を創った。さらにはダイバーシティは今や日本一といわれるようになり、並行して働き方改革も躊躇(ちゅうちょ)なく進めた。全ては会社が21世紀の世界で戦えて成長するためだった。

こんなことをやっているとやはり嫌われる。だからという訳でもないが、ここらあたりが潮時と感じ20日をもって卒業する。

「皆さん、大変お騒がせしました。そして、ありがとう!」


◎本当に「ぶっ潰した」?

終身雇用制、年功序列、企業内組合、厚い残業手当」といった仕組みの「多くが使い物にならなくなってしまった」と書いた上で「ぶっ潰すしか解決の方法はない」と松本氏は言い切っている。だとしたら「終身雇用制、年功序列、企業内組合、厚い残業手当」といった制度の多くを松本氏はカルビーでぶっ潰したはずだ。しかし、どうも怪しい。
ハンググライダー発進基地(福岡県久留米市)
          ※写真と本文は無関係です

複雑化したしくみを簡素化し、社内を徹底的に透明化してきた。権限委譲を大胆に断行した」などと自慢はするが、具体的にどう変えたのかには触れていない。

コーポレート・ガバナンスもコストリダクションも抵抗勢力に敗(ま)けなかった。オフィス改革を進め、給与体系や昇進・昇格制度も抜本的に変えた。人材育成の制度を創った」とさらに具体性に欠ける話が続く。これでは「終身雇用制、年功序列、企業内組合、厚い残業手当」をぶっ潰したかどうか判断できない。

例えば「従業員はすべて非正規とした。入社1年目でも10年目でも成果反映部分以外で給与の差がない制度に改めた。企業内組合は解散させた。残業は完全に禁止とし、残業手当の支給額はゼロになった」などと書いていれば「ぶっ潰したんだな」と納得できる。だが、そうは書いていない。

ダイバーシティは今や日本一といわれるようになり、並行して働き方改革も躊躇(ちゅうちょ)なく進めた」と自慢話は最後まで具体的にならない。さらに言えば、「日本一」と認定されたのならともかく、「日本一といわれるようになり」といった程度で自慢をしてしまうのはやめた方がいい。単なる自慢好きの経営者にしか見えなくなる。

ついでに言うと「コストリダクション」という言葉も引っかかる。単なる「費用削減」も「コストリダクション」と書くと、立派なことのように響くから不思議だ。この辺りが松本氏の上手さなのかもしれない。


※今回取り上げた記事「あすへの話題しくみを変える、悪しき文化を壊す
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180618&ng=DGKKZO31594520R10C18A6MM0000


※記事の評価はD(問題あり)。松本氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

松本晃カルビー会長の見識を疑いたくなる日経「あすへの話題」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/03/blog-post_20.html

日経「あすへの話題」に見える松本晃カルビー会長の思い込み
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_46.html

0 件のコメント:

コメントを投稿