2022年10月29日土曜日

「少子化対策はフランス・スウェーデンを見習え」に説得力欠く日経ビジネスの記事

「少子化を克服したかったらフランスやスウェーデンを見習え」ーー。これまで繰り返されてきたこの主張に説得力はないが、それでもこのパターンの記事はなくならない。日経ビジネス10月31日号の特集「産める職場の作り方~人口減少は企業が止める」の中の「フランスとスウェーデン、高出生率の秘訣~充実の国家支援で 子育ての負担減らす」 という記事もやはり苦しい内容だった。そうなる理由を述べてみたい。

錦帯橋

(1)フランスとスウェーデン、出生率はなぜ低下?

フランスの2020年の合計特殊出生率は1.83と欧州連合(EU)内でもっとも高く、スウェーデンは1.66でその後を追う。両国ともに近年は出生率が下落傾向にあるが、それでも日本に比べると高い。ともに急速な人口減少の危機にひんした時期があり、少子化対策を国家戦略の需要な柱に据えてきた。まずはフランスの事例を見てみよう

今回の記事では「両国ともに近年は出生率が下落傾向にある」ことに触れてはいるが、そこを分析せずに「それでも日本に比べると高い」と見習うべき対象として認定してしまう。

出生率が「日本に比べると高い」国は「フランスとスウェーデン」に限らない。圧倒的な“優等生”はアフリカに多い。先進国に限定するとしてもイスラエルがある。こうした国々を無視して、出生率の水準も大して高くなく「近年は出生率が下落傾向にある」国をなぜ手本にするのか。そこを説明しないと説得力は生まれない。


(2)フランスとスウェーデンの「移民効果」は無視?

フランスとスウェーデン」は移民受け入れが多い国として知られる。フランスでは移民を除くと出生率は高くないとも言われる。この辺りに記事では触れていない。移民は最初は出生率が高くても社会に同化していく中で出生率が低下するという話もある。

移民の多さが「フランスとスウェーデン」の“高い”出生率を支えているならば「日本も移民受け入れを積極的に進める」のが少子化対策となる。しかし記事では、そこも論じていない。結果として、ありがちな「子育て支援を見習え論」になってしまっている。


(3)子育て支援策に大きな効果ある?

フランスは、90年代以降に子育て支援策を強化する。その柱は主に以下の3つだ。①子どもがいても新たな経済負担が生じないようにする② 保育制度の拡充③育児休業の充実──だ。こうした改革が奏功し、2000年ごろから出生率が上がっていく」と記事では解説している。

しかし2010年代になると出生率は低下傾向となり「2000年ごろ」の水準にほぼ戻っている。つまり効果は乏しかった。「子育て支援策を強化」しても効果は限定的と見るのが妥当だ。なのに記事では、その辺りも無視してしまう。

フランスやスウェーデンにおいては、国が少子化対策を強力に推し進めている。GDP(国内総生産)に占める少子化対策への公的支出の割合は、スウェーデンが3.4%、フランスは2.9%と、日本(1.6%)の2倍前後に上る。両国は多額の予算と制度を駆使して出生率を高めており、見習うべき点は多い」と記事では結論付けている。ありがちなパターンだ。

少子化対策への公的支出」を増やすと「出生率を高め」るという因果関係を前提にしているようだが、この3カ国の数字だけからは因果関係を断定できない。「公的支出の割合」はスウェーデンがフランスを上回るが出生率では逆なのも気になる。

仮に因果関係があるとしても「フランスとスウェーデン」では出生率が低下しているのだから「効果は持続的ではない」という可能性は高い。


(4)フランスとスウェーデンに追い付けば満足?

少子化対策への公的支出」を「フランスとスウェーデン」並みにすると出生率も並ぶとしよう。それで良しとするのか。高い方のフランスでも出生率は「1.83」。人口置換水準に及ばない。なのに「公的支出」を倍増させる意味があるのか。

少子化克服を目指すなら人口置換水準が目安になるだろう。そして、この水準を上回る国は世界にたくさんある。なのになぜ「フランスとスウェーデン」を「見習うべき」なのか。

その答えはこの記事にもない。



※今回取り上げた記事「フランスとスウェーデン、高出生率の秘訣~充実の国家支援で 子育ての負担減らす

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/01265/


※記事の評価はD(問題あり)

2022年10月24日月曜日

相変わらず問題多い日経 中村直文編集委員の「経営の視点~物価高に迷うコンビニ」

日本経済新聞の中村直文編集委員が問題の多い書き手であることは何度も指摘してきた。24日の朝刊ビジネス面に載った「経営の視点:物価高に迷うコンビニ~量販化、成長か淘汰か」という記事でも、その評価は変わらない。「物価高に迷うコンビニ」と見出しを付けているが、最後まで読んでもコンビニが「迷う」話は出てこない。それ以外にも色々と問題を感じた。中身を見ながら中村編集委員に助言していきたい。

岩国城

【日経の記事】

ローソンでは日清食品のカップヌードルが6月に198円から231円に値上がりした。かつてコンビニエンスストアは便利さが持ち味で、価格設定の優先順位は低かった。しかし今は違う。

価格のインパクトが増し、値ごろ感のある商品をそろえる「量販化」を加速しないと、顧客にそっぽを向かれてしまう。値上げをしながらも、柔軟な価格対策も急務。新型コロナに加え、物価高はコンビニに次の経営の方向性を示すように迫ったのだ。

ファミリーマートは昨年秋から物価高の局面を見据え、細見研介社長が号令をかけ、よりきめ細かな店頭価格を設定する取り組みを始めた。


◎店頭価格は本部が決める?

ここまでを読むと「コンビニにおける店頭価格の決定権は本部にある」との前提を感じる。コンビニの主流であるFC店では、少なくとも形式的には価格決定権は加盟店にあるのではないか。

「実質的には本部が決めている」と見るなら、それはそれでいい。ただ、その辺りの説明は欲しい。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

今年3月に価格戦略・販売計画グループを発足。これまではカテゴリー別に価格を決めていたが、「価格でファミマのメッセージを感じ取ってもらいたく、全体のバランスを再考した」(担当者)。

例えばおにぎり。価格帯を上から「松・竹・梅」とした場合、200円を超える「スパムむすび」「豚ロースの生姜焼きおむすび マヨネーズ入り」などの松、150円台以下の梅は充実していた。しかしその中間に当たる竹は乏しい。そこで170~180円前後のおにぎりを増やし、バランスをとった

いわゆる価格の松竹梅の法則の活用でもある。2つの価格コースでは低い価格を選ぶ傾向が強いが、3つに設定すると竹を選びやすくなる。一番上はぜいたくに感じ、一番下では貧しく感じてしまうからだ。物価高で消費者の価格選好はより複雑になる。そこでファミマは選択肢を広げ、買いやすさを促そうというわけだ。


◎で、結果は?

170~180円前後のおにぎりを増やし、バランスをとった」時期が記事からは明確に判断できないが仮に「今年3月」ごろだとしよう。であれば結果が出ているはずだ。

なのに中村編集委員はそこには触れない。狙い通りならば「200円を超える『スパムむすび』『豚ロースの生姜焼きおむすび マヨネーズ入り』などの松」と「150円台以下の梅」は販売が落ち込むものの「170~180円前後のおにぎり」が中心となって全体での増収を確保しているはずだ。

ファミマ」がそこは明らかにしないのならば、この取り組みを前向きに取り上げる意味はない。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

余談だが、数年前の出張時に有名神社に立ち寄ったときのこと。肉親の病気回復のために厄払いを申し込もうとすると、祈祷(きとう)料は5000円、8000円、1万円の3種類だった。さすがに最低価格は除外し、8000円か1万円。肉親への祈りなので2000円をケチるのもどうかと思い、1万円を選択。もしこれが7000円と1万円ならば、7000円を選択した可能性もある。価格心理は実に微妙だ。


◎要らない「余談」

この「余談」は要らない。まず3つの選択肢の中で最高価格の「1万円を選択」しているので「松竹梅の法則」の実例になっていない。

また「2000円をケチるのもどうかと思い、1万円を選択」したのに「7000円と1万円ならば、7000円を選択した可能性もある」となるのが解せない。「2000円」と3000円は中村編集委員にとってそんなに大きな差なのか。

記事に説得力を持たせる効果を狙ったのだろうが逆効果だと思える。

さらに続きを見ていく。


【日経の記事】

本題に戻るが、最大手のセブン―イレブン・ジャパンも松竹梅価格戦略の見直しに動いた。グループのスーパー、イトーヨーカ堂が扱う低価格プライベートブランド(PB)の「ザ・プライス」をリニューアルし、60店で実験的に導入した。物価高でのニーズを見極めようと、あえて価格帯を広げたのだ。

これまでプレミアムを軸に付加価値路線がセブンの持ち味だった。しかしコロナでコンビニの売り上げは低下。大容量品の拡充など日常的な買い物への対応強化を進めてきた。さらに物価高に賃金上昇が追いついていかず、セブンといえども節約志向シフトは欠かせない。


◎どう見直した?

セブン―イレブン・ジャパンも松竹梅価格戦略の見直しに動いた」と言うが、どう「見直し」たのかよく分からない。

ザ・プライス」を「60店で実験的に導入した」ことと「松竹梅価格戦略」の関連を中村編集委員は説明していない。「松竹梅」の下に位置する価格帯の商品を置いたのか何なのか、そこは触れるべきだ。

「行数の関係でできない」と言うなら「セブン」の話は省いていい。

結論部分にも問題を感じた。


【日経の記事】

コンビニの量販化はスーパーやドラッグストアなどとの業態間競争の激化も意味する。次の成長への一歩か、淘汰の始まりか。人口減、物価高などの逆風下、それぞれが顧客を持続的に誘導する次の「動線」が求められている。


◎「コンビニの量販化」を論じてた?

コンビニの量販化はスーパーやドラッグストアなどとの業態間競争の激化も意味する」と中村編集委員は言うが、今回の記事で「コンビニの量販化」を論じているのか。

セブン」の話は分かるが「170~180円前後のおにぎりを増やし、バランスをとった」という「ファミマ」の話は「量販化」とは言い難い。

量販化」を論じたいのならば、コンビニが低価格志向を強めている状況を描き、それが業績にどういう影響を与えているのかを分析すればいい。

しかし今回の記事では分析する意欲すら見えない。これが中村編集委員の実力なのだろう。


※今回取り上げた記事「経営の視点:物価高に迷うコンビニ~量販化、成長か淘汰か

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221024&ng=DGKKZO65380740T21C22A0TB0000


※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「『嫌い』が変える消費」の解説が強引な日経 中村直文編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/05/blog-post_30.html

マックが「体験価値」を上げた話はどこに? 日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/04/blog-post_15.html

無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html

「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html

スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html

「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html

「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html

キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html

分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html

「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html

「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html

「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html

「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html

日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html

「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html

「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html

渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html

早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html

日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html

「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html

野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_15.html

「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_23.html

平成は「三十数年」続いた? 日経 中村直文編集委員「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/deep-insight.html

拙さ目立つ日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ~アネロ、原宿進出のなぜ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/blog-post_28.html

「コロナ不況」勝ち組は「外資系企業ばかり」と日経 中村直文編集委員は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/blog-post.html

データでの裏付けを放棄した日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/blog-post_17.html

「バンクシー作品は描いた場所でしか鑑賞できない」と誤解した日経 中村直文編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/09/blog-post_11.html

「新型・胃袋争奪戦が勃発」に無理がある日経 中村直文編集委員「経営の視点」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_26.html

「悩み解決法」の説明が意味不明な日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_19.html

問題多い日経 中村直文編集委員「サントリー会長、異例の『檄』」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/blog-post_89.html

「ジャケットとパンツ」でも「スーツ」? 日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/blog-post_30.html

「微アルコール」は「新たなカテゴリー」? 日経 中村直文編集委員の誤解https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/blog-post_12.html

「ながら族が増えた」に根拠欠く日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/05/blog-post_14.html

「プロセスエコノミー」の事例に無理がある日経 中村直文編集委員「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/10/deep-insight.html

2022年10月19日水曜日

「どこよりも強力な利上げを進める」のは米国と誤解した日経 菅野幹雄上級論説委員

「世界で最も強力な利上げをこの1年で進めたのは米国」と日本経済新聞の菅野幹雄上級論説委員は思い込んでいるようだ。誤りだと思えるので以下の内容で問い合わせを送った。 

錦帯橋

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 上級論説委員 菅野幹雄様

19日の朝刊オピニオン面に載った「中外時評~近づく『最悪』、漂流する協調」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「物価高が賃金上昇の連鎖反応を起こす米国は1年で3%という、どこよりも強力な利上げを進める」との記述です。

これは本当でしょうか。9月16日付の日経の記事では「アルゼンチン中央銀行は15日、政策金利を5.5%引き上げて75%にすると発表した。今年9回目の利上げとなる」と伝えています。「1年で3%」という米国の「利上げ」幅を1回で上回っています。過去「1年」では40%を超える「利上げ」となっています。

ブラジルもこの「1年」で政策金利を2%から13.75%へ引き上げています。「米国は1年で3%という、どこよりも強力な利上げを進める」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

御紙では読者からの間違い指摘を無視してミスを放置する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアの「上級論説委員」として責任ある行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「中外時評~近づく『最悪』、漂流する協調

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221019&ng=DGKKZO65235540Y2A011C2TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。菅野幹雄氏への評価もDを据え置く。菅野氏については以下の投稿も参照してほしい。

「デフレ圧力が残っている」と日経 菅野幹雄上級論説委員は言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/06/blog-post_29.html

米国は「民主主義の再建」段階? 菅野幹雄ワシントン支局長に考えてほしいことhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/blog-post_30.html

「追加緩和ためらうな」?日経 菅野幹雄編集委員への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_20.html

「消費増税の再延期」日経 菅野幹雄編集委員の賛否は?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_2.html

日経 菅野幹雄編集委員に欠けていて加藤出氏にあるもの
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_8.html

日経「トランプショック」 菅野幹雄編集委員の分析に異議
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_11.html

英EU離脱は「孤立の選択」? 日経 菅野幹雄氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_30.html

「金融緩和やめられない」はずだが…日経 菅野幹雄氏の矛盾
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_16.html

トランプ大統領に「論理矛盾」があると日経 菅野幹雄氏は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_24.html

日経 菅野幹雄氏「トランプ再選 直視のとき」の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_2.html

MMTの否定に無理あり 日経 菅野幹雄氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/mmt-deep-insight.html

「トランプ流の通商政策」最初の成果は日米?米韓? 日経 菅野幹雄氏の矛盾https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_27.html

新型コロナウイルスは「約100年ぶりのパンデミック」? 日経 菅野幹雄氏に問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/100.html

「中間選挙が大事」は自明では?日経 菅野幹雄氏「Deep Insight」に足りないものhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/02/deep-insight.html

「『マルチの蘇生』最後の好機」に根拠欠く日経 菅野幹雄氏「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/deep-insight.html

2022年10月17日月曜日

「だったらなぜドル高?」と聞きたくなる日経 大塚節雄記者の「Market Beat」

日本経済新聞の大塚節雄記者(金融政策・市場エディター)を悪くない書き手と見てきた。ただ17日の朝刊グローバル市場面に載った「Market Beat:ドル高、『仁義なき通貨選別』~円安、政策のジレンマ映す」という記事を見るとかなり苦しい。中身を見ながら具体的に指摘したい。

下関駅前

【日経の記事】

ドル高が一段と進んだ8月以降の主な通貨のドルに対する騰落率をみると、韓国ウォン、英ポンド、資源国通貨、そして円の下落が目立つ


◎「資源国通貨」の下落が目立つ?

円や韓国ウォン、資源国通貨の売りが目立つ」との説明文を付けたグラフでは17の通貨の「ドル騰落率」を見せている。それを見る限りでは「資源国通貨」の「下落が目立つ」感じはない。下落率の小ささ(メキシコペソが唯一の上昇でこれを1位とする)で見るとブラジルレアルが2位でロシアルーブルが3位と「資源国通貨」が上位に顔を出している。

ついでに言うと下落率が最大のアルゼンチンペソについて記事で一言も触れていないのも引っかかった。

この記事の中で最も問題なのは「なぜドル高なのか?」の疑問が残ることだ。それに絡むくだりを見ていこう。


【日経の記事】

各国のインフレ率と政策金利の関係をみると、それぞれの「インフレの深刻度」が推し量れる。具体的には政策金利からインフレ率を差し引けば値が小さいほどインフレへの対応が遅れていることを示唆する。これは現実のインフレ率で計算した「実質政策金利」といえる。大幅な実質マイナス金利のままなら、インフレに対して利上げが足りないことになる。

その数値は米国がマイナス4.8%。なお利上げは止められない。英国はマイナス6.8%ともっと大幅なマイナスだ。ノルウェー、韓国、ニュージーランドはマイナス2%台にとどまる

おおむねインフレの深刻度が大きいほど通貨が売られやすい傾向が読み取れそうだ。ただし英ポンドは深刻度の割に下げが小さい。中銀の国債購入で急激なポンド安がいったん和らいだためだが、中銀のインフレ対応の必要性が高いことと政策の混乱を踏まえれば、ポンド安の余地はなお残るかもしれない。

バブル経済崩壊後の最安値を更新する円はどうか。インフレ圧力が小さく利上げ競争には参戦していないが、インフレの深刻度はマイナス2.5%とノルウェーや韓国と大差ない。政策金利が主要国で唯一「名目マイナス」だからだ。ゼロ%に戻せば計算上、インフレの深刻度は改善する。


◎だったらドル安のはずだが…

おおむねインフレの深刻度が大きいほど通貨が売られやすい傾向が読み取れそうだ」と大塚記者は言う。「その数値は米国がマイナス4.8%」で「マイナス2%台」の「ノルウェー、韓国、ニュージーランド」を大きく上回る。ポンドはともかく円などが対ドルで値下がりするのが解せない。そこの解説は欲しい。

もう1つ気になるのがトルコリラだ。大塚記者は無視しているが、インフレ率80%超で政策金利12%のトルコリラが17通貨の中では「インフレの深刻度」で他を圧倒しているはずだ。しかし「下落率の小ささ」では4位とかなり上位。都合が悪いから無視したのだとすれば感心しない。

付け加えると「実質政策金利」を「インフレの深刻度」の指標と見るのは苦しい。「インフレの深刻度」はやはりインフレ率で見るべきだ。「実質政策金利」に関しては「インフレ対応の進行度」の指標とでもすべきだろう。

記事の結論部分にも注文を付けておきたい。


【日経の記事】

止まらない円安は市場が政策のジレンマを突いた結果だともいえる。米インフレのピークアウトをただ待つのではなく、金融緩和の効果を確保しつつ金利変動を柔軟にするといった政策面の不断の工夫が必要だろう。暴力的なまでの通貨選別に走る市場を前に矛盾を放置したままでは危うい。


◎どこが「暴力的」?

暴力的なまでの通貨選別に走る市場」と大塚記者は言うが、何を見て「暴力的」と判断したのか。グラフを見ると8月以降の騰落率でメキシコペソが1%程度のプラスで、対極にいるアルゼンチンペソが13%程度のマイナス。2カ月半でこの程度の値動きなら驚きはない。

大塚記者にはこの程度の「通貨選別」が「暴力的」に見える?


※今回取り上げた記事「Market Beat:ドル高、『仁義なき通貨選別』~円安、政策のジレンマ映す

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221017&ng=DGKKZO65185260W2A011C2ENG000


※記事の評価はD(問題あり)。大塚節雄記者への評価C(平均的)からDへ引き下げる。大塚記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。


「無事これ名馬」だが…日経 大塚節雄記者に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_15.html

FRBは「巨額の損失リスク」を負わない? 日経 大塚節雄記者「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/frb-deep-insight.html

2022年10月11日火曜日

「アンコンシャス・バイアス」解き放つべきは日経 高橋里奈記者の「思い込み」では?

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」ーー。この言葉を使って女性問題を論じている記事に説得力を感じたことがない。10日の日本経済新聞朝刊女性面に高橋里奈記者が書いた「私の『思い込み』解き放つ」という記事もそうだ。高橋記者には「アンコンシャス・バイアス」に関する自らの「思い込み」を解き放ってほしい。

宮島連絡船

中身を見ながら具体的に記事の問題点をしてきしていく。

【日経の記事】

だが女性自身にも「夫には大黒柱でいてほしい」「子どもができたら育休を長く取るのは母である私であるべきだ」といったアンコンシャス・バイアスが、自らはしごを壊している面もありそうだ。

内閣府が2021年に実施した「性別による無意識の思い込み」調査によると、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と答えた女性は47%に上る。「育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきではない」、「家事・育児は女性がすべきだ」という女性も2~3割いた。男女間での役割分業意識は女性の中にも根強い。


◎「無意識」になってる?

内閣府」の「調査」にも問題はあるが、それをそのまま紹介する高橋記者は何も疑問を感じなかったのか。

男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と答えた「女性」には「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」という「無意識の偏見」はない。「無意識」ならば「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」との回答はできない。なのに、なぜ「無意識」と見るのか。

男性は仕事をして家計を支えるべきではない」と答えたのに実際の行動では「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」との前提で判断しているといった事例があれば「無意識の偏見」と言うのもまだ分かるが…。

さらに言えば「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」という考えは「偏見」ではない。事実に反しているのならば「偏見」に当たるが「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」というのは価値観の話。これを「偏見」と見る場合「男性も女性も仕事をして家計を支えるべきだ」といった考えを「偏見」と見なす主張も成り立つはずだ。

さらに見ていこう。


【日経の記事】

こうした意識はなぜ生まれるのか。「アンコンシャス・バイアスは相手だけでなく、自分に対するものもある」と主張してきたアンコンシャスバイアス研究所(東京・港)の守屋智敬代表理事は、「過去の経験や見聞きしたことによって影響を受け培われるもので、自己防衛本能により生まれる」と説く。

「自分に対するアンコンシャス・バイアスは、自分の可能性を狭める」ものでもある。困難を伴う挑戦はしないほうが居心地はよいかもしれない。だが思考や行動を変えると「見える世界も変わり未来も変わる」と守屋氏は訴える。

例えば「育児中だから出張が多いこの仕事は私には無理」と頭ごなしに決めつける思考は自分の可能性を限定すると守屋氏は指摘する。「本当に無理なのか、思い込みではないのか」と振り返ってみる。「自らに疑問を持ち、どうしたら実現できるか、上司やパートナーと相談することが大事」とアドバイスする。従来の考え方を変えてみようとする、少しでも周囲に相談してみる、という一歩が思い込みから抜け出し新たな飛躍への突破口になる。


◎またまたおかしな話が…

自分に対するアンコンシャス・バイアスは、自分の可能性を狭める」ものなのか。ならば「自分にできないことなんてない。自分は全知全能の存在だ」といった類の「アンコンシャス・バイアス」は存在しないのか。だとしたら、なぜ「自分の可能性」を広げる方向には働かないのだろう。

育児中だから出張が多いこの仕事は私には無理」と「頭ごなしに決めつける思考」を「アンコンシャス・バイアス」と見なすのも苦しい。この場合も「無意識」とは考えにくいし「偏見」とも言い難い。「育児」と「この仕事」の兼ね合いではないのか。

例えば「年間20回程度の海外出張がある『この仕事』を6歳3歳1歳の3人の『育児』と両立させるのは難しい。夫は長期入院中だし他に頼れる人もいないし…」などと考える人は「アンコンシャス・バイアス」に囚われているのだろうか。

アンコンシャス・バイアス」は巷に溢れていると「アンコンシャスバイアス研究所(東京・港)の守屋智敬代表理事」が訴えるのは立場上当たり前かもしれない。高橋記者はそこを差し引いて考えているのか。

記事に付けた「あなたにあてはまる?性別に関するアンコンシャス・バイアスの実例」は出所が「アンコンシャスバイアス研究所の守屋智敬代表理事」となっている。その事例もやはりおかしい。

例えば「『私は主夫です』と聞くと、なんで?と、とっさに思う」のはなぜ「アンコンシャス・バイアス」に当たるのか。まず「無意識」が確認できない。

自分は「男性が当たり前に専業主夫になれる社会になれば良いのに…」と思っているが「『私は主夫(ここでは専業主夫と仮定)です』と聞くと、なんで?」とは聞きたくなる。それは「なかなかなれない専業主夫になれたのはなんで?(どんな状況だったから、それを実現できた?)」との趣旨だ。これは「偏見」なのか。極めて事例が少ないものに接した場合「なんで?」と思うのは当たり前だ。

例えばスキージャンプ日本代表選手の出身地が沖縄県だったら「なんで?」と思うのは当然。「スキージャンプの選手は基本的に雪国出身」との認識があるからだが別に「偏見」ではない。「スキージャンプの選手は雪国出身でないとなれないので沖縄出身という経歴は虚偽に決まっている」などと言い出せば「偏見」だろうが…

この記事の関連記事の中で「職場では男性の上司の考えが変わらないと前には進まない」と高橋記者は言い切っている。この考えの方が「偏見」と言える。

まず「職場」に「男性の上司」がいるとは限らない。また「男性の上司の考えが変わらない」場合でも「」に進む場合は十分にあり得る。例えば従業員の女性比率が高まることを「前に進む」と見る場合、「部下にするなら男性がいいなあ」という「男性の上司の考え」が変わらなくても、男性の採用が難しく結果的に女性の部下が増えてしまう事態はあり得る。

職場では男性の上司の考えが変わらないと前には進まない」と思い込むのは「アンコンシャス・バイアス」には当たらないのか。当たらないとすれば、今回の記事で挙げた事例は本当に「アンコンシャス・バイアス」に該当するのか。高橋記者には改めて考えてほしい。


※今回取り上げた記事「私の『思い込み』解き放つ」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221010&ng=DGKKZO64964760X01C22A0TY5000


※記事の評価はD(問題あり)。高橋里奈記者への評価はCからDへ引き下げる。高橋記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経の高橋里奈記者 「スタバ」で触れていない肝心なこと
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_13.html

2022年10月3日月曜日

古い話を「これからの話」に見せたかった? 日経「住友林業、豪住宅で太陽光標準化」

色々と疑問を感じる記事が3日の日本経済新聞朝刊ビジネス面に載っていた。「住友林業、豪住宅で太陽光標準化~光熱費を最大75%削減」という記事の全文を見た上で具体的に指摘したい。

錦帯橋

【日経の記事】

住友林業はオーストラリアですべての戸建て注文住宅に太陽光パネルを標準搭載する。オール電化も備えることで光熱費を最大75%削減でき、使用時のエネルギーを実質ゼロにするZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)化も可能だ。住宅ローン金利や建設コストが高騰する中、同国の脱炭素規制や需要層の関心の高まりに対応する。

注文・分譲住宅を手がける子会社のヘンリーグループが南部ビクトリア州で6月に、北東部クイーンズランド州で8月に太陽光パネル搭載を標準化した。冷暖房や調理機器を電化して太陽光で発電した電力を自家消費し余剰分は売電する。豪州での注文住宅の価格が25万豪ドルから50万豪ドル(2500万~5000万円)に対し、太陽光パネルの設置費用は100万円程度と見込む。電気代が高騰していることから「6~7年で回収できる価格」(住友林業)という。


◇   ◇   ◇


(1)これからの話?

住友林業はオーストラリアですべての戸建て注文住宅に太陽光パネルを標準搭載する」と冒頭にあるので「これから」の話かなと感じる。しかし読み進めると「注文・分譲住宅を手がける子会社のヘンリーグループが南部ビクトリア州で6月に、北東部クイーンズランド州で8月に太陽光パネル搭載を標準化した」と書いてあるだけで今後の展開には触れていない。

ニュース性があるように見せるために過去の話をこれからの話のように書いてみたということか。断定はできないが、その可能性は高い。


(2)他の州は?

住友林業はオーストラリアですべての戸建て注文住宅に太陽光パネルを標準搭載する」と書いているものの「ビクトリア州」と「クイーンズランド州」の話しか出てこない。「住友林業」はこの2州でしか事業をしない方針なのか。他の州や地域へは今後広げていくのか。そこの説明は欲しい。後者ならば、その時期にも触れる必要がある。


(3)それでも「注文住宅」?

注文住宅に太陽光パネルを標準搭載する」ということは「太陽光パネル」なしを顧客は選べないのか。仮にそうならば、それで「注文住宅」と言えるのかとは思う。


(4)なぜ「75%削減」止まり?

オール電化も備えることで光熱費を最大75%削減でき」るらしいが、なぜ「75%削減」止まりなのか。「オール電化」で「余剰分は売電する」のならば状況次第では利益が出ても良さそうだが…。


(5)グループ全体ではどう?

行数の関係で入れられない場合もあるだろうが「住友林業」グループ全体でどうなっているのかは盛り込みたい。日本では「標準搭載」が終わっていて、それを海外でも広げる初の試みとなるのがオーストラリア…といった話があると好ましい。

住友林業」の海外事業の中でオーストラリアの位置付けがどうなっているのかも分かるとさらにいい。


総括すると、ニュース記事をきちんと書く力が付いていないのに「古い話でもニュース性があるように見せる技術」は持っているのかなと思わせる記事だった。


※今回取り上げた記事「住友林業、豪住宅で太陽光標準化~光熱費を最大75%削減」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221003&ng=DGKKZO64811110S2A001C2TB0000


※記事の評価はD(問題あり)