2018年6月26日火曜日

「IFAは顧客本位」に疑問なし? 東洋経済 中村陽子記者

週刊東洋経済6月30日号に載った「ブックス&トレンズ 『投資信託 失敗の教訓』を書いた 独立系ファイナンシャルアドバイザー 福田猛氏に聞く」という記事は問題が多い。「福田猛氏」がおかしな発言を連発するのは立場上ある程度は理解できる。分からないのは記事を書いた中村陽子記者だ。福田氏の話をそのまま大して疑問も持たずに受け入れている。話を聞いていて、あるいは記事を書いていて「何か変だな」とは感じなかったのか。だとしたら投資関連の記事は書かない方がいい。
関門海峡ミュージアム(北九州市)
       ※写真と本文は無関係です

福田氏の発言にツッコミを入れてみたい。

【東洋経済の記事】

──日本ではFAは富裕層のもの、一般人には無関係と思いがちです。

米国には30万人の独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)がいます。証券会社と業務提携し、その取扱商品を案内して販売する。IFAには証券会社から手数料の一部がキックバックされるので、別途相談料などはかかりません。金融機関に属するFAはその会社の推奨商品の営業マンになりがちですが、IFAは顧客にとって何がベストか、資産運用にとどまらず、不動産や保険も含めた資産全体の最適化をアドバイスする。あくまで顧客に寄り添って、ストレスのない運用を提案するスタイル。普通を着実に継続してこそ最大の効果が得られるんです。



◎本質的な違いはないような…

独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)」の福田氏が「IFAは素晴らしい」と宣伝するのは当然だ。そこを責めるつもりはない。だが、主張に説得力はない。

上記の説明でIFAを「あくまで顧客に寄り添って、ストレスのない運用を提案するスタイル」だと感じただろうか。IFAは「証券会社と業務提携し、その取扱商品を案内して販売する」という。「証券会社から手数料の一部がキックバックされる」のならば、基本的には「提携している証券会社の回し者」と考えるべきだ。「金融機関に属するFA」と本質的な違いはない。中村記者はそう思わなかったのか。

さらにツッコミを入れていく。

【東洋経済の記事】

──サブタイトルが「成功の秘訣は『相場を予測しない』」。運用していることを忘れるくらいがいい、と。

私たちは顧客が持つ目標に基づいてポートフォリオを組んでいく、ゴールベースの資産運用をします。その対極はマーケットベース。予想で株の売り買いをする。でも予想って当たらないものなんです。当たるか外れるか、これってギャンブルですよね。まとまった大切なおカネ、減らしてはいけないおカネを、当たらない予想に基づいて動かしちゃダメです。

予想なしに運用なんてできるの?と問われたら「できる」と答えます。積立投資で毎月自動的に一定額が口座から引き落とされ、普段はほったらかし。これを10年続けて減る人はいません。世の中の景気の良しあしは大体10年サイクル。経済はつねに循環するから相場なんて予想する必要はない。積立投資は価格が下がれば買い付け量が増える。量を味方につけるので、価格が少し上向けば莫大な成果が上がる。積立投資にいちばん不向きなのは価格がいっさい変動しない銀行預金です。



◎「予想」しているような…

予想なんかしなくても運用できる」と福田氏は言うが、よく読むと福田氏も「予想」している。「長期的には値上がりする」という予想だ。でないと「これ(積み立て投資)を10年続けて減る人はいません」との結論にはならない。相場の長期トレンドが下落ならば「積立投資」でも損をしてしまう。

ちなみに、バブル崩壊直前の1989年末から日経平均連動型の投資信託で「積立投資」を始めたと仮定すると、「10年続けて」も利益は出ないだろう。日経平均が半値近くに下がるからだ。

価格が少し上向けば莫大な成果が上がる」という説明も問題がある。「価格が少し」しか上がらないのならば「成果」も基本的には「少し」だ。1株1000円のA株での積立投資で考えてみよう。毎月1000円ずつ買っていく。最初は1株だ。次の月に暴落して100円になったので10株買う。これで2000円投資して11株を手に入れた(資産評価額は1100円)。次の月に1%の値上がりで株価は101円となった。資産評価額は11株で1111円だ。

これで「価格が少し上向けば莫大な成果が上がる」と言えるだろうか。投資額に対しては900円近い損。「価格が少し」上向いたことによる「成果」は11円(1%)に過ぎない。

投資信託 失敗の教訓」という本を読んだわけではないが、その中で福田氏が上記のような主張を述べているのであれば「この本の筆者を記事で取り上げるのは好ましくない」と中村記者も判断できたはずだ。なのに記事では、福田氏の考えに共感しているような問いを続ける。そこが悪い意味で凄い。


※今回取り上げた記事「ブックス&トレンズ 『投資信託 失敗の教訓』を書いた 独立系ファイナンシャルアドバイザー 福田猛氏に聞く
https://dcl.toyokeizai.net/ap/textView/init/toyo/2018063000/DCL0101000201806300020180630TKW037/20180630TKW037/backContentsTop


※記事の評価はD(問題あり)。中村陽子記者への評価も暫定でDとする。

0 件のコメント:

コメントを投稿