2018年6月13日水曜日

「仮に北朝鮮が核武装すれば」と書く日経 内山清行氏に注文

米朝首脳会談を受けて13日の日本経済新聞朝刊1面に「半島の激変に備えを」という解説記事が載っている。その中で、筆者であるチーフエディターの内山清行氏は「仮に北朝鮮が核武装すれば、日米が防衛力を強化するのは間違いない」と記している。裏返せば「現状では北朝鮮は核武装に至っていない」と判断しているはずだ。これが解せない。
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問題のくだりを見てみよう

【日経の記事】

おそらく間違いないのは、好ましい方向と悪い方向のどちらにも、朝鮮半島情勢が大きく動く可能性がでてきたということだ

仮に北朝鮮が核武装すれば、日米が防衛力を強化するのは間違いない。中国がそれを座視するとは思えない。軍拡の動きが懸念される半面、韓国の革新政権は北朝鮮にすり寄る形での緊張緩和に動きかねない。日米韓の分裂である。



◎「核兵器保有」と「核武装」は違う?

記事では「トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長による首脳会談の焦点は、金委員長が体制のよりどころである核を本気で放棄する意志があるかどうか確認することだった」とも書いているので、内山氏は「北朝鮮が核を保有している」とは認識しているようだ。だが、核武装ではないという。

核兵器保有と核武装は異なるとの判断なのか。あるいは核保有と核兵器保有を別物としているのか。その辺りは明確にした上で記事を書いてほしい。

ついでに「おそらく間違いないのは、好ましい方向と悪い方向のどちらにも、朝鮮半島情勢が大きく動く可能性がでてきたということだ」というくだりにも注文を付けたい。基本的には、いつの時点でも「好ましい方向と悪い方向のどちらにも、朝鮮半島情勢が大きく動く可能性」はある。なので、この解説だとあまり意味がない。

また、「おそらく」「という」は省いていい。「でてきた」は「出てきた」と漢字表記すべきだ。簡単な漢字だし、「でてきたということだ」だと平仮名が続いて読みにくい。

間違いないのは、好ましい方向と悪い方向のどちらにも、朝鮮半島情勢が大きく動く可能性が出てきたことだ」とすると、スッキリして読みやすくなる。内容にも問題はないはずだ。

他にも記事にいくつかツッコミを入れておきたい。

【日経の記事】

反対に、核問題が解決に向かうなら、米朝関係は国交正常化が視野に入る。拉致問題の解決にむけた日朝交渉も始まるだろう。国際社会の北朝鮮支援や開発投資も本格化する。同時に在韓米軍の縮小など、安保環境が激変する望ましくない動きも現実味を増すかもしれない。



◎「在韓米軍の縮小」は望ましくない?

核問題が解決に向かう」結果、朝鮮半島での軍事衝突の懸念がほとんどなくなり「在韓米軍の縮小」が実現するとして、何が「望ましくない動き」なのか理解に苦しむ。記事には説明もない。どんなに各国が友好関係を深めたとしても「在韓米軍」は規模を維持するのが好ましいのか。だとしたら、その理由を明示してほしかった。
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続きを見ていこう。

【日経の記事】

北朝鮮をめぐる核問題は今後、日韓両国に加え、米国を中心にした世界秩序に挑む中国、ロシアも絡むパワーゲームの様相を呈するはずだ。世界の成長センターである東アジアの平和は日本にとって死活問題。日本は局面の変化に敏感であるべきだ。

米朝首脳会談が実現するまでの間、日本は不安な視線で成り行きを見つめざるを得なかった。当事者なのに主役になれないのは、安全保障を米国に頼る宿命である



◎そんな「宿命」ある?

米朝首脳会談が実現するまでの間、日本は不安な視線で成り行きを見つめざるを得なかった。当事者なのに主役になれないのは、安全保障を米国に頼る宿命である」との解説に説得力はない。

韓国は「安全保障を米国に頼る」国だが、「不安な視線で成り行きを見つめざるを得なかった」だろうか。それとも南北首脳会談などで自ら積極的に動く姿勢を見せただろうか。「当事者なのに主役になれない」のを「安全保障を米国に頼る宿命である」と諦める必要がないのは、韓国を見れば分かるのではないか。

記事では「仮に北朝鮮が核武装すれば、日米が防衛力を強化する」一方で「韓国の革新政権は北朝鮮にすり寄る形での緊張緩和に動きかねない」として「日米韓の分裂」に懸念を示している。「安全保障を米国に頼る」韓国にそんな独自の動きができるのならば、日本にもできるはずだ。

最後に記事の結論部分に注文を付けたい。

【日経の記事】

しかし、トランプ氏が期待する北朝鮮への経済支援で日本は、脇役以上の存在だ。日朝交渉では主役そのものである。情勢を分析し、国内世論をまとめ、外交力を発揮して国益を守らなければならない。安倍晋三首相に備えはあるだろうか


◎「経済支援」では頑張る?

トランプ氏が期待する北朝鮮への経済支援で日本は、脇役以上の存在だ」という記述が引っかかった。明言はしていないが「経済支援ではしっかり主役になるべきだ」と内山氏は訴えたいのだろう。個人的には反対だが、内山氏がそう訴えたいのならば、漠然とした書き方をしないで明確に書いてほしかった。

当事者なのに主役になれないのは、安全保障を米国に頼る宿命である」と諦めた上で、カネを出してくれと親分である米国に頼まれたらその時はしっかりと「脇役以上の存在」になる。それが内山氏の思い描く日本のあるべき姿なのか。だとしたら、かなり残念な国だ。

付け加えると、「安倍晋三首相に備えはあるだろうか」との結びも感心しない。「備え」があるかどうか内山氏自身の見方は示してほしい。「これからどうなることやら」的な結論であれば、誰でも書ける。日経は首相やその周辺を日常的に取材しているのだから、その結果を踏まえて解説記事を書いてほしい。


※今回取り上げた記事「半島の激変に備えを
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180613&ng=DGKKZO31690930S8A610C1MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。内山清行チーフエディターへの評価は暫定でDとする。

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