2022年12月27日火曜日

「量産する」と書いているが実は量産開始済み?と思える日経夕刊1面の記事

日本経済新聞の企業ニュースに「when」が抜けるのは悪しき伝統。26日の夕刊1面に載った「イーレックス、バイオマス発電燃料をベトナムで量産」という記事もその一例だが、やり方が巧妙になっている気がする。記事の全文を見た上で「量産」開始時期について考えてみたい。

宮島

【日経の記事】

電力小売り大手のイーレックスはバイオマス発電用燃料をベトナムで量産する。イネ科の植物「ソルガム」の商業栽培に着手し、2024年度には収穫量を年30万トンまで増やす。発電量に換算して約1億5000万キロワット時と、一般家庭3万5000世帯分の年間需要をまかなえる。加工して日本に運び、自社の発電所などで使う。木材からつくる燃料よりコストを抑え、低炭素電源の原価低減につなげる。

まず南部ロンアン省など4カ所で農場を運営し、燃料用品種を育てる。ソルガムは3カ月で高さ6メートルほどに成長する。24年度には栽培面積を約15平方キロメートルと、現状の2.5倍に増やす予定だ。ソルガムは乾燥に強い一年草で、生育が早く年3回ほど収穫できる。ベトナム国内の生産委託先の工場などで葉や茎を粒状の燃料「ペレット」に加工し、日本に輸出する。

ペレットは22年度中にも運営する糸魚川発電所(新潟県糸魚川市)で石炭と混ぜて燃やし始める。バイオマス発電の燃料は木材からつくる木質ペレットが一般的だが、より安価な燃料を自社生産してコストを抑える。今後は他の発電会社にも外販する方針で、将来はベトナム国内での販売も視野に入れる。23年度にソルガムの事業規模を10億円に増やす。

バイオマス燃料は草木の生育過程で光合成により二酸化炭素(CO2)を吸収するため、火力発電の環境負荷を減らせる。木質ペレット原料となるアカシアやユーカリは、植樹から伐採まで早くとも4~5年程度かかる。ソルガムは同じ栽培面積から得られる熱量がアカシアなどの約5倍と、効率が高い。


◎実はもう「量産」開始済み?

イーレックスはバイオマス発電用燃料をベトナムで量産する。イネ科の植物『ソルガム』の商業栽培に着手し、2024年度には収穫量を年30万トンまで増やす」と書いてあると、断定はできないものの「量産」開始は「2024年度」なのかなと感じる。

しかし読み進めると「24年度には栽培面積を約15平方キロメートルと、現状の2.5倍に増やす予定だ」と出てくる。つまり「現状」の「栽培面積」は6平方キロメートル。「収穫量」も連動すると考えると「現状」でも年間12万トンもの「ソルガム」を作っている計算になる。であれば既に「量産」は始まっていると見るのが自然だ。

それを裏付けるように「ペレットは22年度中にも運営する糸魚川発電所で石炭と混ぜて燃やし始める」とも記している。

これをどう理解すればいいのか。

おそらく「量産」は始まっている。「量産を始めた」と過去形にすると夕刊とはいえ1面には厳しいといった判断があったのかもしれない。そこで「量産する」と将来の話のように見せたのではないか。「量産開始時期に触れてない」と言われないために「2024年度には収穫量を年30万トンまで増やす」と「2024年度」を直後に持っていく。しかし「量産開始時期=2024年度」とは言い切らない。

この推測が当たっているのならば悪い意味でテクニックは身に付いている。だが、この手の記事を世に送り出していては読者からの信頼は得られないだろう。


※今回取り上げた記事「イーレックス、バイオマス発電燃料をベトナムで量産

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221226&ng=DGKKZO67147560W2A221C2MM0000


※記事の評価はD(問題あり)

2022年12月21日水曜日

日経の河浪武史 金融部長は管理職業務に専念した方が…

日銀による事実上の利上げを受けて日本経済新聞の河浪武史 金融部長が21日の朝刊総合2面に「成長と規律、回復へ一歩」という解説記事を書いている。なぜ編集委員らではなく河浪部長なのだろう。記事の出来もそんなに良くない。このレベルが限界なら管理職業務に専念した方がいい。問題点をいくつか挙げてみる。

錦帯橋
(1)今は「金利がない世界」?

市場だけでなく、企業にも家計にもサプライズとなり『金利がある世界』への備えは十分とはいえない」「『金利のある世界』には万全の備えが必要になる」と書いているので河浪部長にとって今の日本は「金利がない世界」なのだろう。

長期金利で言えばこれまでの許容上限が0.25%で、ほぼここに張り付いてきた。0.25%だと「金利がない世界」だが、それが0.5%になると「金利のある世界」なのか。その認識で記事を書いていると思うと少し怖い。


(2)どちらも「市場のハンドリング」の失敗では?

記事の書き方が下手だと感じた部分もあった。

日銀緩和の出口は繊細な手綱さばきが求められる。経済を冷やしてしまえば、日本は一転してデフレ懸念に見舞われる。一方で市場のハンドリングを誤れば、金利急騰という大打撃を負いかねない」と河浪部長は言う。

経済を冷やしてしまえば、日本は一転してデフレ懸念に見舞われる」というのも「市場のハンドリング」を誤った場合に起きることのはずだ。なのに「一方で市場のハンドリングを誤れば、金利急騰という大打撃を負いかねない」とつないでしまう。

改善例を示しておく。

【改善例】

日銀緩和の出口は繊細な手綱さばきが求められる。経済を冷やしてしまえば、日本は一転してデフレ懸念に見舞われる。一方で、市場のハンドリング次第では金利急騰という大打撃を負うリスクもある

このくだりの続きにも疑問を感じた。


(3)格下げが「日本経済の致命傷」?

いずれもコロナ危機後の過大債務を直撃して『日本国債の格下げリスクに直結する』(3メガ銀行首脳)。それは日本経済の致命傷となる」と河浪部長は言うが1990年代から「日本国債の格下げ」は何度もあった。それでも「日本経済の致命傷となる」ような大きな影響は起きていない。なのになぜ「日本経済の致命傷となる」と言い切ってしまうのか。

今回はこれまでと違うと考えるのなら、その理由は欲しい。あまり考えずに書いているような気がするが…。


※今回取り上げた記事「成長と規律、回復へ一歩」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221221&ng=DGKKZO67014560R21C22A2EA2000


※記事の評価はD(問題あり)。河浪武史氏への評価はDを据え置く。河浪氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日本では家計が「物価は上がらないと判断」? 日経 河浪武史記者の誤解https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/08/blog-post_28.html

「インフレはドル高招く」と日経 河浪武史記者は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/12/blog-post_14.html

「米利上げ 独走強まる」に無理がある日経 河浪武史記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_32.html

米ゼロ金利は「2008年の金融危機以来」? 日経 河浪武史記者に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/2008.html

日経 河浪武史・後藤達也記者の「FRB資産 最高570兆円」に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/frb-570.html

2022年12月5日月曜日

「国と国の戦争」を「過去の遺物」と思い込んでいた日経 芹川洋一論説フェロー

日本経済新聞の芹川洋一論説フェローが5日の朝刊オピニオン面に書いた「核心~令和の国難に防人の備え」という記事には色々と問題を感じた。中身を見ながら具体的に指摘していく。

【日経の記事】

2022年も余すところわずかとなった。世界の歴史で特筆大書される年になるにちがいない。いうまでもなく2月24日にはじまったロシアのウクライナ侵攻のためだ。

国と国の戦争という過去の遺物と思われていたものが9カ月すぎてもなおつづいている。国際政治は権力闘争で、それを左右するものが軍事力という現実もまざまざとみせつけた。国際政治学者モーゲンソーのいうとおりだ。


◎「過去の遺物」と思ってた?

国と国の戦争」を「過去の遺物」だと芹川氏は思っていたのか。だとしたら怖い。2021年には中国とインドが軍事衝突を起こしている。それがなくても台湾有事で米国が中国と直接戦うのかが論じられてきた。そういう状況で「国と国の戦争」を「過去の遺物」と認識したのならば引退を検討していい。

台湾有事に関する記述にも疑問を感じた。


【日経の記事】

ただもし台湾有事になればどうなるのかを想定、さまざまな対策を詰めておく必要がある。尖閣諸島や与那国島など南西諸島が戦域に入るのは必至で、そうなるとおのずと日本有事になるためだ。


◎なぜ「戦域に入るのは必至」?

台湾有事」では「南西諸島が戦域に入るのは必至」と芹川氏は言うが、その理由は記していない。中国からすれば台湾を攻撃する際に「南西諸島」も「戦域」に入れる可能性は低いだろう。台湾への攻撃だけであれば「あくまで国内問題」と中国は主張できるが「南西諸島」にまで「戦域」を広げてしまうと日米参戦に正当性を与えてしまう。

日本にとって一番悩ましいのは、中国が台湾だけを攻めている状況で親分である米国が中国との開戦を決意し、日本にも子分として参戦を求めてくる場合だ。日米同盟の強化を念仏のように唱えてきた日経の論説委員長経験者としては「その時は米国と距離を置け」とは言いづらいのだろう。しかし「日本が攻められていなくても米国が求めるなら子分として参戦を拒めない」と言うのも苦しい。なので「台湾有事」では「南西諸島が戦域に入るのは必至」とご都合主義的に決め付けたのではないか。

「台湾有事の際に米国が参戦を求めてきたら、日本が攻撃されていなくても米国と共に中国と戦うべきなのか?」

この問いに芹川氏は答えてほしい。「本社コメンテーター」の秋田浩之氏と同様にこの問題から逃げ続けるのならば安全保障上の問題を論じる書き手としては評価できない。

記事ではこの後「白村江の戦い」「蒙古襲来」など歴史のおさらいが続き以下のような結論に至る。


【日経の記事】

古代の防人、中世の御家人、明治の人びと……先人たちは涙ぐましい努力でふんばった。令和の国難に必要なものもまた、それぞれの立場で負担を受け入れる覚悟と気概のはずだ。そして国難を回避するための政治指導者たちの力量だ。今の日本は果たして大丈夫だろうか。

◎そこを語らないと…

芹川氏は「今の日本は果たして大丈夫だろうか」で記事を締めてしまう。「大丈夫」かどうか自らの見解を示した上で「大丈夫」でないのならば、どういう政策を選択すべきか読者に訴えるべきだ。

日本の歴史を振りかえると、似たような状況の時代があったように思い、本社の論説委員会の本棚にあった山川出版社の高校教科書の『詳説日本史B』を手に取ってみた」といった余計な説明は要らないし歴史に触れた部分も長すぎる。「今の日本」が具体的に何をすべきかを論じることに紙幅を割いてほしかった。

「防衛力強化のために今こそ大増税を」でもいい。具体論からなぜ逃げるのか。

ついでに言うと芹川氏の文章は相変わらず平仮名だらけで読みづらい。

例えば「9カ月すぎてもなおつづいている」は「9カ月過ぎてもなお続いている」の方が読みやすい。使っている漢字もごく簡単なものだ。ずっとそうだが芹川氏はなぜこんなに平仮名好きなのか。

紛争がおこる」「バランスがくずれた」「年内決着にむけて」「ふたたび敗退」「城をきずいた」…。平仮名表記を選ぶ理由が理解できない。


※今回取り上げた記事「核心~令和の国難に防人の備え

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221205&ng=DGKKZO66495060S2A201C2TCS000


※記事の評価はD(問題あり)。芹川洋一氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。芹川氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「核で抑止」日本はOKで北朝鮮はNG? 日経 芹川洋一論説フェローに問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2022/05/okng.html

昔話の長さに芹川洋一論説フェローの限界が透ける日経「核心~令和臨調、3度目の挑戦」https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/03/3.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_50.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_98.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_51.html

日経の芹川洋一論説委員長は「裸の王様」? (1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_15.html

日経の芹川洋一論説委員長は「裸の王様」? (2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_16.html

「株価連動政権」? 日経 芹川洋一論説委員長の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_31.html

日経 芹川洋一論説委員長 「災後」記事の苦しい中身(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_12.html

日経 芹川洋一論説委員長 「災後」記事の苦しい中身(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_13.html

日経 芹川洋一論説主幹 「新聞礼讃」に見える驕り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_33.html

「若者ほど保守志向」と日経 芹川洋一論説主幹は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_39.html

ソ連参戦は「8月15日」? 日経 芹川洋一論説主幹に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/815.html

日経1面の解説記事をいつまで芹川洋一論説主幹に…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_29.html

「回転ドアで政治家の質向上」? 日経 芹川洋一論説主幹に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_21.html

「改憲は急がば回れ」に根拠が乏しい日経 芹川洋一論説主幹
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_29.html

論説フェローになっても苦しい日経 芹川洋一氏の「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_24.html

データ分析が苦手過ぎる日経 芹川洋一論説フェロー
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_77.html

「政権の求心力維持」が最重要? 日経 芹川洋一論説フェローに問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_79.html

「野党侮れず」が強引な日経 芹川洋一 論説フェローの「核心」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/blog-post_18.html

「スペイン風邪」の話が生きてない日経 芹川洋一論説フェロー「核心」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/blog-post_27.html

日経 芹川洋一論説フェローが森喜朗氏に甘いのは過去の「貸し借り」ゆえ?https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/02/blog-post_11.html

日本の首相に任期あり? 菅首相は安倍政権ナンバー2? 日経 芹川洋一論説フェローに問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/09/2.html