2015年8月17日月曜日

「都市集中社会」? 日経「データディスカバリー」の無意味

16日の日経朝刊特集面「データディスカバリー」はデータを分かりやすく見せる作りになっている。しかし、データの扱い方がまずい。「都市にますます密集」の根拠となっているデータはあまり意味がない。

ユトレヒト(オランダ)のドム塔 ※写真と本文は無関係です
記事では「世界トップレベルの都市集中社会に(日本の都市部に居住する人口の割合)」と訴えており、その割合は53.4%(1950年)→76.2%(1980年)→90.5%(2010年)となっているらしい。しかし1980年から2010年にかけての変化は割り引いて考えるべきだ。ここで言う「都市部に居住する人口の割合」とは「日本の場合は全国の市(東京都特別区部を含む)に住む人の割合を国連がまとめた」ものだ。

2010年と1980年の間には平成の大合併があった。そこで町や村の多くが消えて市になっている。つまり、この間に人々の居住実態が大きく変わらなくても、「都市部に居住する人口の割合」はかなり上昇するはずだ。そこに触れずに「都市にますます密集」と断定されても納得できない。

そもそも「市に住んでいる=都市部に居住」という前提が日本で成り立つだろうか。今や市にも当たり前に過疎地がある時代だ。記事では「国連の予測では、日本は2050年にシンガポールや香港に続く、都市集中社会になる見通し」と書いている。しかし、山間部のさびれた集落に住む「市」の住人まで「都市部に居住」へ含めているのに「都市集中社会になる」と論じても、ほとんど意味がないだろう。

日本で三大都市圏に人口が集中する傾向はあるのだから、「都市集中社会」になっているとの見方が間違っているとは言わない。ただ、適切なデータを使わないと、説得力はない。

※記事の評価はD(問題あり)。

0 件のコメント:

コメントを投稿