2015年8月8日土曜日

日経電子版の宿命? 「価格は語る」の低い完成度(2)

6日付のコラム「価格は語る~『グラス』に『皿』 使い捨て食器の高級品が人気」について指摘を続ける。「SNSに写真を投稿する際に紙コップではさみしいが、ぱっと目で豪華さが出る」との記述に対しては日経に以下の問い合わせをした。通例に従えば、回答はないだろう。

アムステルダムの運河を巡るボート ※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

記事中で「ぱっと目で豪華さが出る」との表現を使っていますが、日本語として不自然です。「ぱっと見で豪華さが出る」の誤りではありませんか。電子版の記事なので今からでも修正した方がよいでしょう。記事の表現で問題ないと考えているのであれば、その根拠を教えてください。この問い合わせは、商品部の斎藤公也記者と担当デスク、記事審査部の担当者に届けてください。


問題はまだ続く。記事の後半部分は以下のようになっている。


【日経の記事】

インターネットや店舗(東京・世田谷のBEST WISHES SEIJO店)で販売している。シャンパングラスの売れ筋は10個1000円(税別)。「企業の飲食関連のイベントなどスーツを着た人が持っても違和感がない」(斎藤社長)という。

ホームパーティー需要のほか、訪日外国人客の増加も思わぬ追い風になっている。竹とサトウキビの搾りかすを原料として使うWASARA(東京・台東)の紙皿。宗教上の理由から一度乳製品をのせた皿を使えない訪日外国人向けにホテルがまとめて購入するケースが増えてきた。角皿や円皿(いずれもLサイズ)は6枚で640円(税別)。

割り箸を製造する磐城高箸(福島県いわき市)は2011年夏から正月や祝いの席などで使う割り箸などを手掛ける。2膳セットで150円(税別)する。1膳1円程度の中国製割り箸に比べ割高だが、国産の間伐材や端材などを使い環境配慮をアピールする。


この記事の最大の問題点は「価格が語る」になっていないことだ。価格情報は一応入っている。しかし、価格が何かを「語る」わけではない。「AとBの価格差が最近になって逆転した。その背景には市場のこんな変化がある」といった話ならば「価格は語る」の看板通りだ。しかし「値段が高いプラスチック製のグラスなどが人気で、Aは○円、Bは×円」と書くだけならば、「価格は語る」ではなく「消費最前線」にでもタイトルを変えた方がしっくり来る。

しかも「人気」の根拠は「アームカンパニー」という一企業の売上高だけだ。「WASARA」に関しては「訪日外国人向けにホテルがまとめて購入するケースが増えてきた」という数値抜きの話。「宗教上の理由から一度乳製品をのせた皿を使えない」というのはユダヤ教徒を指すのだろうか。違うよう気もするが、仮にユダヤ教徒だとして、そんなに訪日する人が増えているのか。増えていたとしても、絶対数が少ないので影響は小さそうだ。具体的な数字に触れていないことを考えると、やはり話として無理があるのだろう。「磐城高箸」に至っては、販売が伸びているのかどうかも分からない。


話が脱線気味なのも引っかかる。記事の冒頭では「ちょっぴり高い使い捨てのグラスや食器が人気だ。ガラス製より手軽に使え、紙製より高級感がある商品を買い求める人が増えている」と書いていた。しかし、2番目に取り上げたのは「紙皿」だ。これは「紙製より高級感がある商品」なのか。3番目に取り上げた「割り箸」も同様だ。一般的に、ガラス製や紙製と比較する商品ではない。

電子版の専用記事は読んでいる人も少ないし、記者のやる気も起きにくいのだろう。デスクのチェックも甘く、レベルの低い記事が大量生産されているはずだ。これは日経産業新聞や日経MJとも共通する構図で、記事の完成度が低いのは当然とも言える。

しかし、個々の記者の段階では「電子版専用記事でもしっかりした記事を書こう」という気概を持ってほしい。今回のような記事を署名入りで世に送り出していることは、しっかりと反省すべきだ。


※記事の評価はD(問題あり)、斎藤公也記者の評価も暫定でDとする。

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