ベルギーのデュルブイ ※写真と本文は無関係です |
【エコノミストの記事】
歴代3社長の責任で1500億円も利益を水増しし、株主に大損害を与えた東芝は「故意」はなかったと言い続け、マスコミも無批判に「不適切会計」と言い続けた。「不適切」には単なる過失も含まれる。
古賀氏のコラムを読むと、あらゆるマスコミが今でも「不適切会計」との表現を使っているような印象を受ける。しかし、毎日、産経、ダイヤモンド、東洋経済、日経ビジネスなどは「不正会計」という表現を採用している。古賀氏が寄稿しているエコノミストもその中の1つだ。
「無批判に『不適切会計』と言い続けた」との批判をマスコミ全体に向けるのは、出発点から間違っていないか。第三者委員会の調査報告書を根拠に「これは『故意』であり『不正会計』である」と古賀氏は断定しているが、調査報告書の見解が完全に正しいとは言い切れない。調査報告書が出た直後に「不正会計」できっちり足並みが揃うより、メディアによって表記が分かれる方が健全だと思える。
◎見通しが当たってはダメ?
【エコノミストの記事】
また、マスコミは、今年5月に問題が報じられてからも、なぜか経営責任を追及する姿勢を見せず、経営陣の刑事責任についても、検察出身の弁護士などのコメントを流して「刑事責任の追及は難しい」という相場観作りをした。実際、証券取引等監視委員会は東芝に対する刑事告発は見送り、課徴金処分を勧告する方針のようだ。
「経営陣の刑事責任は問われなさそう」という感触を読者に伝えて、実際もそうなったのならば、問題はないだろう。褒めてもいいくらいだ。古賀氏を満足させるためには、取材の結果として「刑事責任の追及はなさそう」と分析できても、報道を自己規制するしかない。それが望ましいメディアの在り方だろうか。
◎大スポンサー様への気遣い?
【エコノミストの記事】
なぜ、こういうことが起きるのか。
まず、大スポンサー「東芝様」への気遣いがある。筆者が在京キーのAテレビ局関係者から聞いたところ、第三者委員会の調査報告書を受けて東芝が7月21日に記者会見する前、報道局長が朝の情報番組で東芝問題を取り上げるのに待ったをかけたという。驚くべき異常事態だ。
もう1つ、東芝の歴代の社長経験者は、産業競争力会議など、自民党政権の重要なポストに就いている。安倍晋三首相への気兼ねもこのような自粛を呼んだと見られる。
これは無理のある分析だ。Aテレビ局に関しては「東芝様」への気遣いがあるのかもしれないが、それをマスコミ全体に広げる理由は乏しい。既に述べたように、「不正会計」という表現を使うかどうかでメディアの対応は分かれている。ならば東芝への広告依存度によって、対応が分かれているのか。その辺りを調べてみないと、スポンサーへの気遣いなのかどうかは、何とも言えない。Aテレビ局関係者の話を基にするならば、批判の対象もAテレビに絞るべきだ。
「安倍晋三首相への気兼ねもこのような自粛を呼んだと見られる」という解説に至っては、記事中に何の根拠も見当たらない。「大スポンサーだから」「政権に配慮する必要があるから」という理由ならば、マスコミは今も東芝批判を控え、経営責任を追及しないはずだ。しかし、実際には、歴代3社長がメディアからの激しい批判にさらされている。もちろん、政権に配慮して報道が控えめなメディアがあるかもしれない。しかし「マスコミ」「大手メディア」をまとめて批判できるほど単純な構図ではない。今回の件で報道姿勢を批判するならば、メディアの具体名を挙げるべきだ。
古賀氏の場合、東芝の件を「広告主や権力者に遠慮して大事な問題を報道しないマスコミ」という型に無理にはめ込もうとして、強引な展開なってしまったのではないか。筆者の確証バイアスが強く感じられる記事だった。
※記事の評価はD(問題あり)、古賀氏の評価も暫定でDとする。
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