2015年8月22日土曜日

日経 松崎雄典記者へ問う 「0.07ポイント差は有意?」 

22日の日経朝刊マーケット総合1面「スクランブル~買い戻されない主力株」はあまり読む意味のない記事だった。特にデータの選び方に疑問が残った。松崎雄典記者がなぜこうした選択をしたのかは不明だが、まずは問題の部分を見てみよう。


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     ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

海外勢はさらにリスクに敏感だ。企業統治改革や好業績に期待して日本株を買い増してきたが、その勢いが鈍ってきた。主力株の値動きがそれを示す

「東証株価指数(TOPIX)100」は時価総額の大きい銘柄で構成する指数だ。相場の急落時には海外勢や年金が主力株の下値を拾うため、日経平均より下落率が小さくなることが多かった。ところが中国への不安が高まった7月以降は日経平均より下落率が大きい。相場下落を先導しているのは主力株になる。

21日のTOPIX100の下落率も3.05%と、2.98%の日経平均より大きかった。三井住友フィナンシャルグループが5%安、東海旅客鉄道が4%安になるなど主力株の下げがきつくなっている


下落率は日経平均が2.98%で、TOPIX100が3.05%。差はわずか0.07ポイントだ。記事に付いているグラフでは、今年に入って日経平均が2%以上下落した6日間について2つの指数の差を比べている。差は開いても0.3ポイント程度。しかも7月8日には0.2ポイント程度TOPIX100の下落率が上回っていたのが、8月21日には差がほとんどなくなっている。これで「主力株の下げがきつくなっている」と書かれても説得力はない。

そもそも日経平均とTOPIX100を比べるのが適当だとは思えない。 TOPIX100の構成銘柄を「主力株」と考えるならば、TOPIX Mid400やTOPIX Smallと比べれば主力株と非主力株の動きの差はすぐに分かる。「日経平均が大幅安となった要因を分析しているのだから、日経平均は外せない」と松崎記者は考えたのかもしれない。しかし、TOPIX100を持ち出すならば、日本株全体を見る指数もTOPIXを使った方が分かりやすい。その上でTOPIX Mid400やTOPIX Smallを使って主力株と非主力株の動向を分析する方がシンプルだ。

さらに言えば、主力株の値動きから海外勢の動きを推測するのも無理がある。記事には「相場の急落時には海外勢や年金が主力株の下値を拾うため、日経平均より下落率が小さくなることが多かった」と書いてある。ならば、リスクに敏感になっているのは海外勢ではなく年金かもしれない。

また、「主力株の方が非主力株より下落率が大きい」という傾向があるとしても「海外勢や年金は相変わらず主力株の下値を拾っているが、最近は割安感のある非主力株にも手を広げている。だから主力株の下落率が相対的に大きくなる(非主力株の下落率が相対的に小さくなる)」とも解釈できる。そこまで言うと、やや意地の悪い見方になるかもしれない。それでも注文を付けたくなるのは、当初決めたストーリーに強引にデータを当てはめている印象が今回の記事で強かったからだろう。


※記事の評価はD(問題あり)、松崎雄典記者の評価はC(平均的)からDに引き下げる。

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