2016年1月23日土曜日

せっかく面白いテーマなのに…日経「広がるマイナス金利」(2)

日本経済新聞の朝刊経済面で連載した「広がるマイナス金利」について、引き続き問題点を指摘していく。21日の「(下)預金するとお金減る 欧州の試み、成否見えず」は説明に難がある。特に問題を感じたのが以下のくだりだ。
福岡市博物館(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

マイナス金利政策は個人に恩恵もある。日本では変動金利で過去最低水準の年0.6%ほどの住宅ローンが話題だが、欧州はさらに先を行く。ポルトガルやスペイン、イタリアではマイナス金利の住宅ローンが登場。マイナス金利政策の効果もあり、欧州の国債はマイナス金利だ。銀行はそんな国債を買うよりも多少のマイナス金利なら融資を増やした方がいいと考え始めている

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まず「欧州の国債はマイナス金利だ」という説明は不十分だ。欧州の国債が全てマイナスの利回りなら、この書き方でいい。しかし、日経の他の記事によるとドイツの10年物国債利回りは0.50%前後のようだ。例えば「欧州の国債は多くがマイナス金利だ」とすれば問題は解消する。

期間長めの国債の利回りはプラスだとすれば「なぜそういう国債を買わずにマイナス金利の住宅ローンで融資を増やそうとするのか」との疑問が残る。「ポルトガルやスペイン、イタリアではマイナス金利の住宅ローンが登場」というのは事実だろう。だとすると、何か説明が抜けているのではないか。ここは紙幅を割いてしっかり論じてほしかった。

以下のくだりも説明が不十分だ。

【日経の記事】

「銀行税」で銀行の体力が弱れば、銀行はリスクを取ってお金を貸し出しづらくなる。みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「金融を緩和するはずのマイナス金利が逆に引き締め効果をもたらしかねない」と警鐘を鳴らす。さらにマイナス金利の解除時には融資現場で大きな混乱を招くことになる

日本でも物価低迷を受け、マイナス金利導入が話題に上る。ただ邦銀は量的・質的金融緩和で大量の資金を日銀に預けており、「もしマイナス金利を採用したら、銀行経営への打撃は欧州の比ではない」(東短リサーチの加藤出社長)。

日銀の追加緩和手段である国債購入はいずれ限界を迎える。ECBの融資拡大が甘い蜜のように映れば、日本でもマイナス金利論が勢いを増す可能性は否めない

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さらにマイナス金利の解除時には融資現場で大きな混乱を招くことになる」と唐突に出てくるのが気になった。どういう混乱を招くのかも、なぜ混乱するのかも分からない。こんな書き方しかできないのなら、このくだりはなくていい。

結論に至る流れも良くない。「マイナス金利が逆に引き締め効果をもたらしかねない」「マイナス金利を採用したら、銀行経営への打撃は欧州の比ではない」というコメントを紹介しているのだから、結論としては「マイナス金利論が勢いを増したとしても実現の可能性は低そうだ」などの方がしっくり来る。

ECBの融資拡大」にも唐突感がある。記事にはECBによる融資拡大の話は出てこない。「ECBによると、ユーロ圏の民間向け銀行融資は昨年3月に2年11カ月ぶりに前年同月比で増加に転じた。昨年11月時点では同1.2%増と、11年11月以来4年ぶりの高い伸びを記録した」との記述はあるが、これは「ECBの融資拡大」とは言い難い。結局、「ECBの融資拡大」の謎は解けなかった。


※記事の評価はD(問題あり)。

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