2016年1月14日木曜日

「三井物産、航空機製造に参入」? 日経に載った奇妙な記事

14日の日本経済新聞朝刊企業総合面に「小型航空機製造に参入 三井物産、米企業に出資」という奇妙な記事が載っていた。「えっ、商社が航空機製造に参入するの?」と思って読んでみると、どうも様子がおかしい。最近、日経の企業関連記事では発表モノであっても発表モノではないような書き方をするケースが多い。その辺りが影響している可能性もありそうだ。日経に問い合わせを送ったので、記事の全文と併せて見てほしい。

【日経の記事】
石橋文化センター(福岡県久留米市)
      ※写真と本文は無関係です

三井物産は13日、米小型航空機メーカーのクエスト・エアクラフト社(アイダホ州)が実施する第三者割当増資を引き受けて、小型航空機の製造・販売事業に乗り出す。クエスト社に約12億円出資し12.5%の株式を取得する。10人乗り前後の小型機は米国以外でも新興国の富裕層や観光客向けの需要が底堅いことから投資を決めた。

クエスト社は広島県を地盤に地域振興事業を手掛けるせとうちホールディングス(広島県尾道市)の全額出資子会社。三井物産によるクエスト社の第三者割当増資引き受け後の出資比率はせとうちHDが87.5%、三井物産が12.5%となる。クエスト社は10人乗りの単発プロペラ機を製造・販売し、2007年の発売以降、累計150機以上を納入している。農業や鉱山分野向けに加え、最近ではアジアを中心とする新興国の富裕層や観光用に活用され始めている。三井物産はせとうちHDと共同で国内外で小型機を販売していく。


【日経への問い合わせ】

「三井物産、小型航空機製造に参入」という記事についてお尋ねします。記事では「三井物産は13日、米小型航空機メーカーのクエスト・エアクラフト社が実施する第三者割当増資を引き受けて、小型航空機の製造・販売事業に乗り出す」と書いてあります。この書き方だと、増資を引き受けて小型航空機の製造・販売事業に乗り出したのは「1月13日」としか解釈できません。しかし、三井物産は13日付で「本年1月中に、Quest社へ10百万米ドルを出資し、全株式の12.5%を取得する予定です」と発表しており、13日時点では出資に至っていないことを明示しています。これは記事の説明と矛盾します。 

そもそも「実施する」「乗り出す」とこれからのことのように書いているのに、日付が「13日」と記事掲載の前日なのも不自然です。記者は「三井物産は13日に発表した」と言いたかったのではありませんか。第三者割当増資の実施日は記事の言う通り「1月13日」と理解してよいのでしょうか。それでよい場合、なぜ「実施した」「乗り出した」と過去形で書かなかったのかも教えてください。 

また、見出しにある「三井物産、小型航空機製造に参入」というのも誤りではありませんか。同社の出資比率は増資後も12.5%に過ぎません。増資後もせとうちHDが87.5%を保有するのであれば、「三井物産が小型航空機製造に参入」とは言い難いでしょう。例えば投資ファンドが航空機メーカーの増資を引き受けて出資比率が12%になった場合に「ファンドが航空機製造に参入」と解釈しますか。

----------------------------------------

日経からは回答が届かないとの前提で、記事への評価はE(大いに問題あり)とする。

追記)結局、回答はなかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿