2016年1月31日日曜日

日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾

日経ビジネスの大西康之編集委員がまた問題ある記事を書いていた。2月1日号の「ニュースを突く~シャープが『倒産』しないワケ」という記事で、大西編集委員は「民間企業を救えるのは民間の活力だけだ」と結んでいる。ところが、記事注の説明には矛盾が見える。
高良山の久留米森林つつじ公園(福岡県久留米市)
                ※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

JALは企業再生支援機構(現地域経済活性化支援機構)から3500億円の出資を受けた。営業を続けながら再建を進めるために、政府の与信が必要だった。だが、JAL再建に関わった支援機構の幹部はこう振り返る。

「複雑な債権債務関係を解きほぐすうえでは、会社更生法の威力が絶大だった。間に裁判所が入ることで、政府や政治家からのノイズを遮断して再建手続きを進めることができた」

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JALには「営業を続けながら再建を進めるために、政府の与信が必要だった」のであれば、立ち直る過程で国の支援が助けになったはずだ。

民間企業を救えるのは民間の活力だけだ」という結論は、他の事実関係からも他の否定できる。大西編集委員の主張が正しいのならば、経営不振に陥った場合、国が支援しても結局は立ち直れないはずだ。ところが、2003年に公的資金の注入を受けて実質的に国有化された りそなホールディングスは、昨年に前倒しで公的資金を完済した。それでも「民間企業を救えるのは民間の活力だけ」と言えるだろうか。

「私的整理よりも公的整理の方が再建はうまくいきやすい」という話ならば分かる。ただ、それを「民間企業を救えるのは民間の活力だけだ」と言ってしまうと辻褄が合わなくなる。

今回の記事には、他にも間違いだと思える記述がある。

【日経ビジネスの記事】

・スポンサー企業が見つからなければ、一度倒産して出直すのが市場のルールである。

・繰り返しになるが、債務超過に陥った会社がスポンサーを見つけられなければ倒産するのが市場のルールである。

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この説明は明らかにおかしい。例えば債務超過に陥った企業が経費削減と新製品投入で自力での黒字化を果たしても何の問題もない。自らの力で債務超過を解消した場合、大西編集委員は「スポンサーを見つけられなかったのだから、一度は倒産すべきだ」と考えるのだろうか。そんな「市場のルール」はどこにもない。

さらに言えば、これまで繰り返し述べているように、大西編集委員には記事を書く資格がそもそもない。今回の記事でも取り上げているシャープと鴻海精密工業(台湾)の提携に関して、日経の紙面で「日本の電機大手として初めての国際提携」と堂々と間違えたにもかかわらず握りつぶした過去が大西編集委員にはある。

今回の日経ビジネスの記事で大西編集委員はこう訴えている。「スポンサー企業が見つからなければ、一度倒産して出直すのが市場のルールである。日本には会社更生法と民事再生法という立派な倒産法がある。これを適用して、従業員、債権者、取引先などが公平に痛みを分かち合う。その上で再起を期すのだ」。ならば、これに沿って大西編集委員にメッセージを送ろう。

記事に誤りがあれば、それを素直に認めて訂正するのがメディアとして当然の責務である。日経には「取材・報道に際しては、中正公平に徹し、編集権の独立を堅持し、迅速で正確な情報を提供する」という立派なルールがある。これに従い、自らの行動に誤りがあったことを認めて読者へ謝罪し、再発防止に努める。その上で書き手としての再起を期すのだ--。

この声が大西編集委員に届くだろうか。


※記事の評価はD(問題あり)。大西康之編集委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。この評価に関しては「日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由」を参照してほしい。上記の間違い握りつぶしを詳しく説明している。

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