2016年1月2日土曜日

合格点だが…東洋経済「富士重特集」宮本夏実記者に注文

週刊東洋経済1月9日号の巻頭特集「出来すぎスバル 富士重の危機感」(30~37ページ、筆者は宮本夏実記者)は合格点の出来ではある。業績絶好調の富士重工業を持ち上げすぎることなく冷静に分析できているし、同社の吉永泰之社長のインタビュー記事も興味深い内容だった。ただ、所々に気になる点があったので、細かい部分も含めて列挙してみたい。

◎「突出した利益率」?
梅林寺(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です

特集の冒頭で宮本記者は富士重について「日本の自動車業界でも突出した利益率をたたき出す」と書いている。インタビュー記事では「アベノミクス以降、日本の自動車メーカーはどこも業績好調です。中でも富士重は突出しており、利益率は世界屈指です」と質問していた。しかし「富士重の収益率は業界トップクラス」とのタイトルが付いたグラフを見ると、純利益率は富士重が9%でトヨタが8%。これで「日本の自動車業界でも突出」と言うのは、かなり苦しい。


◎販売台数が「最小」?

やや微妙だが、「グローバル販売台数95万台は国内乗用車8社で最小」のくだりは「最小」ではなく「最少」を使った方がよいだろう。


◎値引きの少なさは「顧客にもメリット」?

【東洋経済の記事】

当然、これ(=値引きの少なさ)はメーカーやディーラーの収益にプラスになる。さらに顧客にとってもメリットが大きい。大幅値引きで販売すれば中古車相場が下落し、回り回って消費者も損をする。逆に、値引きなしなら中古車価格が高く維持される。

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上記のくだりは「富士重からの説明をあまり疑問を持たずに受け入れたのかなぁ」と思えた。消費者にとっては安く買える方がメリットが大きい。これが基本原則だ。自分が購入した後であれば、値引きが少ない方が中古車相場も維持しやすいのでメリットは大きい。しかし、自分が買う時は話が別だ。

実際の例で考えると分かりやすい。話を単純にするために、値引き額は常に一定で中古車相場は新車販売価格の半額になると仮定しよう(新車は中古車価格で売却できるとする)。スバル車の定価が300万円の場合、値引きなしならば300万円で買って150万円で売るので損失は150万円。一方、値引き額が100万円ならば、200万円で買って100万円で売るので損失は100万円。損失額で言えば、値引きなしの方が大きくなる。消費者にとってどちらのパターンが好ましいかは明らかだ。

値引きなしなら中古車価格が高く維持される」のは確かだろうが「顧客にとってもメリットが大きい」と言い切れるものではない。もちろん、特殊な条件を設定すれば結果は変わってくるが…。


◎SUVに偏っている?

記事では「スバルは規模が小さいうえ、ラインナップはSUVに偏っている」と書いている。しかし「スバルは中型車とSUVに特化」とのタイトルが付いた表では「中型車」で「インプレッサ」「レヴォーグ」「レガシィB4」と3車種あり、「SUV/ミニバン」では「フォレスター」「レガシィアウトバック」「XV」「クロスオーバー7」の4車種が出てくる。

SUV/ミニバン」のうち、どれがSUVかは明示していないが、「SUVに偏っている」というほどでもない。「1モデルが外れれば、途端に販売台数は減少してしまう。変動のリスクはフルラインナップメーカーの比ではない」との説明はやや大げさだ。


※色々と指摘したが決定的な問題はない。記事の評価はB(優れている)としたい。宮本夏実記者の評価もBを据え置く。

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