2016年1月21日木曜日

日経「ニュース解剖」に見える志田富雄編集委員の安心感

日本経済新聞の志田富雄編集委員が書く記事には安心感がある。「何なんだこの記事は」と思った記憶がない。21日の朝刊 視点・焦点面に載った「ニュース解剖~中国発資源安、見えぬ底 全面安の国際商品相場 資金逆流で増幅、設備の整理カギ」という記事も同じだ。商品市場に関する知識も、記事としてまとめる能力も十分と言える。日経の編集委員の中で、そう思わせてくれる人は珍しい。

高良山の久留米森林つつじ公園(福岡県久留米市)
                  ※写真と本文は無関係です
ただ、関連記事として載っている「メジャー、一段と巨大に シェール淘汰・再編へ」(筆者は稲井創一記者と西岡貴司記者)との整合性が今一つだ。具体的に見てみよう。

◎スーパーサイクルは続いてる?

【日経の記事】

通常の変動を超越する「スーパーサイクル」とも呼ばれた相場上昇は原油が08年、銅や鉄鉱石、金が11年に最高値を記録するまで続いた。

資源価格の振れが大きい「スーパーサイクル」時代を乗り越えるのも体力があってこそ。価格の谷を越えた先に、一段と巨大化した海外のメガメジャーが支配する世界が待っている可能性は高い。

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志田編集委員の記事を読むと「スーパーサイクルとは相場上昇に関する言葉で、2011年には終わった」と解釈したくなる。しかし、関連記事からは「スーパーサイクルには上げも下げもあるし、今も続いている」と読み取れる。

◎シェール関連企業の淘汰は進んでる?

【日経の記事】

・残る道は過剰設備の解消や企業の淘汰だ。原油安を招いた米国のシェール関連企業はここまで予想外のしぶとさを見せた

・米国で原油・ガス掘削会社の破綻が相次いでいる。米エネルギー専門サイト、フューエル・フィックスによると、15年の1年でテキサス州に本社を置く掘削会社の破綻は20社に達した。大半がシェール企業だ。生産した原油販売に収入を依存するシェール企業は原油価格が急落すると、売上高も急減し、資金繰りに窮しやすい。

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志田編集委員の記事からは「シェール関連企業の破綻はこれまでわずかだった」との印象を受けるが、関連記事を読むと「シェール関連企業がどんどん潰れてるんだな」と思ってしまう。「15年の1年でテキサス州に本社を置く掘削会社の破綻は20社」で「大半がシェール企業」だとしても、それを「米国のシェール関連企業はここまで予想外のしぶとさを見せた」と評する余地はある。ただ、矛盾しているように見えるのも確かだ。

2つの記事の整合性に関しては、3人の筆者よりも担当デスクの責任が大きい。ただ、大刷りができた段階では、筆者も互いに整合性の問題をチェックすべきだ。


※関連記事も含めた記事の評価はB(優れている)。志田富雄編集委員への評価もBとする。稲井創一記者(ニューヨーク支局)と西岡貴司記者に関しては、暫定でB(優れている)としたい。

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