2016年1月8日金曜日

誤りも確信犯? 日経「なるほど投資講座」の藤野英人氏(2)

日本経済新聞夕刊マーケット・投資2面の「なるほど投資講座~長期投資のすすめ(3)投信は運用コストに注意」(筆者はレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長)について問題点をさらに指摘していく。

◎販売手数料3~5%に見合う投信?
専念寺(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

投資信託で注意を払う必要があるのは運用のコストです。コストには販売手数料と信託報酬の大きく2つがあります。販売手数料とは実際に投信を買った際に支払う手数料のことです。支払うのは一度きりですが、投資額に対して3~5%程度と高いものもあるので、商品の内容に見合っているか吟味が必要です。最近は販売手数料がかからない「ノーロード」と呼ばれる投信も増えています。

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販売手数料ゼロの投信もあるのに販売手数料3~5%を支払う意味があるのだろうか。個人的にはないと思う。藤野氏は「商品の内容に見合っているか吟味が必要です」と書いているので、場合によっては見合うものがあると判断しているようだ。ならば、どう「吟味」すればいいのか説明が欲しい。投資初心者の側に立つならば「販売手数料が3~5%もするような投信は最初から選択肢に入れるべきではない」ぐらいのことは書いてもらいたい。


◎シャープレシオが高いほど「運用の腕前が良い」?

【日経の記事】

アクティブ型の運用能力を測る材料として、やや専門的ですが「シャープレシオ」という数値に目を配りましょう。リターンをリスクで割って計算し、リスクにはリターンのばらつきを示す標準偏差を使います。リターンが年10%、標準偏差が8%なら、シャープレシオは1.25(=10÷8)です。数値が高いほど運用の腕前が良いことになります。同レシオは投信評価会社モーニングスターなどのサイトで確認できます。

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藤野氏はアクティブファンドを売っている会社の社長なので上記のような書き方になるのだろう。シャープレシオが高いほど運用の効率性が優れているのは認めるとしても、それが「運用の腕前」によるとは考えにくい。様々な実証研究によれば「ほとんど運」だ。これは投資初心者にとって感覚的に理解しにくい部分なので、特に声を大にして伝えたい。継続的に市場平均を上回る「実力」を持っている人が絶対にいないとは言い切れないが、いたとしても見分けるのは至難だ。

記事のように「数値が高いほど運用の腕前が良いことになります」と書けば、多くの投資初心者は「シャープレシオで運用者の実力が測れる」と誤解するだろう。これは罪深い。藤野氏がこの程度のことを知らないはずがない。やはり「確信犯」なのだろう。

確信犯だとすれば藤野氏自身を変えるのは難しい。アクティブファンドを売っている会社の経営者である藤野氏には、運用側にとって不都合な事実を伝えづらい事情がある。それが分かっていながら筆者に藤野氏を起用した日経の責任は重い。


※記事の評価はE(大いに問題あり)。暫定でDとしていた藤野英人氏の書き手としての評価もEとする。ただし、問い合わせに対する回答がない場合はF(根本的な欠陥あり)とせざるを得ない。

追記)結局、回答はなかった。

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