ライッツェ広場に面したアムステルダム市立劇場 ※写真と本文は無関係です |
市場全体の値動きを上回る成績を目指すアクティブ運用の投資家に、復権の兆しが見えてきた。企業分析と株価水準から有望銘柄を選ぶ「投資のプロ」だが、資金力を背景に幅広い銘柄をまとめ買いする公的マネーに翻弄されてきた。しかし、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の買い入れペースは鈍化してきた。ギリシャ危機がひとまず収束し日本株は上向いている。上昇相場を持続させるためにもプロの復権は欠かせない。
記事では、「アクティブ運用の投資家の復権」が「プロ投資家の復権」のようだ。「復権」の意味するところが「インデックス運用に対するシェア拡大」なのか「インデックス運用と比べた運用成績の向上」なのかは分からないが、とにかく「復権の兆し」は見えているはずだ。しかし、記事を最後まで読んでも、確認できなかった。
「復権の兆し」が探せそうな部分を強いて挙げれば、以下の記述だろう。
【日経の記事】
GPIFはアクティブ運用も手掛けるが、国内株に占めるパッシブ運用の比率は87%と大半を占めている。ある運用担当者は「GPIFがローラーをかけるように指数の対象銘柄を買っていく。有望銘柄を選ぶアクティブ運用は仕事がしにくくなった」と嘆く。
しかし、パッシブ旋風にも収束の兆しが見え始めた。GPIFは日本株の保有比率が3月末で22%まで上昇した。目標とする25%に近づいている。野村証券の村上昭博氏は「運用方針の見直しは仕上げの段階で、市場への影響は軽減される」と指摘する。
今年3月から日本株を厳選した投資信託を運用するアリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパン。インデックス運用の余波で当初こそ成績は振るわなかったが、徐々に回復した。現在の運用成績は目安とするJPX日経インデックス400を上回る。同社の寺尾和之氏は「業績の改善が見込める銘柄を丹念に探す手法が効果をあげてきた」と胸をなで下ろす。
GPIFのパッシブ旋風に収束の兆しが出ているのは、「プロ投資家の復権」を後押ししてくれる要因かもしれないが、「復権の兆し」とまでは言えない。「復権の兆し」の候補になるのは、アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの運用成績がJPX日経インデックス400を上回ってきたことぐらいだ。
しかし、市場平均を上回るファンドがゼロになることは基本的にない。特定のアクティブファンドの運用成績が市場平均を上回っているのが事実だとしても、それを「プロ投資家が復権してきた兆し」と捉えていては、「株式市場に対する理解が決定的に欠けているのではないか」と疑われてしまう。
「復権の兆し」と書くならば、「アクティブファンドの人気が高まってきている」「市場平均を上回るファンドの比率が高まっている」といった情報が欠かせない。しかし、記事にはそうした記述が見当たらない。
記事の結びで筆者の田口良成記者は「パッシブばかりだと実態に見合わない株価になりかねない。アクティブ投資家の復権は、適正な株価形成という市場本来の機能を取り戻す契機となる」と書いている。これに異論はない。しかし、記事の最初の方で「上昇相場を持続させるためにもプロの復権は欠かせない」と訴えた部分は納得できなかった。アクティブ運用のシェアが低下していく中で日本株の上昇基調が続く可能性は十分にある。もちろんアクティブファンドへの資金流入が増えれば株価の上昇要因になるが、それが持続的な相場上昇の必要条件とは言えないはずだ。
※記事の評価はD(問題あり)。田口良成記者の評価も暫定でDとする。
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