【日経の記事】
アムステルダム(オランダ)のヴァン・ゴッホ美術館 ※写真と本文は無関係です |
米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は米経済の回復を受け、年内の利上げを視野に入れている。ただ、自動車などの耐久消費財の販売は歴史的な低金利に支えられている面も大きく、金利上昇のペース次第で販売にブレーキがかかる恐れがある。
取材班は「利上げのペースが速いと景気にマイナス」と判断しているのだろう。ならば「中国の株安で懸念される影響」に「米国の利上げ遅れ」を入れたのは何だったのだろう。
ついでに言うと「中国株安・景気減速→中国国内(消費・住宅が低迷 自動車生産・販売減)」という流れもおかしい。「消費・住宅が低迷 自動車生産・販売減」は景気減速が原因で起きるというより、景気減速の中身そのものだろう。
他にも気になる点があるので列挙してみる。
◎説明が雑すぎる
【日経の記事】
米経済は1~3月期のマイナス成長を乗り越え復調し始めている。「どこに行っても1時間待ちと言われる」。6月半ば、ニューヨークのマンハッタンで勤務するフィリップ・ラパポートさんはうんざりした様子だった。ニューヨークではレストランが次々と開店するが、それでも外食需要を賄いきれないほどだ。
上記のニューヨークの事例は苦しい。フィリップ・ラパポートさんの話は昼食時なのか夕食時なのかさえ分からない。「朝から晩までニューヨークのあらゆる外食店では1時間待ちが当たり前」ならばこの説明でいいかもしれないが、あり得ないだろう。せっかく事例を盛り込んでいるのに、これではかえって説得力がなくなってしまう。
◎「プレミアムカー」 使う必要ある?
【日経の記事】
最近になって減速感を強める中国経済。影響は日本にも及ぶ。富士重工業は5月の中国向け輸出が前年比で半減した。販売は大きく落ち込んでいないが、在庫調整のあおりを受けた。日産自動車の西川広人チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)は中国株急落の余波で「プレミアムカーの伸びが鈍化する可能性がある」と話す。
「プレミアムカー」という言葉を使う必要があるのだろうか。同じ意味かどうか分からないが、「高級車」などに置き換えてもいいのではないか。カッコ書きで訳語を入れる手もある。コメントであっても、工夫はできるはずだ。
◎「増税後以降」?
【日経の記事】
消費増税後以降、低迷していた個人消費も底入れを探り始めている。
「増税後以降」が引っかかった。ダブり感がある。「消費増税後に低迷していた~」などとした方がよい。
◎反動は考慮せず?
【日経の記事】
生活に身近な食品では円安を受けた値上げの動きが広がる。日清オイリオグループのオリーブオイルは1本800円前後と、1月から5割上昇。チョコレートなどの加工食品の価格も上がっている。それでも5月のスーパーマーケットの販売額は前年比5%増えた。値上げをしても売り上げは落ちず、消費の耐久力は次第に高まってきた。
昨年5月は消費税率引き上げの影響で売り上げが落ち込んだはずだ。今年5月の増加にはその反動もあるはずだ。そこを考慮せずに「値上げをしても売り上げは落ちず、消費の耐久力は次第に高まってきた」と断定してよいのだろうか。
◎「脱デフレの動きを途切れさせないことが肝心」?
【日経の記事】
外需と内需が綱引きを続けているが、日本経済の脱デフレの動きを途切れさせないことが肝心だ。企業などに前向きの動きが出始めた今だからこそ、政府は成長力を高めるための手立てを打ち続けることが重要になる。
「脱デフレの動きを途切れさせないことが肝心」と唐突に結論付けているのが気になった。記事では、「円安に伴う食品値上げが相次いでいる」とも書いている。こういう動きを途切れさせないようにするのが、そんなに「肝心」なのか。むしろ、原油安などによって脱デフレの動きが途切れた方が、個人消費などに良い影響を与えそうだ。
ここは議論の分かれるところだろうが、まともな説明もなしに「脱デフレの動きを途切れさせないことが肝心」と言い切ってしまうのは感心しない。
※記事の評価はC(平均的)。
0 件のコメント:
コメントを投稿