見出しから判断すると、発泡酒の出荷量が13年ぶりに増えたのは「機能性」で再注目されたからだ。記事では以下のように書いている。
【日経の記事】
北海のビーチリゾート、スヘフェニンヘン(オランダ)のクルハウス・ホテル ※写真と本文は無関係です |
ビール大手5社が10日発表した1~6月のビール系飲料の課税済み出荷量が3年連続で落ち込む中、発泡酒が13年ぶりに増加に転じた。原動力はサッポロビールが酒税の区分を巡り国税当局と争い注目を集めたプリン体や糖質を抑えた商品だ。キリンビールなどが相次いで新製品を出し市場が活性化した。機能性商品は第三のビールでも増えつつあり、競争力がシェア争いにも影響している。
全体の課税済み出荷量は1億9575万ケース(1ケースは大瓶20本換算)で0.6%減だった。ビールが1.1%減、第三のビールが4.5%減るなか、発泡酒は12.4%増と大きく伸びた。
「プリン体や糖質を抑えた機能性商品」が発泡酒復活の原動力ならば、第三のビールには機能性商品を出しにくい要因があるのかなと思ってします。しかし、「機能性商品は第三のビールでも増えつつあり」と出てくる。だとすると、発泡酒は12%増で第三のビールは4%減という好対照な結果となった理由が分からなくなる。「発泡酒が機能性商品で先行したから」という説明になるかもしれないが、それも考えにくい。
発泡酒復活の「原動力」は「サッポロビールが酒税の区分を巡り国税当局と争い注目を集めたプリン体や糖質を抑えた商品」らしいが、サッポロが先行した商品については以下のように書いてある。
【日経の記事】
半面、2013年に第三のビールとして「極ゼロ」を発売し機能性ビール類市場を切り開いたサッポロビールは、他社の攻勢に苦しむ。昨夏に発泡酒に切り替えた極ゼロの販売は約35%減り、シェアを0.9ポイント落とした。
記事によると、機能性ビール類は第三のビールから始まったものらしい。ならば、なぜ発泡酒は機能性商品を原動力に2ケタ増なのに、機能性商品も揃える第三のビールがマイナスなのか、さらに分からなくなる。記事にはその辺りの説明がない。第三のビールについての記述を見てみよう。
【日経の記事】
健康志向に応える機能性商品の競争は第三のビールにも広がってきた。キリンが1月に発売したプリン体・糖質ゼロの「のどごしオールライト」は6月末までに302万ケースを販売。サントリービールの「金麦〈糖質75%オフ〉」は前年同期比6%増で苦戦する第三のビール市場で健闘した。6月末にはアサヒも第三のビール「アサヒ オフ」をプリン体・糖質ゼロにした。
やはり、発泡酒と第三のビールが明暗を分けた理由が分からない。推測するに、発泡酒が増えた最大の要因は「極ゼロ」の区分が変わったことではないのか。酒税の区分を巡ってもめた「極ゼロ」は「昨夏に発泡酒に切り替えた」と書いてある。つまり昨年1~6月は第三のビールだった。それが今年1~6月は発泡酒に移っている。この影響はかなりあるだろう。
発泡酒の2ケタ増の主な理由が「極ゼロの区分変更」ならば、「発泡酒、13年ぶり増」を柱に分析記事を載せる意味はない。「いや、極ゼロが発泡酒になっていなくても、明暗は分かれていた」と考えるならば、なぜそうなるのかを読者に示すべきだ。
ついでに「修飾が分かりづらい文」について少し触れておこう。
【日経の記事】
原動力はサッポロビールが酒税の区分を巡り国税当局と争い注目を集めたプリン体や糖質を抑えた商品だ。
これは読みづらい。「商品」を「サッポロビールが酒税の区分を巡り国税当局と争い注目を集めたプリン体や糖質を抑えた」で修飾しているのだろうが、ちょっと長い。主語と述語(原動力は~商品だ)がかなり離れているのに、その間に「サッポロビールが~争い注目を集めた」という主語・述語の関係を挟んでおり、さらに複雑になっている。
並立助詞の「や」を使って並立関係にしているのが「サッポロビールが酒税の区分を巡り国税当局と争い注目を集めたプリン体」&「糖質を抑えた商品」と読みたくなる点も気になる。改善例を示してみる。
【改善例】
原動力となったのはプリン体や糖質を抑えた商品で、サッポロビールが酒税の区分を巡り国税当局と争ったことでも注目を集めた。
※記事の評価はD(問題あり)とする。
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