アントワープ中央駅(ベルギー) ※写真と本文は無関係です |
低インフレを脱却すると「高インフレ」になるのか「中インフレ」になるのか知らないが、例えば「5%超のインフレ」が低インフレを脱却した状態だと仮定すると、FRBの物価目標である2%を大きく飛び越えてしまう。
筆者は「低インフレ=物価上昇率1%未満のインフレ」と言いたいのかもしれない。そして物価上昇率2%前後の状態を「低インフレ脱却」と想定しているのだろう。しかし、2%ならば「低インフレ継続」と理解する方が自然だ。「低インフレ」に明確な定義はないので使い方に多少幅はあっていい。しかし、その場合はどう定義しているのか読者に伝わるようにすべきだ。
記事中には、「低インフレとはどの程度の物価上昇率なのか」の説明がないだけでなく、米国の最近の物価上昇率にも触れていない。これで「低インフレ」に関して読者が筆者と認識を共有するのはかなり困難だ。
ついでに記事中の不自然な表現を指摘しておく。
【日経の記事】
議事要旨は焦点の利上げを巡り「大半のメンバーは金融引き締めの条件はまだ達成されていない」と指摘した。性急な政策判断をいさめる声も多く出た。
何人かのメンバーはすでに利上げ可能な状況、もしくは、近く環境が整うと主張した。だが「成長力と雇用が強まり、インフレ率が上昇へ動き出したデータを待つ必要がある」との慎重論が主流を占めたことを示した。
この書き方だと「議事要旨は指摘した」となってしまう。指摘したのは「大半のメンバー」だと思われるが、カギカッコの区切り方がおかしいので「『大半のメンバーは金融引き締めの条件はまだ達成されていない』と議事要旨は指摘した」という妙な文になってしまう。以下に改善例を示す。
【改善例】
議事要旨によると、焦点の利上げを巡り大半のメンバーは「金融引き締めの条件はまだ達成されていない」と指摘した。
ついでに言うと、記事中の「雇用が強まり」という表現も日本語としてしっくり来ない。訳する時はその辺りもしっかり考えてほしい。
※記事の評価はD(問題あり)、ワシントン支局の矢沢俊樹記者への評価も暫定でDとする。
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