2015年7月15日水曜日

酷すぎる日経 九州経済面「九州農業観光に力」

日経の地域経済面は非常にレベルが低い。日経産業新聞や日経MJもそうだが、社内では「埋める」という意識が強く、粗製乱造の場となりやすい。15日の九州経済面の2番手記事「九州農業観光に力~市町村など 訪日客にツアー紹介」という記事はその中でも酷さが目立つ。


【日経の記事(全文)】
マウリッツハイス美術館で「真珠の耳飾りの少女」を鑑賞する人々
                      ※写真と本文は無関係です


九州の市町村など自治体は九州農政局と連携し、農業観光(グリーン・ツーリズム)の普及に力を入れている。アジアを中心に増える訪日外国人向けに、観光と農業体験や農村・漁村での滞在を組み合わせて紹介する。九州の1次産品のPRや地域活性化を目指す。市町村はグリーン・ツーリズムを推進する協議会や団体を組織して受け入れ体制を強化している。

長崎県南島原市で組織した「南島原ひまわり観光協会」は2008年から農村・漁村と連携し、台湾観光客を対象に農作業が体験できるツアーを企画している。外国人を受け入れる家庭(民泊)は09年の6件から13年には150件に増加。農業観光の訪日外国人は13年度で6133人に上った。

大分県豊後高田市では、立命館アジア太平洋大学と同市の推進協議会が協定を結び、13年度に韓国や台湾から約500人を招いて農業研修を実施した。熊本県阿蘇地方では、農業での外国人受け入れ組織「阿蘇グリーンストック」が中国や韓国、ブラジルから林業や農業に役立つ野焼きボランティアの団体を招く。14年は約60人の中国人が阿蘇の農村に滞在した。


記事では、九州の自治体が農業観光に力を入れている事例として3つを紹介している。しかし、話が古い。南島原市は最新の数字が13年と13年度。豊後高田市も13年度で、阿蘇地方は14年と、いずれも今年(15年)の動向には全く触れていない。なぜ今、この記事を載せるのか不明だ。

記事にするならば、15年のデータを入れてほしい。最新でも14年度の数字しかない場合もあるだろう。その時は15年度の状況をコメントでもいいから読者に示す必要がある。それも無理ならば、掲載自体を見送るしかない。

この記事は他にもツッコミどころが多い。思いつくまま列挙してみる。


◎自治体は九州農政局とどう連携?

自治体は九州農政局と連携」と冒頭で書いているが、最後まで読んでも具体的にどう連携しているのか全く説明がない。


◎「農村・漁村と連携」?

長崎県南島原市で組織した『南島原ひまわり観光協会』は2008年から農村・漁村と連携」と書いてあるので、最初は南島原市が他の自治体と連携するのかと思った。しかし、南島原市内で完結している話のようにも見える。市内で完結する話ならば、「農業・漁業関係者と連携」などとした方がよいだろう。


◎家庭は「件」?

外国人を受け入れる家庭(民泊)は09年の6件から13年には150件に増加」と表記しているが、「家庭」の場合、「6軒」「150軒」の方が適切だと思える。


◎いつから始まった?

豊後高田市の話は「13年度に韓国や台湾から約500人を招いて農業研修を実施した」と述べているだけで比較がない。13年度から始まったのならば、その点を明示すべきだ。以前から実施しているのならば、増減を見せてほしい。何となく「13年度のみ実施」のような気もするが…。

阿蘇地方の話も同じ問題がある。「14年は約60人の中国人が阿蘇の農村に滞在した」と書いているが、比較はないし、14年から始まったのかどうかも不明だ。


◎編集部長へのお願い

今回のような記事を垂れ流し続けていては、日経に明るい未来はない。きちんと記事を書き上げる技量を記者が備えていないのは明白だが、問題は「この記事をこのまま載せてはまずい」とデスクも判断できていないことだ。粗製乱造の伝統の中で育ったデスクは、劣悪な記事を読んでもレベルの低さをもはや見抜けないのだろう。そして、デスクの甘いチェックを潜り抜けて記事を載せた記者は「自分はきちんと書けている」と勘違いしてしまう。

その結果が「酷すぎる」と評するしかない今回の記事だ。西部支社の成瀬紀之編集部長はこの記事を読んで何も問題を感じなかったのだろうか。もしそうなら手の施しようがないが、それでもお願いしておこう。

「記事のレベルの危機的な低さを認識した上で、きちんと対策を立ててください。お願いします。こんな出来の記事を読まされる読者がかわいそうです」


※記事の評価はE(大いに問題あり)

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