2015年7月18日土曜日

日経1面「Jフロント旗艦店刷新 大丸心斎橋店」への不満

18日の朝刊1面に載った「Jフロント旗艦店刷新~3年超で建て替え/訪日客シフト 大丸心斎橋店」という記事には不満が残った。まず記事の書き方がうまくない。



リエージュ(ベルギー)を流れるミューズ川 ※写真と本文は無関係です
◎無駄な繰り返し

【日経の記事】

J・フロントリテイリングは傘下の大丸松坂屋百貨店の旗艦店、大丸心斎橋店(大阪市)の大規模再開発に乗り出す。完成から80年以上経過した本館は年内をメドに営業を取りやめ、来年から3年超をかけて建て替える。南館はインバウンド(訪日外国人)に対応した売り場に改装する。総投資額は300億円規模になるとみられる。国内外からの顧客に対応した店づくりで集客力を高める。

1933年に完成した本館は完成から80年以上が経過し、老朽化が進んでいたことから、Jフロントは対応策を検討していた。今年末に本館をいったん閉店し、年明けから建て替え工事に着手する見通し。工事期間は3年半程度とみられ、再開業は2019年になる。


3年超をかけて建て替える」「工事期間は3年半程度とみられ」と繰り返す意味が分からない。最初の段落で「3年半程度をかけて建て替える」と書けば、次の段落の「工事期間は3年半程度とみられ」を削れる。

完成から80年以上経過した本館」「本館は完成から80年以上が経過」も、やはり無駄な繰り返しだ。2回目の「完成から80年以上が経過」に関しては「1933年に完成」とも重なる部分がある。「1933年に完成」と書けば「完成から80年以上」だと読者に伝わるので、その意味でも無駄だ。

1面の大事なスペースを余計な繰り返しで使っている点は大いに反省してほしい。記事を簡潔に書こうという意識が欠けていると、こうなってしまう。



◎百貨店は「商業施設」ではない?

以下の企業総合面の解説記事「Jフロント旗艦店刷新 立地にあわせ店づくり 」にも拙さを感じた。

【日経の記事】

2013年6月に閉店した松坂屋銀座店(東京・中央)の跡地には、百貨店を出店しない。近隣百貨店との競合状況などを勘案して、商業施設として再出発したほうが収益性が高まると判断国内外の高級ブランドショップのほか全国の老舗ブランドが集積する新たな商業施設として生まれ変わる


松坂屋銀座店の跡地には百貨店を出さずに「商業施設として再出発」するらしい。しかし、百貨店も商業施設なので、この書き方ではダメだ。「百貨店以外の商業施設として~」などとすべきだろう。読者に誤解を与える可能性は低いが、記事の作り手のレベルを疑われてしまう。

付け加えると「(百貨店にはせず)国内外の高級ブランドショップのほか全国の老舗ブランドが集積する新たな商業施設として生まれ変わる」という説明もちょっと苦しい。これだと従来の百貨店との違いが分かりにくい。百貨店とは違ったものになるとイメージできる説明にしてほしい。


◎本館はどう生まれ変わる?

今回の記事で最も気になったのは、「本館」に関する説明の不十分さだ。記事を読んでも、建て替える本館がどう生まれ変わるのか見えてこない。「本館の設計は近代建築史に名を残す建築家、ウィリアム・ヴォーリズが手掛けており、建築関係者からは保存を求める声が出ていた。Jフロントはこうした声を受けて、現状の外観を生かした形で本館を建て替える」とは書いてある。しかし、中身が不明だ。

南館をインバウンドに対応した作りに改装するなら、本館はどうするのか。企業総合面の解説記事で松坂屋銀座店の跡地についてあれこれ書く余裕があるならば、本館についてもっと詳しく触れてほしい。従来通りの品揃えになる見込みだとしても、一言は欲しい。建て替え後の商品政策が未定であれば、その点を明示すべきだ。


※記事の評価はD(問題あり)。

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