2015年7月11日土曜日

日経は地震保険の販売員? 「はじめの一家修業中」(2)

11日の日経朝刊マネー&インベストメント面に載った「はじめの一家修業中~地震保険のメリットは? 生活再建への一時資金」という記事について、引き続き問題点を指摘する。


◎セットのみだと加入者が増える?
ケルン(ドイツ)の大聖堂 ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

たいきち ご名答。でも地震保険は火災保険とセットで加入する仕組みになっていることは知ってる?

にいさ そうなの? なぜかしら。

たいきち 地震保険を制度として安定的に続けるためだよ。日本は地震国だけど地震が発生するリスクの度合いは各地で違う。リスクの高い地域の人だけが加入すると、約束した保険金に対し保険料が大きく不足するか、保険料を高くせざるを得ない。発生リスクの地域差が少ない火災保険とセットにすれば加入者が増え、保険料も低くできるという考え方だ。入るかどうかは個人の自由だけどね。


上記の説明は理屈としておかしい。火災保険の加入者は強制的に地震保険にも加入しなければならないならば、「リスクの高い地域の人だけが加入する」といった事態は避けられる。しかし、「入るかどうかは個人の自由」だとすると、リスクの低い地域の人はあまり加入しないだろう。「自分の住んでいる場所は地震のリスクが少ないから地震保険は必要ない」と考えている人が「火災保険とセットならば入ろうかな」と思うだろうか。セットならば保険料負担を大幅に抑えられるといった条件があれば別だが、記事中にそういう説明はない。

ラーメン店でより多くの客にギョウザを注文してもらうために「ギョウザは単品では注文できません。必ずラーメンとセットで注文してください」と条件を付けたら、ギョウザの販売は増えるだろうか。地震保険の場合も同じだ。「保険契約者の多くは愚かで、火災保険とセットでしか地震保険は契約できませんと説明されると、なぜか地震保険も契約してしまう人が多い」とでも言いたいのだろうか。業界関係者の言い分を何の疑問も持たずに記事に書いてしまった可能性が高そうだ。


◎地震保険は高すぎるような…

記事では「地震保険金は公的制度とあわせて生活再建に向けた一時資金と考えるのがいい」と書いている。「建て替えなどの費用をすべて払うわけではありません。地震保険金は火災保険の30~50%で、建物と家財それぞれに上限額もあります」と解説しているのだから「生活再建に向けた一時資金」にしかならないのは確かだろう。しかし「それでも地震保険は必要」と訴えてくる内容には説得力が感じられない。記事の当該部分を見てみよう。


【日経の記事】

たいきち はい。保険料も17年1月から上がる見通しです。地震保険料は建物がある地域や構造で差があり、14年7月に全国平均で15.5%引き上げました。新たな値上げは同19%と見込まれていて、何回かに分けて上げる方向で検討されています。

とうしろう 負担は重くなるなぁ。

たいきち でも東京など地震保険料が高い地域でも現在1000万円の保険金なら、保険料は年2万200~3万2600円です。地震による巨額損失への備えと考えると、高すぎるとは言い切れない面もあります。割引や所得控除など負担を和らげる制度もありますから。


地震で自宅が全壊した時に「生活再建に向けた一時資金」として1000万円を得るため、年間2万~3万円の保険料を払い続ける意味があるだろうか。しかも、さらに値上がりするらしい。記事では「地震による巨額損失への備えと考えると、高すぎるとは言い切れない面もあります」と書いているが、保険料を払っても「地震による巨額損失」の一部をカバーしてくれるだけだ。「高すぎる」かどうかは個人の価値観によるので「高すぎるとは言い切れない面もあります」と言われれば否定はできない。しかし、補償が十分ではないのに「地震保険は必要」というスタンスに傾きすぎている感じは否めない。

個人的には、「巨大地震による自宅全壊のリスクに保険だけで対応するのは不可能。だから地震保険に入る必要は乏しい。もしもの時には自己破産も選択肢に入れて何とかするしかない。自己破産が嫌ならば、地震のリスクが高い地域で住宅ローンを組んでマイホームを購入するのは避けるべきだ」と助言したい。

※問い合わせに回答がないことも見越した上で、記事の評価はD(問題あり)とする。

0 件のコメント:

コメントを投稿