2015年7月21日火曜日

焦点定まらぬ東洋経済「ヤマダ電機 落日の流通王」

東洋経済7月25日号の「家電量販サバイバル ヤマダ電機 落日の流通王」という特集は悪くなかった。ただ、「ヤマダ電機特集」になっているのか疑問が残る。「特集/ヤマダ電機」という帯が付いた計38ページのうち、本当に「ヤマダ特集」と言えるのは15ページほど。実質的には「家電量販店特集」だ。

オランダのユトレヒト中央駅  ※写真と本文は無関係です
ヤマダに関する記事が続いた後、「家電量販店を振り回す価格.comの正体」といった記事が出てきて「ヤマダから完全に離れたな」と思ったら、次には「ワンマン経営の急所 後継者は息子?」とヤマダの話に戻ってくる。そこで、やっぱりヤマダを掘り下げるのかと思わせてから、「業界2位でも経営破綻 米国は日本の未来図か」という記事で再びヤマダから離れていく。

ヤマダ特集でも家電量販店特集でもいいが、どちらなのかは明確にしてほしい。「ヤマダ電機 落日の流通王」という見出しからは、「ヤマダを徹底的に分析するのか」と期待してしまうが、今回のように焦点がボケると読者の満足度も高まりにくい。最初は「ヤマダ特集」で途中から「家電量販店特集」にするというのも1つの手だろう。その場合、「特集/ヤマダ電機」の帯は途中から「特集/家電量販店サバイバル」といったタイトルにしてほしい。

ヤマダについての特集だと思って読み始めたので、脱線していく特集を最後まで読むのはやや辛かった。出来は悪くないだけに惜しい。細かい点で気になったのは以下のくだりを含め、数えるほどだった。


【東洋経済の記事】

ビックは08年にベスト電器店舗のコラボ店化で同県に進出したが、提携の解消によって11年に撤退した。それ以降、全国の大都市で唯一、広島だけ空白だった。


東洋経済には以下の内容で問い合わせのメールを送った。


【東洋経済への問い合わせ】

7月25日号92ページのヤマダ電機特集の記事についてお尋ねします。ビックカメラについて「全国の大都市で唯一、広島だけは空白だった」との記述があります。しかし、同社のホームページを見る限り、神戸にも仙台にも店がありません。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も教えてください。神戸、仙台を大都市から除外するのは無理があると思われます。神戸は人口でも広島を上回っています。記事の説明で問題がないとすれば、神戸、仙台にも出店している場合でしょう。「ホームページ上で出店情報が更新されていない」といった可能性は残ります。


※東洋経済からは「ご指摘の通り 間違いでございました。訂正し、深くお詫び申し上げます」との回答があった。


もう1つ、特集の中で気になったところがある。ヤマダの閉鎖店舗に比較的新しい店が多い点に触れたくだりだ。


【東洋経済の記事(64ページ)】

完全閉鎖店のうち、開業が11年以降の店は7割に上る。流通の専門家が解説する。「どの小売りもいい場所から順に店を出すので、大抵は店歴の浅い店ほど立地がよくない。それでも需要が伸びている間はいいが、市場自体が縮小すると、立地に難のある店はたちまち赤字になる。ヤマダは全国の至る所に出店したので、そんな店が大量に出てきてどうにもならなくなったのだろう」


この解説は納得できなかった。ヤマダ電機については当てはまるのかもしれないが、一般化できるとは思えない。まず「立地の良さ」とは移り変わっていくものだ。駅前の繁華街が栄えていた時は駅に近い店舗に優位性があるかもしれない。しかし、しばらくして郊外に大型ショッピングセンターができた時、そこに入るライバル店の立地が駅の近くに劣るとは限らない。

百貨店など一部の業態を別にすると、どちらかと言えば新しい店舗の方が立地は良いと思える。もちろん、そう断定できるだけの確固たるデータはないが…。

※記事の評価はC(平均的)。富田頌子、前田佳子、渡辺拓未、山田泰弘、富岡耕、筑紫祐二、中島順一郎、渡辺清治の各記者の評価も暫定でCとする。

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