2023年4月18日火曜日

マーケットへの理解不足が目立つ日経 藤田和明編集委員の「スクランブル」

日本経済新聞の藤田和明編集委員が18日の朝刊マーケット総合面に書いた 「スクランブル:バフェット流取引の妙味~長期の流動性に強み、SVBと逆の道」という記事にはマーケットに関する理解不足を感じた。中身を見ながら具体的に指摘していく。

錦帯橋

【日経の記事】

日本の商社株への投資を増やした米投資家ウォーレン・バフェット氏。金融取引としてみれば、長期で安く資金を集め、高めの配当利回りで利ざやを狙う「キャリー取引」ともいえる。かたや短期資金が流出し行き詰まった米シリコンバレー銀行(SVB)。脆弱な銀行の逆を行く時間軸の取り方で周到に利ざやを稼ぐのがバフェット流だ。

同氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイの資金調達が14日明らかになった。円建てで総額1644億円になる。注目すべきは返済期間と金利水準だ。3年債から30年債まで広げた借り入れになる。金利は0.907~2.325%となっている。


◎「キャリー取引」を理解してる?

キャリー取引とは、低金利の通貨で調達した資金を高いリターンが期待できる通貨で運用し、その差で収益を得る運用手法のこと」(楽天証券のマネー用語辞典)だ。「円建て」で資金を調達しても、それを「高いリターンが期待できる通貨で運用」せず「日本の商社株への投資」に充ててしまうのならば「キャリー取引」とは言えない。

「そんなことは分かっている。キャリー取引的な要素があると言いたかったのだ」と藤田編集委員は反論するかもしれない。だったら記事でその点を断ってもよさそうだが、最後まで読んでもそうした記述は見当らない。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

これを元手に商社株に投資するとしよう。17日時点で三菱商事など5社の配当利回りは3.1~4.7%。単純な利ざやとしては3年債で2~3%強、30年債でも少なくとも2%近くを見込めると計算できる。

バークシャーの円建てでの調達はこれで総額1兆円を超える。過去の調達では利ざやが5%を見込めるような場面があってもおかしくなかった。


◎配当利回りに着目しても…

投資で「配当利回り」に着目する意味は基本的にない。1000円の株価で年間配当が100円ならば「配当利回り10%でお得」と考える人が多い。藤田編集委員もそうなのだろう。しかし配当は株式の価値を削って出すものだ。1000円の株で100円の配当をすれば株式価値は100円減るので株主にとって旨味はない。

株式投資ではキャピタルゲインも含めたトータルでリターンを見る必要があるが、なぜか多くの人が「配当利回り」だけに目を向けてしまう。金利1%で社債を発行して配当利回り3%の株を買えば2%の「利ざや」が見込めると考えるのは間違いだ。配当の多さは株価の下押しで相殺される。株価は配当以外の要因でも動いているので分かりにくい面はあるが、日経でマーケット関連の記事を書く編集委員ならば理解しておいてほしい。

さらに記事の続きを見ていく。


【日経の記事】

このキャリー取引が成功するカギは、配当利回りが見込んだ水準を将来も維持することにある。持続して現金を稼ぎ配当を増やし続ける投資先でなければならない。それをもってバフェット氏は経営の質といい、商社株に認めたのだといえる。


◎全然違うような…

マーケットに関して誤解があるので「このキャリー取引が成功するカギは、配当利回りが見込んだ水準を将来も維持することにある」という的外れな結論を藤田編集委員は導いてしまう。

商社株が減配にならなければ「配当利回りが見込んだ水準を将来も維持すること」はできるが、だからと言って「取引が成功」したとは言えない。やはり株価も含めたトータルでリターンを見るべきだ。「配当利回り」を維持できても株価が下がればトータルで損失が出る場合もある。「バフェット氏」がドルベースで「取引が成功」かどうかを見るならばドル円相場も重要な要素となる。

そんなことは改めて言うまでもないはずだが…。そこをベテランの書き手である藤田編集委員に指摘しなければならないのが辛いところだ。


※今回取り上げた記事「スクランブル:バフェット流取引の妙味~長期の流動性に強み、SVBと逆の道

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230418&ng=DGKKZO70260580X10C23A4EN8000


※記事の評価はD(問題あり)。藤田和明編集委員への評価もDとする。藤田編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

IT大手にマネーが「一極集中」と日経 藤田和明編集委員・後藤達也記者は言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/11/it_26.html


「FANG」は3社? 日経 藤田和明編集委員「一目均衡」の説明不足
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/fang.html

改善は見られるが…日経 藤田和明編集委員の「一目均衡」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_2.html

「中国株は日本の01年」に無理がある日経 藤田和明編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/01.html

「カラー取引」の説明不足に見える日経 藤田和明編集委員の限界
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_37.html

東証は「4市場」のみ? 日経 藤田和明編集委員「ニッキィの大疑問」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_28.html

合格点には遠い日経 藤田和明編集委員の「スクランブル」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_10.html

説明に無理がある日経 藤田和明編集委員「一目均衡~次世代に資本のバトンを」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_28.html

新型肺炎が「ブラックスワン」に? 日経 藤田和明編集委員の苦しい解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/blog-post_4.html

「パンデミック」の基準は? 日経1面「日米欧、時価総額1割減」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/11.html

「訴えたいこと」がないのが透けて見える日経 藤田和明編集委員の「一目均衡」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/09/blog-post_74.html

2023年4月13日木曜日

週刊東洋経済:大垣共立銀行を手放しに持ち上げる金田信一郎氏の眼力に問題あり

作家・ジャーナリストの金田信一郎氏が週刊東洋経済で始めた「ヤバい会社烈伝」という連載に期待していたのだが、早くも第2回で残念な内容となっている。記事の終盤を見た上で具体的に指摘したい。

宮島連絡船

【東洋経済の記事】

コンビニのような店舗、ドライブスルーATM、移動店舗……。実は、こうしたアイデアはすでに大垣共立銀行が実現している。若い銀行員を先進サービス企業に出向させて、ノウハウを学び取らせ、サービス業化を進めた。頭取自らも金融商品を生み出した。

「シングルマザー応援ローン」。それは借り入れが難しい、単身で子育てしている女性に向けた優遇ローンだ。子育てに邁進しているシングルマザーが返済を怠ることはない……。そこを支援すれば、少子高齢化が叫ばれる未来に変化をもたらすかもしれない。こうした社会を変えうる発想と、そこにあえてカネを流す胆力にこそ、「銀行の存在意義」がある。


◎どこが「優遇ローン」?

大垣共立銀行」を金田氏は手放しに持ち上げる。持ち上げる価値があるなら、もちろんそれもありだ。しかし、どうも怪しい。「シングルマザー応援ローン」を「単身で子育てしている女性に向けた優遇ローン」と紹介しているが、どう「優遇」しているのか触れていない。

同行のホームページで金利を見ると「シングルマザー応援ローン」は年6.975%。同行には「キレイをかなえる女性専用ローン」という女性向けローンもあるようで、こちらは年5.975%と「シングルマザー応援ローン」より金利が低い。これでなぜ「シングルマザー応援ローン」を「優遇ローン」と言えるのか。

そもそも「育てに邁進しているシングルマザーが返済を怠ることはない」と同行が見ているのなら信用リスクがゼロ(そんなはずはないが…)なので貸出金利はかなり低くできる。さらに「優遇」を加えているのに、結果として他のローン商品より金利が高くなるとは…。金田氏は何かおかしいと思わなかったのか。「大垣共立銀行」の説明を疑いもなく鵜吞みにしたのか。だとしたら金田氏の「ヤバい会社」を見分ける力には大きな疑問符が付く。


※今回取り上げた記事「ヤバい会社烈伝(2)銀行、武富士、カネ貸し~体育会系っすから実は手荒いっす」


※記事の評価はD(問題あり)。金田信一郎氏への評価はB(優れている)からDへ引き下げる。

2023年4月11日火曜日

先祖返りしてミス放置に転じた日経ビジネス 磯貝高行編集長の罪

日経ビジネスが先祖返りしてミス放置の姿勢に転じた可能性が高い。東昌樹編集長時代には間違い指摘を受けたらきちんと対応するようになったが、今の磯貝高行編集長にその気はないようだ。3月25日に送った問い合わせと31日に届いた回答から、日経ビジネスの変化が透けて見える。その内容は以下の通り。

岩国城


【日経ビジネスへの問い合わせ】

日経ビジネス 編集部 担当者様

3月27日号について2点お尋ねします。まず八巻高之記者が書いた「米ネットフリックスに独自番組を提供~債務超過のAbemaTV、探る打開策」という記事の以下の記述を見てください。

CAは損失の続くAbemaTVを資金的に支えてきた。決算資料を総合すると、AbemaTVには22年9月末に固定負債が1168億円あり、CAが同額を貸し付けている。テレビ朝日もAbemaTVに約37%を出資するが、資金面でのサポートはCAが中心のようだ。引き受けた巨額の債務は回収可能なのか。CAは21年9月期単体決算でAbemaTVへ900億円の貸倒引当金を計上している。連結決算上は相殺されるものの、CA単体としての特別損失となった

この中で引っかかったのが「引き受けた巨額の債務は回収可能なのか」というくだりです。素直に読めば「CAサイバーエージェント」が「AbemaTV」から「巨額の債務」を「引き受けた」と取れます。しかし、その前には「1168億円」を「CAが貸し付けている」との説明しかありません。「CAからAbemaTVへの債務引き受け(債務譲渡)があった」とは書いていないのに「引き受けた巨額の債務は回収可能なのか」と唐突に出てきます。

記事中で説明がなかっただけで、実際に債務引き受けはあったとしましょう。この場合、その後の「回収可能なのか」と整合しません。債権は「回収」できますが債務の「回収」は意味不明です。「引き受けた巨額の債務は回収可能なのか」という記述は誤りではありませんか。「巨額の貸付金(債権)は回収可能なのか」などとすべきだった気がします。

次に在独ジャーナリストの熊谷徹氏が書いた「世界展望~ロシアのウクライナ侵攻でポーランドが欧州安全保障の中心に」という記事を取り上げます。ここで問題としたいのは「ポーランドは、ウクライナがロシアに占領されれば、ロシアの勢力圏と国境を接することになる」との記述です。

この説明だと「現状ではポーランドはロシアの勢力圏と国境を接していない」と取れます。しかし「ロシアの勢力圏」どころかロシアそのものと国境を接しているはずです。カリーニングラード州というロシアの飛び地があります。その国境線を確認してみてください。「ポーランドは、ウクライナがロシアに占領されれば、ロシアの勢力圏と国境を接することになる」という説明は不正確ではありませんか。筆者の熊谷氏が飛び地の存在を失念していたのだと推測していますが、いかがでしょうか。

質問は以上です。お忙しいところ恐縮ですが回答をお願いします。


【日経BPからの回答】

この度は貴重なご意見、ご指摘をいただき、ありがとうございました。いただきましたご意見は、日経ビジネス編集部へ確かに申し伝えました。編集部で対応を検討させていただきます。今後とも弊社刊行物を何卒よろしくお願い申し上げます。


◇   ◇   ◇


読者対応をしている部署から編集部に問い合わせを伝えてはいるのだろう。回答が返ってこないので編集部に確認したら、まともに回答する意思がないことが分かったので、読者対応の担当者としては上記のような返信をこちらにしたのだと思える。

編集部で対応を検討させていただきます」と書いてあるので念のために10日ほど待ってみたが、その後の進展はない。日経ビジネス編集部はミス黙殺の方針に転じたと見るほかない。

最近の日経ビジネスには活気がない。読みたいと思える記事が少ない。さらに、読者から間違い指摘があっても実質的なゼロ回答で済ます。それでも磯貝高行編集長は自信を持って日経ビジネスを世に送り出せるのか。改めて考えてほしい。


※今回取り上げた記事「米ネットフリックスに独自番組を提供~債務超過のAbemaTV、探る打開策

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/01731/


※記事の評価はD(問題あり)。八巻高之記者への評価もDとする。磯貝高行編集長への評価はEとする。磯貝編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。


インタビュー記事に粗さ目立つ日経ビジネスの磯貝高行編集長https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/05/blog-post_6.html

2023年4月3日月曜日

工場稼働率が上がると固定費が減る? 日経 西條都夫編集委員の誤解

日本経済新聞の西條都夫編集委員が相変わらず苦しい。今回は「固定費」について基礎的なことが理解できていないのではと思える記述を見つけた。日経には以下の内容で問い合わせしている。

宮島

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 編集委員 西條都夫様

3日の朝刊ビジネス面に載った「経営の視点:『社会善』効率的に実現~エーザイ、熱帯病対策への挑戦」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「さらにDEC錠の生産で工場稼働率が上がり、生産関連の固定費も下がる」との記述です。

固定費とは「変動費に対する言葉で、特定の一期間内で操業度 (生産数量) の増減に関係なく発生総額の一定した原価をいう。固定資産税、減価償却費、火災保険料、固定給の賃金などがこれに属する」とブリタニカ国際大百科事典では説明しています。「操業度 (生産数量) の増減に関係なく発生総額の一定した原価」なのですから「工場稼働率」を引き上げても「生産関連の固定費」は減りません。

DEC錠の生産で工場稼働率が上がり、生産関連の固定費も下がる」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

工場稼働率」の向上は製品1個当たりの「固定費」を下げる効果はありますが、記事ではそうは書いていません。

こうしたもろもろの効果を合計すれば、LF対策に要する費用の数倍に及ぶ『リターン』をエーザイはすでに手にしている、と同社OBの柳良平・早稲田大学客員教授は試算する」との記述も記事にはありますが、無償で提供している「DEC錠の生産」を増やして製品1個当たりの「固定費」を減らしても、工場全体の「固定費」は減りませんし、変動費の分だけ利益を削るので、この点では「リターン」はマイナスです。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアの一員として適切な行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「経営の視点:『社会善』効率的に実現~エーザイ、熱帯病対策への挑戦

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230403&ng=DGKKZO69824540S3A400C2TB0000


※記事の評価はD(問題あり)。西條都夫編集委員への評価はDを据え置く。西條編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「絶望を希望に変える雇用改革」はどこに? 日経 西條都夫上級論説委員「核心」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/02/blog-post.html

春秋航空日本は第三極にあらず?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/04/blog-post_25.html

7回出てくる接続助詞「が」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/04/blog-post_90.html

日経 西條都夫編集委員「日本企業の短期主義」の欠陥
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_82.html

何も言っていないに等しい日経 西條都夫編集委員の解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_26.html

日経 西條都夫編集委員が見習うべき志田富雄氏の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_28.html

タクシー初の値下げ? 日経 西條都夫編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_17.html

日経「一目均衡」で 西條都夫編集委員が忘れていること
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_14.html

「まじめにコツコツだけ」?日経 西條都夫編集委員の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_4.html

さらに苦しい日経 西條都夫編集委員の「内向く世界(4)」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/11/blog-post_29.html

「根拠なき『民』への不信」に根拠欠く日経 西條都夫編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_73.html

「日の丸半導体」の敗因分析が雑な日経 西條都夫編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_18.html

「平成の敗北なぜ起きた」の分析が残念な日経 西條都夫論説委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_22.html

「トヨタに数値目標なし」と誤った日経 西條都夫論説委員に引退勧告
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_27.html

「寿命逆転」が成立してない日経 西條都夫編集委員の「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/blog-post_17.html

「平井一夫氏がソニーを引退」? 日経 西條都夫編集委員の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/blog-post_19.html

「真価が問われる」で逃げた日経 西條都夫論説委員の真価を問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_16.html

周知の「顔」では?日経 西條都夫上級論説委員「核心~GAFA、もう一つの顔」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/08/gafa.html

「強引」な比較をあえて選ぶ日経 西條都夫上級論説委員「核心」のご都合主義https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_21.html