2015年7月7日火曜日

デジタル腕時計はニッチ? 日経 竹田忍編集委員に問う

6日の日経朝刊企業面に掲載された「経営の視点~明暗分かれた電卓の双璧 シャープの道、カシオの道」という記事に気になる点があった。デジタル腕時計はニッチ市場なのか。記事で筆者の竹田忍編集委員は以下のように書いている。

リエージュ(ベルギー)の中心部に近いギユマン駅
                  ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

経営指針を「選択と集中」とする企業は多いが、ヤマハ発動機で産業用ロボットを新規事業で立ち上げた戸上常司元社長は「発散と自立」を説く。他社がやらぬいろんなことを、ニッチ市場で、自らの体力に見合う範囲で試す。ニッチ市場は次第にメジャーになり、人員が増えて安定事業になるという経験則だ。

カシオのデジタル腕時計は典型例。時計を秒単位の足し算電卓と再定義して74年に参入、セイコーやシチズンと互角に戦う。耐衝撃腕時計「Gショック」は2016年3月期に過去最高の800万個出荷を想定し、連結純利益も過去最高の330億円を見込む。


これに対し、日経に以下の問い合わせをした。日経は無視を貫く可能性が高い。


【日経への問い合わせ】

記事では、カシオがニッチ市場で力を付けた典型例として、「デジタル腕時計」を挙げています。しかし、デジタル腕時計市場を「ニッチ市場」と称するのは不適切ではありませんか。記事では「(カシオが)セイコーやシチズンと互角に戦う」とも書いていますが、腕時計分野で大手2社と正面からぶつかるような市場を「ニッチ市場」と呼びますか。また、デジタル腕時計は当時かなり話題の商品でもありました。記事の説明に問題なしと考えるのであれば、その根拠も教えてください。


どこまでがニッチ市場か明確な線引きはできないので「自分はニッチだと思った」と主張されれば、それまでではある。しかし、ご都合主義的に言葉を使えば読者の信頼を失ってしまうだけだ。そのことを竹田編集委員はよく考えてほしい。

ついでに、今回の記事に関していくつか引っかかる点を挙げておこう。


【日経の記事】

(シャープの)3代目の辻晴雄社長は86年6月に就任し、液晶の大型化を進めた。99年に20型液晶テレビを発売、本格的な液晶テレビの時代が到来した。ブラウン管だとガラスが重くて運べない大画面も液晶なら軽い。軽量・平面・大型の新しいテレビが登場した。成功の余韻に浸る5代目の片山幹雄社長は「液晶の次も液晶」を唱えた。4Kや8Kの液晶は確かに美しい。だがブラウン管を置き換えた時のようなインパクトはない。

韓国の中央日報電子版が5月に報じたLGディスプレイの55型有機ELディスプレーは厚さ0.97ミリで重さ1.9キロだという。やはり「液晶の次は有機EL」ではなかったか。

カシオで電卓担当だった羽方将之元常務は「設備投資がかさむデバイス内製化を断念、機能開発に絞った」と語る。ゲーム電卓に関数電卓、プリンター付き電卓と新機種を出し続けた。電卓から派生した電子辞書でもカシオは過半のシェアを占める。「止まれば陳腐化する」と羽方氏は言う。

「選択と集中」で液晶に大きく依存したシャープの15年3月期連結決算は最終損益が2223億円の赤字だった。7代目の高橋興三社長は5月、本社売却や3500人の希望退職募集などが骨子の中期経営計画を発表した。経営信条に「誠意と創意」を掲げ、「創意は進歩なり」と定めていながら「液晶の次も液晶」戦略を推進し、強い新規事業を育てられなかった代償である。



◎説明が不十分

LGディスプレイの55型有機ELディスプレーは厚さ0.97ミリで重さ1.9キロ」だから「液晶の次は有機ELではなかったか」と言われても、「そうなのかなぁ?」ぐらいにしか思えない。「厚さ0.97ミリで重さ1.9キロ」がどのくらいの凄さなのか比較できないからだ。液晶の最新型では厚さや重さがどうなっているのかを記事に入れてほしかった。


◎カシオとそんなに違う?

電卓で競い合ったシャープとカシオを比べ、強い新規事業を育てられなかったシャープと、そうではないカシオを対比させている。しかし、記事を読んでもそんなに違うようには見えない。カシオが様々な電卓を出している話は「電卓の次も電卓」だと言える。古い事業を大胆に捨てて新たな道へ進んでいる感じはない。しかし、シャープに関しては「液晶の次は液晶」が業績不振の原因だと分析し「液晶の次は有機ELではなかったか」と論じている。

カシオを手本とするならば「液晶の次は液晶」で問題なかったはずだ。液晶関連の商品に様々な機能を付けていけば済む。育てた液晶を捨てて有機ELに活路を見出すのに匹敵するようなカシオの経営上の決断は、少なくとも記事の中では描かれていない。記事に説得力を持たせるならば、シャープが液晶に固執している間に、カシオが主力事業を思い切って変化させているような例が必要だろう。

※記事の評価はD(問題あり)。筆者からの回答がないであろうことも見越して、竹田忍編集委員の評価もDとする。

(注)結局、回答はなし。

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