2015年7月28日火曜日

日経 村山恵一編集委員 「経営の視点」に見えた安心感

月曜の日経朝刊に載る「経営の視点」と言えば、編集委員がツッコミどころの多い記事を書いているイメージが強い。なので、ついつい先入観を持って読んでしまうのだが、27日の「経営の視点~アマゾンに学ぶデータ経営 日本に眠る事業の芽」は基本的にしっかり書けていた。コラムには、最初から最後まで途切れない一本の糸のような流れが欲しい。今回の記事ではそれができていたので、安心感があった。

ただ、記事の後半には、気になる点がいくつかある。

オランダのデンハーグ中央駅 ※写真と本文は無関係です

◎営業利益率11%だと「勢いがある」?

【日経の記事】

そもそも個人の趣味・嗜好はそうそう変わらず、定期購読と相性がいい。15年の売上高は前年比23%増の24億円、営業利益率は11%を見込む。出版不況を感じさせない勢いがある


富士山マガジンサービスの業績に触れて「出版不況を感じさせない勢いがある」と解説している。しかし、「営業利益率は11%を見込む」が引っかかる。なぜ単純に営業利益の額と伸び率で見せないのだろう。「減益見通しなのに、それをあえて伏せたのか」と勘繰りたくなる。


◎「日本も負けていない」?

【日経の記事】

アマゾンは今月、米国でのサービス開始から20年の節目を迎えた。一方、富士山マガジンも7日、東証マザーズに上場した。データ活用では米ネット大手が優位との評価が一般的だが、日本も負けていない。それどころか、日本企業こそ「濃いデータ」を豊富に持つという見方さえある。

「自動車や工作機械、空調など日本には世界トップ級のメーカーが多い。機器の稼働状況といったデータを集めれば、地球上で何が起きているかつかめるのではないか」。東証2部上場のIT(情報技術)会社、ぷらっとホームの鈴木友康社長は訴える。単なる機器販売の枠を超え、世の中に役立つ新種のサービスを創出していけるはず――。

夢物語とは思っていない。ぷらっとホームは厚さ1センチメートルあまり、手のひらサイズのコンピューターを開発した。狭い場所にも入り込み機器が発するデータを集めネットに送る役目を果たす。ITとは縁遠かったメーカーにも売り込む。米欧が先行するモノのインターネット(IoT)を手軽に実現し、日本の製造業の競争力を高める意気込みだ。


日本も負けていない」に説得力がない。負けていない根拠としては、「富士山マガジン」と「ぷらっとホーム」に見出すしかない。しかし、この2社の動きを記事で読んでも「確かに日本は米国に負けてないな」とは思えなかった。

ぷらっとホームが開発したという「厚さ1センチメートルあまり、手のひらサイズのコンピューター」も、何がすごいのか分からない。厚さ1ミリならともかく、1センチだとそれほど薄くもないし、手のひらサイズならばスマートフォンと大差なさそう。本当にすごい話ならば、ITに詳しくない人間にもすごさが実感できるように書いてほしい。


◎比較がないと…

【日経の記事】

米IDCによると、20年に生み出されるデータは世界で44兆ギガ(ギガは10億)バイト。容量64ギガのスマートフォンなら7千億台近くが満杯になる。あふれるデータにのまれるか、波に乗って自社の強みにするか。企業の浮沈は経営者のセンス、構想力にかかっている。


20年に生み出されるデータは世界で44兆ギガバイト」と書いているが、これは「デジタルデータ」のことだろう。世界で生み出されるデータ全てがデジタルデータとは限らないので、ここは正確に書いてほしい。また、「スマートフォンなら7千億台近くが満杯になる」と言われても、多いか少ないか判断が難しい。「スマホ何台分」と言われるより、「デジタルデータの量は2014年の何倍」といった説明の方が「データが爆発的に増えるんだな」と実感しやすい。


※今回の記事の評価はB(優れている)。村山恵一編集委員はツッコミどころ満載の1面企画の取材班に何度も名を連ねていた記憶があるので、書き手としての評価はC(平均的)に留める。

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