2015年7月17日金曜日

記事の誤りを握りつぶす理由 日経の場合(2)

日経が明らかな誤りを握りつぶすのは「組織ぐるみ」と言える面が強く、経営トップも黙認している。それがよく分かる事例を見てみよう。2013年2月15日の朝刊投資・財務面に載った「株式投資 データ活用術⑦:信用取引」には以下の記述がある。

オランダのアムステルダム ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

東京証券取引所は毎週火曜日(第2営業日)に、東証など3市場の信用取引の残高を公表している。残高は市場全体のほか、個別銘柄ごとにも開示される。個別銘柄で重視されるのが信用買い残に対する売り残の割合である信用倍率だ。1倍以上なら将来の売り圧力が強く、1倍以下なら買い圧力が強いことを示す。


間違っているのは「信用買い残に対する売り残の割合である信用倍率」という説明で、正しくは「売り残に対する買い残の割合」だ。今も日経のデータベースで上記の記述を見つけられるので、2年以上も誤りを放置しているのだろう。

この件では当時の喜多恒雄社長(現会長)にメールで対応を求めた。その上で、記事の関係者にも喜多社長にメールを送った旨を伝えた。喜多社長に送ったメールの主な内容は以下の通り。


【喜多社長(当時)に送ったメール】

「株式投資 データ活用術⑦:信用取引」(2月15日朝刊投資・財務面)という囲み記事に関して、報告させていただきます。記事中に明白な誤りがあったにもかかわらず、担当の証券部では「間違いではない」との主張を崩さず、訂正記事も掲載されていません。証券部への適切な指導をお願いします。

当該記事で問題となったのは「個別銘柄で重視されるのが信用買い残に対する売り残の割合である信用倍率だ」との記述です。「信用倍率=信用買い残÷信用売り残」となるので、記事の「売り残の割合である」との説明は明らかな誤りです。しかし、照会に対して証券部は「買い残と売り残の比率という意味で書いた。誤りではない」と15日に伝えてきました。「明らかな誤りであり、見解を見直した方がよい」との助言もしましたが、記事掲載から半月を経た現在も訂正記事の掲載に至っていません。「記事の説明は誤りではない」と読者に伝えてしまう事態は避けられたものの、一歩間違えば、証券部の見解をそのまま社外に発信してしまうところでした。

今回の証券部の対応は、読者に対する背信行為との誹りを免れません。最強のコンテンツ企業集団を目指す日経グループとしては恥ずべき事態です。また、編集局内の今の制度も問題なしとしません。現状では、記事の担当部署に訂正を出すかどうかの判断を概ね任せています。言ってみれば被告人に判決文を書かせているようなものです。この仕組みが機能するには、編集局内の社員が報道に関する高いモラルを共有している必要があります。しかし、今回の証券部の例からも分かるように、そうした前提はもはや成り立ちません。

高いモラルを有している者は記事に誤りがあれば訂正を出して顛末書を書くのに、モラルが欠如している者はお咎めなしで済む。まさに「正直者が馬鹿を見る」のが今のやり方です。編集局内に中立的な組織を設けて「記事に問題があったのかどうか」「訂正記事を載せるのかどうか」といった判断を委ねるべきです。そうでなければ、今回のような不適切な対応を繰り返し、報道機関としてさらに信頼を失っていくでしょう。


喜多氏からは「投稿ありがとうございます。編集局内で必要な対応を検討するよう指示しました」との返信があった。反応はないと思っていたので意外だった。とはいえ、直後に訂正が出たわけでも、訂正を出すかどうかを判断する中立的な組織ができたわけでもない。機会があれば喜多氏に「必要な対応はまだ検討中ですか」と聞いてみたい。

社長がその気になれば、「明らかな誤りを握りつぶすのが珍しくない」という日経の企業体質をかなり改められたはずだ。その必要性を認識するための情報も喜多氏には与えた。しかし、状況を抜本的に改善するような対策は打たれなかった。そして今も、日経は当たり前のように誤りを握りつぶし続けている。

喜多氏に送ったメールでも触れてはいるが、日経のミス握りつぶし体質を改めるためにどういう方策が必要かを述べていこう。

※(3)に続く。

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