2015年7月31日金曜日

日経 田中陽編集委員「お寒いガバナンス露呈」の寒い内容

「なぜ田中陽編集委員が解説記事を書く必要があるのか」と思わせるお寒い内容だった。これならば、ロッテ創業者の長男である重光宏之氏にインタビューした宮住達朗記者が解説記事も書いた方がいいのではないか。同氏へのインタビュー記事に付いていた「解説~『お寒いガバナンス』露呈」という田中編集委員の解説記事は疑問だらけだ。

ルクセンブルク旧市街  ※写真と本文は無関係です
【日経の記事(全文)】

兄弟の争いのどちらに義があるのか。一方の当事者の話だけでは判断できない。いずれにせよロッテという巨大グループの経営が創業者である重光武雄氏の意向次第でどうにでも変わってしまうのなら、お寒いガバナンスとしか言いようがない

中核企業のロッテホールディングス(HD)は非上場企業だ。武雄氏の影響力は絶大で、主要な人事、投資などの重大な案件は武雄氏の意向で決まっていたという

裏返せば、武雄氏以外の経営陣は長男の宏之氏、次男の昭夫氏も含めて“思考停止”していたことになる。今回の騒動は息子2人が別々に武雄氏に擦り寄り、武雄氏を味方に付けようとしたからグループは混乱した。

兄弟間の争いは株主総会で決着を見るのが筋だが、株式の多くは重光一族が所有しているとされる。両陣営が密室で多数派工作を競えば、経営がさらに見えなくなる恐れもある。従業員はたまったものではない。

お家騒動は大塚家具が記憶に新しい。しかしロッテはグローバル企業だ。アジアを中心に世界展開し、売り上げ規模は6兆5000億円にもなる。混乱が長引けば影響は世界に波及しかねない。海外展開ではアサヒグループホールディングスやファーストリテイリングもロッテと関係がある

「お口の恋人」というキャッチフレーズのロッテはブランド価値が極めて高い。こんなことで毀損させてはいけない。


大株主でもある創業者の意向次第で非上場企業の経営方針が変わるのは「お寒いガバナンス」なのだろうか。大株主で代表取締役でもある創業者が経営方針を変えようとしてもなかなか変わらない会社の方が、よっぽどガバナンスに問題がありそうな気はする。そもそも、田中編集委員には今回のお家騒動を見た後でも「巨大グループの経営が創業者である重光武雄氏の意向次第でどうにでも変わってしまう」と映るのだろうか。

インタビュー記事を読む限り、従業員持ち株会がどちらに付くかで経営陣は大きく変わってきそうだ。つまり、武雄氏の意向が通らない可能性もかなりある。それに武雄氏の代表権が外れたのは武雄氏の意向ではない。次男側が「外した」はずだ。だとすると「武雄氏の意向次第でどうにでも変わってしまうのなら…」と論じる意味はあまりない。

両陣営が密室で多数派工作を競えば、経営がさらに見えなくなる恐れもある」という説明も解せない。「多数派工作をオープンにやれ」と言うのか。それとも「多数派工作をするな」と訴えたいのか。どちらも現実的ではないし、例えば多数派工作に関するニュースリリースがロッテから連日出てきたら、それこそブランド価値を毀損させてしまうだろう。経営の主導権を巡る争いはあっていいし、株主総会で決着を付けるのであれば、株式会社としてのガバナンスはしっかり機能していると言えるはずだ。

「ロッテはグローバル企業なので、混乱が長引けば影響は世界に波及しかねない」という解説も大げさだ。断定はできないが、ロッテグループの外にまで大きな影響が及ぶとは考えにくい。お家騒動が長引いた場合、ロッテの運営するショッピングセンターに出店しているファーストリテイリングの業績が大きく落ち込んだりするだろうか。

全体的な印象としては、書くべき材料の乏しい中で行数を埋めなければならない苦しさが伝わってくるような記事だった。


※解説記事の評価はD(問題あり)、田中陽編集委員の評価もDとする。


※宮住記者のインタビュー記事に関しては、宏之氏が「ロッテHDの議決権は父が代表の資産管理会社が33%持つ」と語っていたのが気になった。29日の記事の「ロッテHDには武雄氏が代表を務める資産管理会社が約27%出資」という記述と食い違っている。

0 件のコメント:

コメントを投稿