九州大学伊都キャンパス(福岡市西区)※写真と本文は無関係です |
まずは「米国集中投資」に関する部分から見ていこう。
【ダイヤモンドの記事】
(現在の中期経営計画である)パワー88では、ブラジルやインドネシアなどで大規模な設備投資を行ったため、高い生産能力を抱えているが、アセアン市場の停滞などにより工場稼働率が低迷している。
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「米国集中投資」のはずが、「パワー88では、ブラジルやインドネシアなどで大規模な設備投資を行った」らしい。米国に関しては「増加の一途をたどるインセンティブ(販売奨励金。自動車メーカーが販売店に支払う値引き原資)」などの話は出てくるが、「投資」に当たる部分は見当たらなかった。投資規模で米国が他の地域を圧倒している可能性もゼロではないが、記事中には手掛かりさえない。なのに「ブラジルやインドネシア」の「大規模な設備投資」が出てくると、「米国集中投資」が怪しく思えてくる。
次にグラフと本文の問題を論じる。
【ダイヤモンドの記事】
だが、既に大きな壁にぶち当たっている。世界シェア8%と売上高営業利益率8%を目標にした、現在の中期経営計画「パワー88」は、未達となるのが確実だ(図(1))。販売台数の拡大と利益率向上という二兎を追う難しさが浮き彫りとなっているのだ。
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「世界シェア8%と売上高営業利益率8%」という目標の達成が絶望的だと見せたいのならば、グラフは「世界シェア」と「売上高営業利益率」を使いたい。しかし、なぜかグラフでは「世界シェア」ではなく「売上高」を採用している。
アントワープ(ベルギー)の市庁舎 ※写真と本文は無関係です |
グラフの問題は他にもある。
【ダイヤモンドの記事】
日産の最大のアキレスけんは、稼ぎ頭である米国市場での「販売の質」の劣化である。
米国での販売台数だけを見れば好調そのものである。2013年から16年までで40万台の増加という飛躍的な成長を遂げている(図(2))。現状の市場シェアは約9%であり、17年3月期の目標シェア10%に到達しそうな勢いだ。
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グラフでは、米国、北米(米国除く)、日本、欧州、中国、アジア(中国除く)、その他の7地域に分けて「地域別販売台数の推移」を見せている。よく見れば米国が伸びているのは分かるが、地域別に細かく分かれた棒グラフになっているので一目では「飛躍的な成長」だと感じられない。
グラフに関してもう1つ指摘したい。
【ダイヤモンドの記事】
営業利益の増減内訳を見ると、販売台数の増加や車種構成の変化が870億円の増益要因となる一方で、インセンティブの増加によって販売費が1522億円もの減益要因となった。過大な販売費が利益を圧迫している。インセンティブの増加傾向は、自動車メーカー各社に共通していることではある。だが、ここ1年の日産の1台当たりインセンティブの増加率は際立っている(図(3))。
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「ここ1年の日産の1台当たりインセンティブの増加率は際立っている」と言うものの、これまた微妙だ。直近1年で見ると、フォードの増加率が上回っているようにも見える。仮に日産が上だとしても大差はない。グラフが正しいのならば、「増加率は際立っている」は言い過ぎだ。
※今回取り上げた記事「財務で会社を読む~日産自動車 販売絶好調なのに大減益 米国集中投資の“危険な賭け”」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/19546
※細かい問題はあるが、記事をまとめる基本的な力はあると思えた。記事の評価はC(平均的)。山本輝記者への評価も暫定E(大いに問題あり)から暫定Cへ引き上げる。
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