2017年3月27日月曜日

「2.5次元」で趣味が高じた東洋経済「熱狂!アニメ経済圏」

週刊東洋経済4月1日号の第1特集「熱狂! アニメ経済圏」は評価できる内容だった。特にPart1の「アニメ産業革命の旗手たち」は日本のアニメ市場のトレンドを詳細かつ多角的に分析しており、読み応えがあった。ただ、Part2の「2.5次元って何だ?」はなくても良かった気がする。特集を担当した杉本りうこ副編集長の趣味が高じた記事にしか見えなかった。
日本経済大学(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

2.5次元舞台の人気俳優2人にインタビューした「2.5次元のプリンスたち」、2.5次元舞台のファンの声で構成した「『運営さん』に伝えたいファンたちの愛と怒り」といった記事は趣味が高じた典型だ。杉本副編集長の2.5次元舞台に対する熱い思いは伝わってきたが、経済誌で取り上げるべき中身とは感じられなかった。

そのPart2の最初に出てくる「アニメ マンガ ゲーム お父さんの知らない最先端エンタメ 2次元×演劇はブルーオーシャンだった」という記事について、少しツッコミを入れておきたい。

【東洋経済の記事】

この舞台のチケットは、上演台本など特典付きの「特別傍聴席」が1万2000円、一般席でも8500円と決して安くない。それを繰り返し見るとなれば、ちょっとした国内旅行並みの出費だ。また、彼女が買ったグッズも、大判の生写真が1000円、缶バッジのガチャガチャが1回400円などと飛び抜けて高くはないが、多くのファンは何点もまとめて購入している。

物販ブースでは、舞台全幕と稽古などの様子を収録した映像パッケージ(4800~8800円)の予約販売も受け付けており、購入総額が1万円に上る人も珍しくないようだった。演劇関係者によると、「この公演に限らず、チケットと同額から倍ぐらいの物販消費をするのが2.5次元ファンの傾向」という。ディズニーランド並みの消費喚起力だ
ドイツのデュッセルドルフ中心部※写真と本文は無関係です

中略)2.5次元の市場規模は15年に過去最高の104億円に達した。16年もアリーナ公演の効果で前年を上回ったもようだ。一般のミュージカルや歌舞伎、寄席などを含むステージ市場は1714億円(15年)であり、まだ2.5次元の規模は小さい。それでもエンタメ業界の関係者は、三つの理由からこの新ジャンルに大きな期待を寄せている。

一つ目は、前述の公演ルポで紹介したような高い消費喚起力だ。演目やキャストにもよるが、興行収入の3~5割を物販が担うという

◇   ◇   ◇

まず「この公演に限らず、チケットと同額から倍ぐらいの物販消費をするのが2.5次元ファンの傾向」という「演劇関係者」のコメントが出てくる。この場合、興行収入の5~7割を物販が担うはずだ。しかし、記事には「演目やキャストにもよるが、興行収入の3~5割を物販が担うという」との記述もある。いずれも2.5次元舞台の一般的な傾向を述べているはずだ。なのに数字が合っていない。チケットと物販の他に何か別の収入があるのならば話は別だが、そうした記述は見当たらない。

付け加えると、「ディズニーランド並みの消費喚起力」は言い過ぎだ。チケットと同額かそれを上回る物販があることを以って、杉本副編集長は「ディズニーランド並み」と形容したのだろう。だが、市場規模が違いすぎる。「ディズニーランド並みの消費喚起力」と言うのならば、集客力でも同等の実力が欲しい。

さらについでに言えば、チケットと物販を比べて「消費喚起力」を見るのに、あまり意味を感じない。チケット収入100万円で物販ゼロの舞台は、チケット収入50万円で物販50万円の舞台よりも「消費喚起力」が弱いのだろうか。個人的には同じレベルだと思えるが…。


※特集全体の評価はB(優れている)。特集を担当した杉本りうこ副編集長への評価はC(平均的)からBへ、前田佳子記者への評価も暫定Cから暫定Bへ引き上げる。杉本副編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「TSUTAYA特集」に見えた東洋経済 杉本りうこ記者の迫力
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_27.html

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