2018年7月30日月曜日

杉田議員LGBT問題で「生産性」を誤解した小田嶋隆氏

自民党の杉田水脈衆議院議員が「新潮45」に書いた「LGBT」に関する記事が物議を醸している。杉田議員への批判はいいとしても、「生産性」という言葉に対する拒絶反応のような主張は引っかかる。
竹崎城址展望台公園(佐賀県太良町)※写真と本文は無関係です

日経ビジネスオンライン7月27日付の「小田嶋隆の『ア・ピース・オブ・警句』 世間に転がる意味不明~杉田水脈氏と民意の絶望的な関係」という記事でも、「生産性」に関して誤解に基づく批判が展開されていた。そこで、以下の内容で問い合わせを送ってみた。

【日経BP社への問い合わせ】

小田嶋隆様  日経ビジネスオンライン担当者様

日経ビジネスオンライン7月27日付の「小田嶋隆の『ア・ピース・オブ・警句』 世間に転がる意味不明~杉田水脈氏と民意の絶望的な関係」という記事についてお尋ねします。

自民党の杉田水脈衆議院議員が「新潮45」に書いた「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供をつくらない、つまり『生産性』がないのです」というくだりに関して、小田嶋様は以下のように述べています。

そもそも、生きている人間に対して『生産性』という言葉をあてはめにかかる用語法自体がどうかしている。生産性というのは、工業製品の生産管理の場面で使われるべき言葉であって、生きた血の流れているものには、たとえ犬や猫に対してでさえ決して適用してはいけない言葉だ

杉田議員の発言には問題があるかもしれませんが、「生産性」に関する小田嶋様の説明は明らかに違うと思えます。

例えば「労働生産性」という言葉は労働に関する「生産性」を見るので当然に「生きた血の流れている」人間に「適用」されます。「1人当たり生産性」という言葉もよく用いられます。また、「工業製品の生産管理」でしか用いない言葉でもありません。サービス業にも使えます。「子供は生産物ではない」との批判はあるかもしれませんが、カギカッコを使っていることもあり、比喩的表現としては成立していると思えます。

自分は子供好きではないので出産・子育ての『期待リターン』は低い」という文と似たようなものでしょうか。この考え方に関する感想は様々だとしても、経済用語である「期待リターン」に関する「用語法自体がどうかしている」わけではありません。

今年1月の「賢人の警鐘~茂木友三郎(キッコーマン取締役名誉会長・取締役会議長)」という日経ビジネスの記事で茂木氏は以下のように語っています。

日本の1人当たりの生産性は、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中20位だ。米国と比較すると製造業で約7割、サービス産業は約5割の水準にとどまる

日経ビジネスが「賢人」と認めた人物でさえ「生きている人間に対して『生産性』という言葉をあてはめ」ているのです。OECDも同様です。

人間に対して当たり前に使う言葉なので、動物に対しても当然に用います。例えば「住友化学、愛媛工場で飼料原料増産 500億円投資」という日経の記事(2016年5月19日)では「増産するのは化学合成でつくるアミノ酸『メチオニン』。鶏の成長に欠かせず、エサに混ぜるとよく育って鶏肉や鶏卵の生産性が高まる」と書いています。

生きている人間に対して『生産性』という言葉をあてはめにかかる用語法自体がどうかしている。生産性というのは、工業製品の生産管理の場面で使われるべき言葉であって、生きた血の流れているものには、たとえ犬や猫に対してでさえ決して適用してはいけない言葉だ」という説明は誤りではありませんか。少なくとも現状に即していないと思えます。「日本人は生産性が低い」といった言葉の使い方は本当に「どうかしている」のでしょうか。もしそうだとしたら、日経ビジネスも「どうかしている」メディアの1つとなるはずです。

お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。


【日経BP社の回答】

いつも弊誌ならびに日経ビジネスオンラインをご愛読いただき、誠にありがとうございます。

ご指摘いただきました、オンラインのコラム筆者の小田嶋氏と、雑誌の茂木氏とでは、確かに仰るとおり、同じ「生産性」という言葉でも使っている概念に違いがございます。

言葉の用法につきましては筆者の主観に依るところが大きく、書き手の個性をできる限り
尊重する記名コラムという性格上、何卒ご寛恕いただければと存じます。

どうぞ今後とも日経ビジネスをご愛顧、ご叱正下さい。
よろしくお願い申し上げます。

日経ビジネス編集部

◇   ◇   ◇

※今回取り上げた記事「小田嶋隆の『ア・ピース・オブ・警句』 世間に転がる意味不明~杉田水脈氏と民意の絶望的な関係
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/072600152/?P=1


※記事の評価はD(問題あり)。小田嶋隆氏への評価はA(非常に優れている)からB(優れている)に引き下げる。小田嶋氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

どうした小田嶋隆氏? 日経ビジネス「盛るのは土くらいに」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_25.html

山口敬之氏の問題「テレビ各局がほぼ黙殺」は言い過ぎ
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/06/blog-post_10.html

小田嶋隆氏の「大手商業メディア」批判に感じる矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_12.html

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