2018年7月25日水曜日

「コンビニの生ビール販売」に誤解あり 日経「春秋」

あまり深く考えず軽いノリで書いた記事と言えばいいのだろうか。25日の日本経済新聞朝刊1面のコラム「春秋」は無理のある内容だった。まずは記事の全文を見てみる。
旧門司税関と「レトロハイマート」(北九州市)
            ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

このニュース、かなり残念だった。セブンイレブンが生ビールのテスト販売の計画を中止したという。首都圏のいくつかの店舗でレジの前にサーバーを置き、Sサイズ100円で提供する予定だったらしい。ところが、交流サイト(SNS)上で噂が広まってしまった。

それだけ利用客の期待が大きかったということでもあろう。話題が先行しすぎ、セブン側は「販売体制が整わない」と急きょ、取りやめを決めている。飲酒運転を助長する、という声も本部に寄せられたようだ。確かにロードサイド店では慎重な運用が不可欠だ。一方で、この価格破壊は近隣の居酒屋に脅威と映ったろう。

セブンの店内には総菜として、コロッケ、から揚げのほか、サバ焼き、ナス漬けまで売っている。卓を一つ二つ置けば、立派なチョイ飲み酒場の誕生である。千円でベロベロになれる店を「千ベロ」と呼ぶらしいが、「五百ベロ」が町内のそこかしこに生まれるわけだ。これは会社の帰りに毎日足が向いてしまうでしょう

コンビニが誕生し40年余。消費者のさまざまな要望を取り入れ、進化し続けた歳月である。本紙によると生ビールの販売は難しいようではあるけれど、もし実現すれば日本の飲食の文化にひと色を加えることになるのかもしれない。「朝からビールの話か」と叱られそうだが、小欄も酷暑に涼を求めた、とご寛容願いたい。

◇   ◇   ◇

セブンイレブンが生ビールのテスト販売の計画を中止した」ことに触れた後で「セブンの店内には総菜として、コロッケ、から揚げのほか、サバ焼き、ナス漬けまで売っている。卓を一つ二つ置けば、立派なチョイ飲み酒場の誕生である」と書いている。これだと、生ビールを販売できれば、セブンイレブンの店舗の性格が大きく変わるような印象を受ける。

しかし、今でも「卓を一つ二つ置けば、立派なチョイ飲み酒場」という状況にある。セブンイレブンでは350ミリリットルのビール系飲料を税込み123円で販売している。同サイズの缶チューハイならば108円だ。

Sサイズ100円」の生ビールで「五百ベロ」が実現するのならば、それは今でも「町内のそこかしこ」のコンビニで可能だ。

付け加えると、個人的には「Sサイズ100円」の生ビールで「五百ベロ」は実現しない気がする。「Sサイズ」の量が具体的に分からないので推測の域を出ないが、「Sサイズ」3杯では「ベロベロ」になりそうもない。4杯を超えると、つまみを入れて500円では収まりそうもない。

さらに言えば、日本のコンビニでまだ生ビール販売が実現していないと取れる書き方も引っかかった。これに関しては以下の内容で日経に問い合わせを送った。

【日経への問い合わせ】

25日の日本経済新聞朝刊1面の「春秋」についてお尋ねします。記事では「セブンイレブンが生ビールのテスト販売の計画を中止した」ことに触れた上で以下のように記しています。
大雨で浸水した家屋(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

コンビニが誕生し40年余。消費者のさまざまな要望を取り入れ、進化し続けた歳月である。本紙によると生ビールの販売は難しいようではあるけれど、もし実現すれば日本の飲食の文化にひと色を加えることになるのかもしれない

この説明からは「現時点で、日本のコンビニでは生ビールの販売が実現していない」と受け取れます。しかし既に一部で「生ビールの販売」は実現しているのではありませんか。

JR東日本リテールネットのニュースリリースでは「NewDaysの一部店舗では、2016年5月より『樽生ビール』を販売しております」と明言しています。「2018年7月18日現在」で46店舗で販売が実現しており、既に「日本の飲食の文化にひと色を加えること」になっています。

日本のコンビニで「生ビールの販売」が実現していないと取れる説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。「もし実現すれば」と言うのはセブンイレブンに限った話だと弁明したくなるかもしれませんが、それだと「日本の飲食の文化にひと色を加えることになるのかもしれない」という記述と整合しません。少なくとも誤解を与える説明だと思えます。

もう1つ指摘しておきます。記事の中で「これは会社の帰りに毎日足が向いてしまうでしょう」という部分だけ、ですます調になっています。「これは会社の帰りに毎日足が向いてしまうだろう」などとして、文体を合わせた方がよいでしょう。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

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追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「春秋:このニュース…」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180725&ng=DGKKZO33371590V20C18A7MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。

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