2018年7月9日月曜日

子会社化は「企業価値向上」に不可欠と日経 田中博人記者は言うが…

日本経済新聞の電子版に載った「記者の目~伊藤忠、ユニファミマ株高騰でもTOBに強気な理由」という記事(7月9日付)は疑問の残る内容だった。伊藤忠商事によるユニー・ファミリーマートホールディングスの子会社化を「両社の一段の企業価値向上に欠かせないステップ」としている点が引っかかる。田中博人記者は以下のように解説している。
冠水した「ゆめタウン久留米」周辺(福岡県久留米市)
             ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

そもそも、すでに4割以上を持つ伊藤忠があえてユニファミマを子会社化するのは、両社の一段の企業価値向上に欠かせないステップだからだ。子会社化という事実によって「現場での営業や調達、サービスの企画立案など様々な面で広く深く他社と協力でき事業活動に大きなプラスになる」(伊藤忠幹部)。物流網を一段と効率化できるほか、ファミマのTポイントとは別の新たなポイントや電子マネーの開発も進めやすくなる。もし子会社化できなければ、こうした相乗効果が薄れ、企業価値を最大化できない恐れがある



◎そんなに違いある?

子会社化できれば「物流網を一段と効率化できるほか、ファミマのTポイントとは別の新たなポイントや電子マネーの開発も進めやすくなる」が、「もし子会社化できなければ、こうした相乗効果が薄れ、企業価値を最大化できない恐れがある」と田中記者は言う。だが、そんなに違いがあるだろうか。

伊藤忠は既に「ユニファミマ」株の「4割以上を持つ」。その上に「ユニファミマの取締役13人中、社長を含めた6人が伊藤忠出身」で「監査法人関係者からは『ユニファミマへの出資比率が過半に満たなくても子会社と認識される可能性がある』との見方が出ている」という。つまり実質的に「ユニファミマ」を支配している。ならば、形式的に子会社と認められるかどうかで協力関係に変化が起きるとは考えにくい。

だからこそ市場価格がTOB価格を上回って推移しているのに「伊藤忠は8月ごろにTOBを開始する予定で、今の価格を維持するとみられる」のではないのか。「子会社化はできた方がスッキリして好ましいが、資金を積み増ししてやるほどの意味はない」というのが伊藤忠の考えだと思える。なのになぜ「子会社化」を「一段の企業価値向上に欠かせないステップ」と見てしまったのか。そこが解せない。


※今回取り上げた記事「記者の目~伊藤忠、ユニファミマ株高騰でもTOBに強気な理由
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32711060W8A700C1000000/


※記事の評価はC(平均的)。田中博人記者への評価はCで確定とする。田中記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東芝「メモリー売却必要」に説得力がない日経 田中博人記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/03/blog-post_7.html

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