2018年7月25日水曜日

「富士急ハイランド」関連で日経ビジネス浅松和海記者に注文

夏休みシーズンに突入する7月、老舗テーマパークの富士急ハイランドが入園無料化を始めた。(中略)うまく軌道に乗らなければ同社にとってもろ刃の剣となりかねない」と書いてあった場合、「同社」とは具体的にどの会社を指すのだろうか。仮に「同社=富士急ハイランド」だとしたら、その後に出てくる「富士急ハイランドを運営する富士急行」という説明と齟齬はないのか。
鯨瀬ターミナルビル(長崎県佐世保市)※写真と本文は無関係です

この問題を日経ビジネスに問い合わせてみた。回答と併せて見てほしい。


【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 浅松和海様

7月23日号の「時事深層 COMPANY~遊園地だけじゃない 富士急ハイランド、入園無料の賭け」という記事についてお尋ねします。

記事には「富士急ハイランドを運営する富士急行は富士山エリアのバスや鉄道といった交通事業が祖業だが、今や富士急ハイランドを含むレジャー事業が売上高の半分を占める中核事業になっている」との記述があります。しかし「富士急ハイランドを運営する」のは富士急行のグループ企業である「富士急ハイランド」ではありませんか。富士急行のホームページでも「(株)富士急ハイランド」に関して「『富士急ハイランド』を運営しています」と記しています。

富士急ハイランドを運営する」のは「富士急行」と見なす場合、最初の段落の辻褄が合わなくなります。記事では以下のように説明しています。

夏休みシーズンに突入する7月、老舗テーマパークの富士急ハイランドが入園無料化を始めた。少子化や余暇の多様化を背景に、レジャー産業の経営環境が厳しくなるなか、来園者増を図る。周辺施設利用への波及も狙うが、うまく軌道に乗らなければ同社にとってもろ刃の剣となりかねない

ここで言う「同社」は「富士急ハイランド」のはずです。他に社名となる候補はありません。「富士急ハイランドを運営する」のが「富士急行」と見ているのであれば、「夏休みシーズンに突入する7月、富士急行は老舗テーマパークの富士急ハイランドで入園無料化を始めた」などと「富士急行」を入れて書くはずです。

せっかくの機会なので何点か追加で指摘させていただきます。まずは以下のくだりです。

入園無料化の一方で、各アトラクションの利用料は値上げになっている。例えば、絶叫マシンとして人気のジェットコースターの『FUJIYAMA』はこれまで1回の利用料が1000円だったが、これが通常時は1500円、お盆やゴールデンウイークなど繁忙期は2000円になった。フリーパスの価格は大人5700円で変わらないので、仮に繁忙期にこれらのアトラクションに3つ乗ると、フリーパスを買うより高くなる。入園無料でも、客単価を落ち込ませるわけにはいかない。そんな思惑が見て取れる

仮に繁忙期にこれらのアトラクションに3つ乗ると、フリーパスを買うより高くなる」と書いていますが、「繁忙期は2000円」になるアトラクションは「FUJIYAMA」しか出てきません。なのに「これら」と複数にするのは不自然です。「例えば、絶叫マシンとして人気の『FUJIYAMA』など4つのジェットコースターはこれまで1回の利用料が1000円だったが~」といった形にすれば問題は解消します。

付け加えると、「入園無料でも、客単価を落ち込ませるわけにはいかない」と富士急ハイランド(あるいは富士急行)は本当に考えているのでしょうか。散歩感覚で入園できるようになるので「客単価」は当然に落ちるでしょう。「それでも入園者数の増加によって増収を確保できればよい」との判断ではないかと思えます。

最後に、これはお願いです。記事では富士急ハイランドがどこにあるテーマパークなのか、分からないまま話が進みます。途中で「富士山エリア」にあるのは分かりますが、最後まで「山梨県富士吉田市」にあることは教えてくれません。日経ビジネスの読者は北海道や九州にもいるはずです。そうした地域の読者が「富士急ハイランド」と聞いて、すぐに所在地をイメージしてくれる可能性はそれほど高くないでしょう。記事の早い段階で「山梨県富士吉田市」と出した方が、読者に親切だと思えます。

今後、記事を書く時は「この書き方で首都圏以外の人にも伝わるかな」と配慮していただけると助かります。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。


【日経BP社の回答】

日経ビジネスをご愛読頂き、ありがとうございます。ご質問に回答させて頂きます。

ご指摘の通り、レジャー施設の「富士急ハイランド」の運営会社は富士急行が全額出資する「富士急ハイランド」です。100%出資子会社を通じて、施設を運営していることから、実態的に富士急行が運営しているとみなし、「富士ハイランドを運営する富士急行」
と表現させて頂きました。

ただ、レジャー施設としての「富士急ハイランド」と、運営会社としての「富士急ハイランド」が混在している面は否めません。富士急ハイランドの所在地の表記を含め、分かりにくい表現があったと反省し、今後の記事の参考にさせて頂きます。

以上です。引き続き、日経ビジネスをご愛読頂きますよう、お願い申し上げます。

◇   ◇   ◇

回答はこれで良いと思える。「100%出資子会社を通じて、施設を運営していることから、実態的に富士急行が運営しているとみなし、『富士ハイランドを運営する富士急行』と表現」するのは問題ない。どちらかと言えば、最初の段落に問題があった。

問い合わせに入れたように「夏休みシーズンに突入する7月、富士急行は老舗テーマパークの富士急ハイランドで入園無料化を始めた」と書いて「同社=富士急行」と取れるようにしておけば整合性も確保できる。

今回は他にも細かい点を指摘しているが、「記事を書くプロ」と呼べるレベルを目指すのならば、この辺りまで目配りするのは当然だ。浅松和海記者の今後に期待したい。


※今回取り上げた記事「時事深層 COMPANY~遊園地だけじゃない 富士急ハイランド、入園無料の賭け
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/071701131/?ST=pc


※記事の評価はC(平均的)。浅松和海記者への評価も暫定でCとする。

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