2018年7月8日日曜日

カナダが「欧州」に見える日経「米欧、軍事費でも摩擦」

8日の日本経済新聞朝刊総合3面に載った「米欧、軍事費でも摩擦 米、GDP比2%『達成を』 欧州は駐留撤退示唆に不信感」という記事では、まずカナダの扱いが気になった。記事の序盤は以下のようになっている。
大雨で増水した筑後川(福岡県久留米市)
        ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

【ワシントン=中村亮、ブリュッセル=森本学】北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が11~12日、ベルギーの首都ブリュッセルで開かれる。トランプ米大統領はドイツ、カナダなど加盟国の多くが、NATOの国防費の目標である国内総生産(GDP)比2%を達成せず、共同防衛に十分な責務を果たしていないと批判している。通商政策に続き、米欧の安全保障をめぐる摩擦が深まる可能性がある

トランプ氏が欧州主要国の首脳と顔を合わせるのは6月上旬のカナダでの主要7カ国(G7)首脳会議以来。G7では米国の鉄鋼・アルミへの追加関税などで議論が紛糾した。通商分野で米欧の亀裂が鮮明になる中、米欧が結束を示せるかが最大の焦点になる。ただ、そのハードルは低くはない。


◎カナダも含めて記事を書くならば…

上記の書き方だと「カナダ」が欧州に見えてしまう。どうしても「米欧の安全保障をめぐる摩擦」と書きたいのならば、「カナダ」は外した方がいい。「カナダ」を入れたいと考えるのならば「通商政策に続き、米国と欧州・カナダの安全保障をめぐる摩擦が深まる可能性がある」「通商分野で米欧加の亀裂が鮮明になる中、米欧加が結束を示せるかが最大の焦点になる」などとすべきだ。

ついでに言うと、ロシアの扱いも気になる。基本的に「ロシア=欧州ではない」との前提で日経は記事を作っている。今回もそうだ。最後の段落を見ていこう。

【日経の記事】

トランプ氏は16日にロシアのプーチン大統領との首脳会談に臨む。米欧の亀裂が明らかになれば米欧分断を模索するロシアの狙いどおりの展開になる可能性もある。欧州はNATO首脳会議で米欧の結束をアピールして、対立するロシアに圧力をかけたい意向だが、トランプ氏がこれに応じるかは不透明だ。


◎ロシアも欧州に属するような…

個人的には「ロシアは欧州に属する」と思っている。外務省のホームページにある「地域別インデックス」で「欧州」を見ると、ロシアも入っている。ロシアを欧州から外す分類を間違いだとは言わないが、しっくりは来ない。

また、「欧州はNATO首脳会議で米欧の結束をアピールして、対立するロシアに圧力をかけたい意向」と書いてあると「欧州に属する国は全てNATO加盟国」と理解したくなる。しかしフィンランドやスウェーデンなどNATO非加盟国は少なくない。自分だったら「欧州の加盟国は~」とでも書くだろう。


※今回取り上げた記事「米欧、軍事費でも摩擦 米、GDP比2%『達成を』 欧州は駐留撤退示唆に不信感
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180708&ng=DGKKZO32740120X00C18A7EA3000


※記事の評価はC(平均的)。中村亮記者への評価は暫定D(問題あり)から暫定Cへ引き上げる。森本学記者への評価もDからCへ見直す。


※中村記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

メキシコは「低税率国」? 日経1面「税収 世界で奪い合い」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/09/blog-post_3.html


※森本記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

格差“遺伝”は米英伊がトップ3? 日経 森本学記者の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/11/blog-post_21.html

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