2018年7月19日木曜日

「米利上げ 独走強まる」に無理がある日経 河浪武史記者

米利上げ 独走強まる」という見出しを見て、米国をはるかに上回る勢いで利上げを進めている国があると思うだろうか。ないと解釈するのが普通だ。しかし、実際には複数ある。記事中で「FRBの利上げ路線も独走の気配が漂ってきた」と解説した日本経済新聞の河浪武史記者には、以下の内容で問い合わせを送った。
旧門司税関(北九州市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 河浪武史様  国際アジア部 担当デスク様

19日の朝刊国際2面に載った「米利上げ 独走強まる 『2~3年好況持続』 FRB議長証言、減税効果挙げる」という記事についてお尋ねします。「米利上げ 独走強まる」と見出しでも打ち出しているので、「利上げ」に関して米国は「独走」状態にあるはずです。しかし、本当にそうですか。

例えば、トルコは5月に政策金利を8%から16.50%へ引き上げ、6月にはさらに17.75%へと見直しています。アルゼンチンも負けていません。5月5日の日経の記事では「アルゼンチンの中央銀行は4日、政策金利を6.75%引き上げ、年40%にすると発表した。この8日間で3度目となる利上げで、金利の引き上げ幅は計12.75%に達する」と報じています。両国とも、引き上げ幅の大きさや金利水準の高さで米国を圧倒しています。

記事では「景気に一服感がある欧州や新興国と比べ、米経済は今や『独り勝ち』に近い。FRBの利上げ路線も独走の気配が漂ってきた」と書いているので、「独走」かどうかを判断する比較対象に「新興国」も含めているはずです。記事中に「(米国の)政策金利は既に1.75~2.00%と先進国の主要10中央銀行で最も高い」といった記述はありますが、「米利上げ 独走強まる」に関して、「先進国の中での話」と解釈できる説明はありません。

米利上げ 独走強まる」「FRBの利上げ路線も独走の気配が漂ってきた」との説明は誤りだと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

付け加えると「景気に一服感がある欧州や新興国と比べ、米経済は今や『独り勝ち』に近い」との説明にも疑問が残ります。記事では「国際通貨基金(IMF)は18年の米経済の成長率を2.9%と予測。2.2%のユーロ圏や1.0%の日本とは成長ペースでも差が開いてきた」と書いていますが、この予測で世界全体の18年の成長率は3.9%となっています。IMFは一部の原油輸出国については強気の見通しも示しています。なのに、世界全体の成長率を下回る米国を「今や『独り勝ち』に近い」と言えるでしょうか。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「米利上げ 独走強まる 『2~3年好況持続』 FRB議長証言、減税効果挙げる
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180719&ng=DGKKZO33099140Y8A710C1FF2000


※記事の評価はD(問題あり)。河浪武史記者への評価はDで確定とする。河浪記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「インフレはドル高招く」と日経 河浪武史記者は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/12/blog-post_14.html

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