2018年7月24日火曜日

「東芝問題」で自らの不明を総括しない大西康之氏

やはりジャーナリストの大西康之氏は東芝問題に関する自らの見通しの甘さを反省する気はないようだ。FACTA8月号では「東芝『原子力マフィア』高笑い」という東芝関連の記事を久しぶりに書いている。しかし、これまでFACTAに求めてきた「総括」は見当たらない。
島原城(長崎県島原市)から見た雲仙岳
           ※写真と本文は無関係です

大西氏とFACTAには以下のように要望してきた。

【FACTAに送った「お願い」】

せっかくの機会ですので、別件で要望を出しておきます。大西様はFACTA2017年7月号に載った「時間切れ『東芝倒産』」という記事の最後で「もはや行き着く先は決まっている。東芝の経営破綻だ」と断定しました。

現状では「経営破綻」の可能性は非常に低くなっていると思えます。17年7月号での分析に問題はなかったのか改めてFACTAで取り上げてもらえませんか。もちろん「東芝の経営破綻は近い」との見方でも構いません。仮に「もはや行き着く先は決まっている。東芝の経営破綻だ」と断定したのは間違いだったと感じているのならば、どこで間違えたのかを振り返ってください。

間違いだったとしても「東芝は経営破綻する」と断定したことを責めるつもりはありません。思い切ってリスクを取った点をむしろ評価したいくらいです。しかし、行き着く先は「東芝の経営破綻だ」と言い切ったからには、この問題をしっかり総括してほしいのです。FACTAの編集に責任を持つ皆様にも、この件を考えていただければ幸いです。

◇   ◇   ◇

今回の記事で大西氏は「6千億円の増資とメモリ事業の売却が実現したことで『東芝は危機を乗り切った』という報道が増えている」とは書いている。しかし「もはや行き着く先は決まっている。東芝の経営破綻だ」と断定したのが誤りだったどうかには何も答えていない。

今、「経営破綻は不可避」との見通しはさすがに打ち出せないのだろう。だからと言って「6千億円の増資とメモリ事業の売却が実現したことで東芝は危機を乗り切った」と断定してしまえば、自らの見通しが誤りだったと認めることになる。そこで「『東芝は危機を乗り切った』という報道が増えている」という書き方を選んだのだろう。大西氏らしいとは感じる。
大雨で増水した巨瀬川(福岡県久留米市)
           ※写真と本文は無関係です

今回の記事では以下のくだりも気になった。

【FACTAの記事】

東芝株は6千億円の増資によって大幅に希薄化した。稼ぎ頭のメモリ事業の売却によって、自ら成長の可能性を絶ったともいえる。株主をはじめ多くのステークホルダーの利益を毀損した東芝の体質は、粉飾決算を続けてきた当時とまるで変わっていない。聞こえてくるのは、原子力マフィアたちの高笑いである。


◎法的整理を主張していたはずだが…

文藝春秋7月号の「東芝 深層ドキュメント『倒産』までのシナリオ~技術と雇用を守る唯一の方法は法的整理だ」という記事で大西氏は以下のように主張していた。

今、守るべきは東芝の優良事業と技術、そして従業員の雇用であり、『東芝』という会社ではない。それを実現する唯一の方法は、日本航空と同じ、会社更生法の申請である

今回のFACTAの記事では「東芝株は6千億円の増資によって大幅に希薄化した」ことを根拠に「株主をはじめ多くのステークホルダーの利益を毀損した」と東芝を批判しているが、そもそも大西氏は東芝の法的整理が最善の道だと訴えていた。法的整理になれば株式の価値は原則としてゼロになる。株主が被る損害は「6千億円の増資」による希薄化の比ではない。

大西氏は「株主の利益を毀損させろ」と訴えていたとも言える。そんな人物が「大幅な希薄化はダメ。株主の利益を守れ」と取れる主張を展開しても説得力はない。

付け加えると、「6千億円の増資」が株主の「利益を毀損した」とは言い切れない。昨年11月に増資検討と伝わった直後には株価が急落する場面もあったが、直近の株価は増資の情報が流れる前の水準を上回っている。

今後も東芝に関する記事を書くのならば、大西氏は東芝に関する自らの見通しの甘さを率直に認めるべきだ。それさえできずに他者への批判を続けても説得力はゼロだ。


※今回取り上げた記事「東芝『原子力マフィア』高笑い
https://facta.co.jp/article/201808032.html

※記事の評価はD(問題あり)。大西康之氏への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。大西氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_49.html

大西康之編集委員が誤解する「ホンダの英語公用化」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_71.html

東芝批判の資格ある? 日経ビジネス 大西康之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_74.html

日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_31.html

 FACTAに問う「ミス放置」元日経編集委員 大西康之氏起用
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_28.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」が空疎すぎる大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_10.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」 大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_12.html

文藝春秋「東芝 倒産までのシナリオ」に見える大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_74.html

大西康之氏の分析力に難あり FACTA「時間切れ 東芝倒産」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/facta.html

文藝春秋「深層レポート」に見える大西康之氏の理解不足
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_8.html

文藝春秋「産業革新機構がJDIを壊滅させた」 大西康之氏への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_10.html

「東芝に庇護なし」はどうなった? 大西康之氏 FACTA記事に矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/facta.html

「最後の砦はパナとソニー」の説明が苦しい大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_11.html

経団連会長は時価総額で決めるべき? 大西康之氏の奇妙な主張
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_22.html

大西康之氏 FACTAのソフトバンク関連記事にも問題山積
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/facta.html

「経団連」への誤解を基にFACTAで記事を書く大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/facta.html

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