2018年5月23日水曜日

大西康之氏 FACTAのソフトバンク関連記事にも問題山積

ジャーナリストの大西康之氏に関しては「書き手として問題がある」と繰り返し指摘してきた。FACTA6月号に載った「賞味期間切れ『孫マジック』」という記事も、やはり問題が多い。事実誤認と思える記述もある。FACTAには以下の内容で問い合わせを送った。
島原城(長崎県島原市)※写真と本文は無関係です


【FACTAへの問い合わせ】

大西康之様  FACTA 主筆 阿部重夫様  発行人 宮嶋巌様  編集長 宮﨑知己様

FACTA6月号の「賞味期間切れ『孫マジック』」という記事についてお尋ねします。質問は3つです。

<質問その1>

記事には「ソフトバンクは13年、総額約2兆円を投じ、米国4位のスプリントを買収した。当初、孫は同第3位のTモバイルも買収し、ベライゾン、AT&Tモバイルと肩を並べる3強に食い込もうとしたが、寡占が進むことを嫌う米当局の反対で頓挫した」との記述があります。これを信じれば、2013年には米国3位がTモバイル、同4位がスプリントだったはずです。

しかし、両社の売上高が逆転して3位Tモバイル、4位スプリントとなったのは2015年です。「米国4位のスプリントを買収した」との説明は誤りではありませんか。「米国4位」や「同第3位」は現在のことを述べているとの可能性も考慮しましたが、記事の書き方からはすると無理があります。「米国3位(当時)のスプリントを買収した」などと説明するのが適切でしょう。


<質問その2>

あるアナリスト曰く『保有株式価値が21兆8千億円といっても過半の13兆円はアリババで、スプリントとヤフーを加え上場株式が16兆円ある。しかし、これはほぼ換金できない資産。SBGが売りの気配を見せただけで大暴落しますから。おまけにアリババの13兆円は中国ITバブルのなせる業。いつ吹き飛んでもおかしくない……』と」という部分にも疑問を感じました。

まず「ほぼ換金できない資産」と言えるでしょうか。アリババ株については2016年に100憶ドル規模で売却した実績があります。売却方針が伝えられた後もアリババ株の「大暴落」は起きていません。「ほぼ換金できない」「SBGが売りの気配を見せただけで大暴落します」といった説明は、過去の経緯と食い違うのではありませんか。アナリストのコメントとして使っているとはいえ、明らかに不正確なコメントを使ったのであれば大西様も責任を免れません。


<質問その3>

SBGの個人向け社債」について大西様は「販売した証券会社は個人の売却に即座に応じなければならない」と言い切っています。しかし、日本証券業協会のホームページでは、「個人向け社債」のリスクに関して以下のように説明しています。

証券会社は、自社が販売した社債について、原則としてお客様の売却希望にお応えして買い取りを行います。しかしながら、その社債について、市況環境が著しく悪化している場合や、上記①の信用リスクが顕在化している場合には、その社債を買い付けていただけるお客様が容易には見込めないことなどから、証券会社も容易に買取りに応じることができないことや信用リスクなどを算定した価格(かなり安値となります。)でしか買取りに応じることができない場合もあります。当然、証券会社に対しても法令等で財務の健全性が要求されていますし、自社が損をすることを前提にお客様から社債を買い取ることはできません。したがいまして、購入した社債が売れない(誰も買い取ってくれない)というリスクもあることに御留意いただく必要があります

唯一のキャッシュカウであるソフトバンクの業績が悪化したら、SBGの社債を大量に保有している個人は青ざめるだろう」と大西様は書いています。個人向け社債の保有者が「青ざめる」ような状況になった場合、証券会社が買い取りに応じない事態は十分に考えられます。「購入した社債が売れない(誰も買い取ってくれない)というリスクもある」のです。「販売した証券会社は個人の売却に即座に応じなければならない」との説明は誤りではありませんか。


<お願い>

せっかくの機会ですので、別件で要望を出しておきます。大西様はFACTA2017年7月号に載った「時間切れ『東芝倒産』」という記事の最後で「もはや行き着く先は決まっている。東芝の経営破綻だ」と断定しました。

現状では「経営破綻」の可能性は非常に低くなっていると思えます。17年7月号での分析に問題はなかったのか改めてFACTAで取り上げてもらえませんか。もちろん「東芝の経営破綻は近い」との見方でも構いません。仮に「もはや行き着く先は決まっている。東芝の経営破綻だ」と断定したのは間違いだったと感じているのならば、どこで間違えたのかを振り返ってください。

間違いだったとしても「東芝は経営破綻する」と断定したことを責めるつもりはありません。思い切ってリスクを取った点をむしろ評価したいくらいです。しかし、行き着く先は「東芝の経営破綻だ」と言い切ったからには、この問題をしっかり総括してほしいのです。FACTAの編集に責任を持つ皆様にも、この件を考えていただければ幸いです。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが回答をお願いします。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「賞味期間切れ『孫マジック』
https://facta.co.jp/article/201806002.html


※記事の評価はD(問題あり)。大西康之氏への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。大西氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_49.html

大西康之編集委員が誤解する「ホンダの英語公用化」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_71.html

東芝批判の資格ある? 日経ビジネス 大西康之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_74.html

日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_31.html

 FACTAに問う「ミス放置」元日経編集委員 大西康之氏起用
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_28.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」が空疎すぎる大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_10.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」 大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_12.html

文藝春秋「東芝 倒産までのシナリオ」に見える大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_74.html

大西康之氏の分析力に難あり FACTA「時間切れ 東芝倒産」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/facta.html

文藝春秋「深層レポート」に見える大西康之氏の理解不足
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_8.html

文藝春秋「産業革新機構がJDIを壊滅させた」 大西康之氏への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_10.html

「東芝に庇護なし」はどうなった? 大西康之氏 FACTA記事に矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/facta.html

「最後の砦はパナとソニー」の説明が苦しい大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_11.html

経団連会長は時価総額で決めるべき? 大西康之氏の奇妙な主張
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_22.html

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