2018年4月17日火曜日

看板倒れの東洋経済「どこまで走る、いすゞの株価」

週刊東洋経済4月21日号の「ニュース深掘り 株 up&down どこまで走る、いすゞの株価」は看板倒れの記事だ。「どこまで走る、いすゞの株価」という見出しから(1)いすゞの株価上昇が目立つ(2)今後の株価動向に関して筆者が分析してくれる--と受け取ってしまった。しかし、記事を読むと話が違ってくる。
甘木公園の桜(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

まず「いすゞの株価」の走り方を見てみよう。

【東洋経済の記事】

17年4〜9月期(第2四半期)決算ではピックアップトラックや中国向け建機エンジンの販売に加え、修理・点検などの事業が想定以上に伸びたことで、通期の業績見通しを上方修正。株価は上昇基調に入り、今年1月12日に上場来高値の2002.5円をつけた。足元は1600円台だが、17年初来安値1320円から20%程度上昇した



◎今年は下げ基調では…

いすゞの株価は昨年9月ごろから上昇局面に入り、今年に入ってからは下落基調だ。これで「どこまで走る、いすゞの株価」と見出しで打ち出すのは辛い。「足元は1600円台だが、17年初来安値1320円から20%程度上昇した」と言うより「今年1月12日に上場来高値の2002.5円をつけた」後に20%程度下落したと見るべきだ。

しかも、株価に言及しているのは上記のくだりだけだ。「いすゞの株価」が「どこまで走る」かについては漠然とした見通しさえ示していない。見出しに釣られて記事を読んだ人の多くは「騙された」と感じるのではないか。

この記事には他にも問題を感じた。いくつか指摘しておく。

【東洋経済の記事】

いすゞは過去3年間で約2800億円の設備投資を実施(一部計画も含む)。主力・藤沢工場(神奈川県)の生産効率化・自動化や、栃木新工場などの建設に投じられた金額は約半分の1400億円程度とみられる。

こうした積極的な設備投資ができるのも業績が好調だからだ。2018年3月期の売上高は初めて2兆円を超えたもよう。特にタイで年30万台前後を生産し、世界100カ国以上に出荷するピックアップトラック(小型商用車)の販売が収益を牽引している。

17年4〜9月期(第2四半期)決算ではピックアップトラックや中国向け建機エンジンの販売に加え、修理・点検などの事業が想定以上に伸びたことで、通期の業績見通しを上方修正


◎「積極的な設備投資」と言える?

過去3年間で約2800億円の設備投資」に関して「こうした積極的な設備投資」と書いているが、なぜ「積極的」と言えるのか根拠は示していない。いすゞは年間売上高が「2兆円」近くあって、営業利益は1500億円程度で推移している。その企業が年間1000億円弱の設備投資をしていると「積極的」なのか。基本的には営業キャッシュフローで設備投資を賄えるのではないか。それを「積極的」と呼ぶなとは言わない。だが、「積極的」と分析した根拠は要る。

業績が好調だからだ」も材料が乏しい。「2018年3月期の売上高は初めて2兆円を超えたもよう」とは書いているが、「業績が好調」と言うならば利益の数字が欲しい。売上高に関しても増加率には触れていない。

記事には、売上高や営業利益を表したグラフが付いている。これを見ると、営業利益は2014年3月期以降、横ばい圏だ。17年3月期にやや落ち込み、18年3月期はそれをほぼ取り戻したようだが、営業利益で見れば「業績が好調」だとは感じない。「堅調」ではあるが…。

結局、株価も業績も微妙だ。なのに「どこまで走る、いすゞの株価」というタイトルで記事を書く気が知れない。

記事の最後は「国内需要が活況なうちに、ポスト20年を見据えたいすゞの取り組みは実を結ぶか」と「成り行きに注目」的な締め方をしている。特に訴えたいことはないのだろう。ネタに困った末の記事だとは思うが、それにしても無理が目立った。


※今回取り上げた記事「ニュース深掘り 株 up&down どこまで走る、いすゞの株価
https://dcl.toyokeizai.net/ap/textView/init/toyo/2018042100/DCL0101000201804210020180421TKW043/20180421TKW043/backContentsTop


※記事の評価はD(問題あり)。高見和也記者への評価はDで確定とする。

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