2018年4月4日水曜日

「売却が必要」に説得力欠く日経「東芝 半導体リスクなお」

4日の日本経済新聞朝刊総合2面に載った「東芝 半導体リスクなお 売却の成否、読めず 再建計画に影響」という記事は、参考になる内容ではあった。最初の段落では 「経営再建の前提だった半導体メモリー事業の売却は、予定していた3月末までに間に合わず、3日時点で見通しが立たない」「2兆円の売価がついた事業の売却が遅れれば財務戦略などに影響が出る懸念がある」などと書いており、日経は「速やかに売却すべき」との立場のようだ。しかし、今回の解説を読んでも「売却すべき」とは感じられなかった。
甘木公園の噴水と桜(福岡県朝倉市)
     ※写真と本文は無関係です

売却が必要な理由を記事では以下のように説明している。

【日経の記事】

売却が遅れ「塩漬け状態」が長引けば、東芝と東芝メモリが計画してきた投資の修正が迫られる可能性もある。

東芝メモリは主力の四日市工場(三重県四日市市)に新棟を建設中。さらに岩手県北上市に新工場を建設する計画だ。新工場は年内に建屋を着工する。「今後、巨額の投資を負担するリスクは背負えない」(東芝幹部)というのがメモリー売却の理由の一つだ。

メモリー売却後、ベインなどが投資資金を注入する計画を立てており、売却が長引くほど東芝の負担が増える可能性が高まる。競合のサムスン電子が巨額投資を継続するなか、投資を渋れば東芝メモリの企業価値が毀損しかねない。


◎理由が変わってない?

本来は「債務超過解消のため虎の子の主力事業を泣く泣く売却する」という話だったはずだ。しかし、増資などを進めた結果、「東芝の株主資本は3月末に4600億円となり、株主資本比率は11%となった」らしい。ならば売る必要はなくなったと考えるのが自然だ。

ところが「今後、巨額の投資を負担するリスクは背負えない」から売却するという話に変わっている。ここが怪しい。「東芝メモリ社長、四日市工場に新棟検討 投資を積極化」(2017年10月13日)という産経の記事によると「東芝メモリでは今後、年間3千数百億円規模の設備投資や研究開発投資が必要になる見通し」で、これを「東芝メモリのキャッシュフローで賄う意向」だという。「ベインの杉本氏は『足りない場合は、私どもが中心になって資金調達を支援する』と述べた」とも書いているので、「東芝メモリのキャッシュフロー」では賄えない事態もあり得るのだろうが、東芝がグループ内に抱えておいたら手に負えないとは思えない。

日経の記事では、もう1つ売るべき理由を述べている。

【日経の記事】

東芝の株主資本は3月末に4600億円となり、株主資本比率は11%となった見込みだ。だが東芝は17年12月末時点で銀行借り入れなどで1兆1千億円の有利子負債を抱える。

主要取引行は融資・融資枠の回収に万全を期すため、東芝にメモリー売却を促してきた。東芝は2兆円の売却資金を得た場合、成長投資や銀行への返済に資金を振り向ける計画だ。売却手続きが滞る状況が長期化すると、財務戦略に影響が出る恐れがある。

◎銀行の都合は分かるが…

銀行が「東芝にメモリー売却を促してきた」のは理解できる。問題は東芝の事情だ。売却を見送れば資金繰りに行き詰まるのか。6000億円もの増資をしておいて、そんなに苦しいのかという疑問は浮かぶ。資金繰りの問題がないとすれば、有利子負債を多少多めに抱えていても、主力事業を残す方が好ましい気がする。
流川桜並木(福岡県うきは市)
        ※写真と本文は無関係です

記事でも「売却できたとしても、最大の稼ぎ頭のメモリー事業がなくなる東芝の再建には課題は多い。年間営業利益で1千億円以上を稼げるメモリーのような事業は現状は見当たらない」と書いている。なのになぜ「東芝は6月下旬にも定時株主総会を開く予定。株主の一部からの売却反対の声が広がるのを抑えるためには、同月末までには売却を完了したい情勢だ」という解説になるのか。

記事を読む限りでは、東芝自身も売却に前向きではなくなっているように見える。「東芝の会長兼最高経営責任者(CEO)に1日付で就いた車谷暢昭氏は3日のインタビューで、売却の『早期完了をめざす』と話す一方で、『(メモリーのような)ビジネスが適量あるのは悪いことではない』とも述べた」と書いている。

記事に付けた表を見ると、「4月」に「東芝側にメモリー売却契約の解除権発生」となっている。解除権を行使する可能性の有無については車谷氏へのインタビュー記事でも触れていない。ここは聞いてほしかった。また、どういう条件が整えば解除権を行使できるのかも知りたいところだ。

その辺りは今後の続報に期待したい。

ついでに、言葉の使い方で注文を付けておきたい。

【日経の記事】

日米などの審査は順調に終えたが、最大の難関とされた中国当局の審査は17年12月に始まった。一般的に審査期間は4カ月とされ、目標とした3月末までの売却完了が懸念されていた



◎「売却完了が懸念されていた」?

3月末までの売却完了が懸念されていた」と書くと「3月末までの売却完了=望ましくない事態」と取れてしまう。「3月末までに売却を完了できるか懸念されていた」などとすれば問題は解消する。「懸念されていた」という受身表現を使う必要もないので「3月末までに売却を完了できるか懸念があった」とすれば、さらに好ましい。

言葉の問題をもう1つ。

【日経の記事】

主要取引行は融資・融資枠の回収に万全を期すため、東芝にメモリー売却を促してきた。



◎「融資枠」って「回収」するもの?

融資の回収」は分かる。だが「融資枠の回収」には違和感がある。1000億円の融資枠を設定して、これを利用しないまま融資枠を解消した場合「1000億円の融資枠を回収」と言うのか。金融関係者はそう言っているのかもしれないが、「回収」ならば、自分の手元から出ていったものが戻ってくるイメージがあるので「融資枠の回収」はおかしな表現だと感じる。


※今回取り上げた記事「東芝 半導体リスクなお 売却の成否、読めず 再建計画に影響
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180404&ng=DGKKZO28973150U8A400C1EA2000


※記事の評価はC(平均的)。東芝メモリ売却問題に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東芝「メモリー売却必要」に説得力がない日経 田中博人記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/03/blog-post_7.html

0 件のコメント:

コメントを投稿